【タイGDP】7-9月期は前年同期比+3.3%増~純輸出の悪化で5期ぶりの3%台成長に鈍化

【タイGDP】7-9月期は前年同期比+3.3%増~純輸出の悪化で5期ぶりの3%台成長に鈍化: 2018年7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比3.3%増1と、前期の同4.6%増から低下し、Bloomberg調査の市場予想(同4.2%増)を大きく下回る結果となった(図表1)。

実質GDPを需要項目別に見ると、主に純輸出の悪化が成長率低下に繋がった。



民間消費は前年同期比5.0%増と、前期の同4.5%増から更に上昇した。財別に見ると、たばこの物品税増税を背景に非耐久財(0.8%増)が鈍化する一方、自動車販売が好調な耐久財(16.7%増)やサービス(7.7%増)、半耐久財(4.3%増)が加速した。



政府消費は同2.1%増(前期:同2.0%増)と、ユニバーサル・ヘルスケア・カバレッジの支出拡大により僅かに上昇した。



投資は同3.9%増と、前期の同3.7%増から小幅に上昇した。投資の内訳を見ると、まず民間投資は同3.9%増(前期:同3.2%増)と上昇した。民間設備投資(同3.4%増)と民間建設投資(同5.4%増)がそれぞれ改善した。また公共投資は同4.2%増(前期:同4.9%増)と低下した。公共建設投資(同4.2%増)こそ拡大したものの、公共設備投資(同4.1%増)が鈍化した。



在庫変動の成長率寄与度が+5.8%ポイントと、非貨幣用金の輸入が増加して前期の+1.4%ポイントから大きく増加した。



純輸出は実質GDP成長率への寄与度が▲7.6%ポイントと、前期の▲0.5%ポイントから悪化した。まず財・サービス輸出は同0.1%減(前期:同6.8%増)とマイナスとなった。うち財貨輸出が同0.2%減(前期:同7.4%増)、サービス輸出が同0.2%増(前期:同4.9%増)と、それぞれ低下した。また財・サービス輸入は同10.7%増(前期:同8.3%増)と更に拡大した。うち財貨輸入が同9.4%増(前期:同7.2%増)、サービス輸入が同16.9%増(前期:同13.3%増)と、それぞれ上昇した。供給項目別に見ると、農業と製造業、観光関連のサービス業の鈍化が成長率低下に繋がった(図表2)。



農林水産業は前年同期比4.3%増と、前期の同10.2%増から低下した。農業・林業(5.0%増)は堅調な拡大を維持したものの、好天に恵まれて産出量が大きく伸びた前期(同11.4%増)から低下した。漁業(同3.0%減)はエビの生産鈍化により引き続きマイナスとなった。



非農業部門では、まず製造業が同1.6%増(前期:同3.2%増)と輸出鈍化を背景に低下した。製造業の内訳を見ると、自動車やコンピューター・部品などの資本・技術関連産業(同5.1%増)が堅調を維持する一方、化学・同製品やゴム・プラスチック製品などの素材関連(同2.7%増)や食料・飲料や宝飾品などの軽工業(同2.8%減)が低調だった。また電気・ガス・水供給業についても同1.5%増(前期:1.8%増)と小幅に低下した。一方、建設業は同4.7%増(前期:同2.0%増)となり、民間部門と公共部門が揃って改善した。



全体の6割弱を占めるサービス業は引き続き景気の牽引役となっているが、前期から伸び率の低下した業種が多かった。不動産業こそ同4.8%増(前期:同3.5%増)と上昇したが、卸売・小売業が同7.2%増(前期:同7.3%増)、金融業が同3.0%増(前期:同4.6%増)、ホテル・レストラン業が同6.5%増(前期:同9.4%増)、運輸・通信業が同6.2%増(前期:同6.8%増)と、それぞれ低下した。



 




1 11月19日、タイの国家経済社会開発委員会事務局(NESDB)は2018年7-9月期の国内総生産(GDP)を公表した。なお、前期比(季節調整値)の実質GDP成長率は0.0%増と前期の同0.9%増から低下した。
タイ経済は5四半期ぶりに成長ペースが3%台まで減速した。今期の景気減速は、比較対象の昨年7-9月期に好調だった輸出が伸び悩んだことが主因だ。財貨輸出は海外経済の減速や日本やフィリピン、香港で発生した自然災害の悪影響を受けて鈍化した。米国の保護主義的な貿易措置についても、直接的には米国向けの洗濯機や太陽光電池、間接的には中国向けの集積回路などで輸出に悪影響が出てきている。またサービス輸出についても、成長セクターである観光業が低調で鈍化した。7-9月期の訪タイ外国人観光客数は、タイ南部プーケットにおけるボート転覆事故の発生やサッカーワールドカップ・ロシア大会の開催により前年比2.7%増となり、4-6月期の同9.1%増から鈍化した(図表3)。一方、内需の改善傾向は続いており、とりわけ民間消費は5年半ぶりの+5%成長となった。外国人旅行者による消費支出こそ落ち込んだものの、国内の雇用・所得環境の改善や低インフレ・低金利環境の継続、高い消費者マインドなど消費を巡る環境は依然として良好である(図表4)。また5年間の保有が条件とされたファーストカー政策の影響がなくなり、買い替え需要によって自動車販売が好調に推移しているほか、福祉カードのような政府の低所得者支援策により家計の購買力が向上したこともプラスに寄与している。



また投資も民間投資を中心に3期連続で改善した。製造業の設備稼働率は自動車販売の好調で高めの水準にあり、低金利を背景に建設需要も高く、民間投資は設備投資と建設投資が揃って加速した。公共投資は鈍化したものの、政府主導のインフラ開発を背景に建設投資が拡大して底堅い伸びを維持している。



先行きのタイ経済は成長率が4%前後まで持ち直し、更なる減速は回避されるだろう。今後は観光業が持ち直すほか、これまでの雇用・所得環境の改善を背景に民間消費も高めの伸びを維持するためだ。投資は輸出型製造業の設備投資が期待しにくくなるが、東部経済回廊などの政府主導の開発プロジェクトの進展や民間消費の拡大を背景に底堅い伸びを維持するだろう。また、来年2月の総選挙後には、政策の先行き不透明感が払拭されることも投資にプラスとなる。もっとも米中貿易戦争の過熱により、輸出が更に減速する恐れもある。タイは比較的外部環境に左右されやすい国であるだけに、注意深く見守る必要がある。 



 







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