貸出・マネタリー統計(18年10月)~通貨供給量の伸びは約6年ぶりの低水準に
貸出・マネタリー統計(18年10月)~通貨供給量の伸びは約6年ぶりの低水準に: (貸出残高)
11月8日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、10月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.23%と前月(同2.32%)からやや低下した(図表1)。業態別では、都銀等の伸び率が前年比1.1%(前月も1.1%)と横ばいを維持したが、地銀(第2地銀を含む)の伸び率が前年比3.3%(前月は3.4%)とやや低下している(図表2)。
伸び率の低下は3ヵ月ぶりとなるが、年央の低迷からは底入れ傾向にある。企業規模別では(8月分まで)、大・中堅企業向けが復調しており、M&A関連の資金需要が回復している可能性がある(図表3)。次に、為替変動等の影響を調整した実勢である「特殊要因調整後」の銀行貸出伸び率(図表1)1を確認すると、直近判明分である9月の伸び率は前年比2.40%と8月の2.28%から0.11%上昇した。ドル円レートの前年比は8月から9月にかけてほぼ横ばいであったため(図表4)、見た目(特殊要因調整前)の伸び率の動き(0.16%上昇)と大差はなかった。
10月の「特殊要因調整後」伸び率は未判明だが、10月のドル円レートの前年比が9月と大して変わらなかったことを鑑みると、特殊要因調整後の伸び率も見た目の伸び率と同様に低下し、前年比2.3%程度になったと推測される。
1 特殊要因調整後の残高は、1カ月遅れで公表されるため、現在判明しているのは9月分まで。11月2日に発表された10月のマネタリーベースによると、日銀による通貨供給量(日銀当座預金+市中に流通するお金)を示すマネタリーベースの前年比伸び率は5.9%と、前月(同5.9%)から横ばいとなった。小数点以下第2位まで見た場合には前月から若干低下しているものの、低下が一服した形に。内訳の約8割を占める日銀当座預金の伸び率が前年比5.3%と前月(5.2%)からわずかに上昇したことが寄与した(図表5・6)。なお、10月末のマネタリーベース残高は前月末から1.9兆円の増加に留まったが、季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ると前月比で3.8兆円の増加となっており、9月(0.1兆円の増加)からやや持ち直している(図表7)。日銀は長期国債買入れの減額を段階的に実施しているため、長期国債の買入れペースは鈍化が続いている(10月は前年比42.7兆円増・図表8)。一方、日銀はこれまで短期国債の保有残高を圧縮してきたが、既に残高が乏しくなっていることから、減少ペースが鈍っている(図表8・10月は前年比15.5兆円減)。マネタリーベースの伸びはその裏側にある国債買入れ動向に左右されるため、最近は短期国債残高の減少ペース鈍化がマネタリーベース増加ペースの下支えに働いているとみられる。
従って、今後も日銀が長期国債買入れの減額を続けていくことでマネタリーベースの伸び率は低下基調を辿りそうだが、そのペースは緩やかなものに留まる可能性が高い。11月9日に発表された10月のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨総量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比2.67%(前月は2.84%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同2.34%(前月は2.46%)とともに前月から低下した(図表9)。M2・M3の伸び率低下はともに6ヵ月連続であり(小数点第2位以下まで見た場合)、伸び率の水準はそれぞれ2012年12月、2013年1月以来およそ6年ぶりの低水準となっている。
最近では、貸出の伸びが限定的に留まっていることに加え、原油高・輸出減少などの影響で経常黒字が縮小していることが影響しているとみられる。 M3の内訳を見ると、最大の項目であり、全体の約半分を占める預金通貨(普通預金など)の伸び率が前年比6.2%(前月改定値は6.6%)と大きく低下したほか、現金通貨の伸び率も同3.7%(前月は3.9%)と低下している。一方、準通貨(定期預金など、前月改定値▲2.0%→当月▲1.9%)、CD(前月改定値▲4.1%→▲3.3%)の伸びはマイナス幅をやや縮小したものの、依然としてマイナス圏が続いている(図表10・11)。なお、広義流動性(M3に投信や外債といったリスク性資産等を加算した概念)の伸び率も前年比2.16%(前月は2.27%)と、2ヵ月ぶりに低下している(図表9)。
内訳では、既述の通り、M3の伸び率が低下した影響が大きいが、注目度の高い投資信託(元本ベース)の伸びが前年比▲8.4%(前月は▲7.1%)とマイナス幅を拡大したことも響いた。投資信託からの資金流出の動きが続いている(図表11)。
一方、金銭の信託(前月4.2%→当月4.4%)、外債(前月8.1%→当月8.4%)等の伸び率はやや上昇したものの、広義流動性全体を押し上げるには力不足であった(図表11)。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。【関連レポート】
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11月8日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、10月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.23%と前月(同2.32%)からやや低下した(図表1)。業態別では、都銀等の伸び率が前年比1.1%(前月も1.1%)と横ばいを維持したが、地銀(第2地銀を含む)の伸び率が前年比3.3%(前月は3.4%)とやや低下している(図表2)。
伸び率の低下は3ヵ月ぶりとなるが、年央の低迷からは底入れ傾向にある。企業規模別では(8月分まで)、大・中堅企業向けが復調しており、M&A関連の資金需要が回復している可能性がある(図表3)。次に、為替変動等の影響を調整した実勢である「特殊要因調整後」の銀行貸出伸び率(図表1)1を確認すると、直近判明分である9月の伸び率は前年比2.40%と8月の2.28%から0.11%上昇した。ドル円レートの前年比は8月から9月にかけてほぼ横ばいであったため(図表4)、見た目(特殊要因調整前)の伸び率の動き(0.16%上昇)と大差はなかった。
10月の「特殊要因調整後」伸び率は未判明だが、10月のドル円レートの前年比が9月と大して変わらなかったことを鑑みると、特殊要因調整後の伸び率も見た目の伸び率と同様に低下し、前年比2.3%程度になったと推測される。
1 特殊要因調整後の残高は、1カ月遅れで公表されるため、現在判明しているのは9月分まで。
従って、今後も日銀が長期国債買入れの減額を続けていくことでマネタリーベースの伸び率は低下基調を辿りそうだが、そのペースは緩やかなものに留まる可能性が高い。11月9日に発表された10月のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨総量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比2.67%(前月は2.84%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同2.34%(前月は2.46%)とともに前月から低下した(図表9)。M2・M3の伸び率低下はともに6ヵ月連続であり(小数点第2位以下まで見た場合)、伸び率の水準はそれぞれ2012年12月、2013年1月以来およそ6年ぶりの低水準となっている。
最近では、貸出の伸びが限定的に留まっていることに加え、原油高・輸出減少などの影響で経常黒字が縮小していることが影響しているとみられる。 M3の内訳を見ると、最大の項目であり、全体の約半分を占める預金通貨(普通預金など)の伸び率が前年比6.2%(前月改定値は6.6%)と大きく低下したほか、現金通貨の伸び率も同3.7%(前月は3.9%)と低下している。一方、準通貨(定期預金など、前月改定値▲2.0%→当月▲1.9%)、CD(前月改定値▲4.1%→▲3.3%)の伸びはマイナス幅をやや縮小したものの、依然としてマイナス圏が続いている(図表10・11)。なお、広義流動性(M3に投信や外債といったリスク性資産等を加算した概念)の伸び率も前年比2.16%(前月は2.27%)と、2ヵ月ぶりに低下している(図表9)。
内訳では、既述の通り、M3の伸び率が低下した影響が大きいが、注目度の高い投資信託(元本ベース)の伸びが前年比▲8.4%(前月は▲7.1%)とマイナス幅を拡大したことも響いた。投資信託からの資金流出の動きが続いている(図表11)。
一方、金銭の信託(前月4.2%→当月4.4%)、外債(前月8.1%→当月8.4%)等の伸び率はやや上昇したものの、広義流動性全体を押し上げるには力不足であった(図表11)。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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