モナドを理解するのが難しい理由
モナドを理解するのが難しい理由:
の冒頭部分のみの転載です。
記事を読んで興味深かったので、著者の岡部氏の許可を得て転載しています。オリジナル記事の全文は分量も多く、モナドを理解するのが難しい理由を克服すべく初心者も理解しやすいように書かれており、内容が充実しているので、オススメです。
30分でわかるJavaScriptプログラマのためのモナド入門
の冒頭部分のみの転載です。記事を読んで興味深かったので、著者の岡部氏の許可を得て転載しています。オリジナル記事の全文は分量も多く、モナドを理解するのが難しい理由を克服すべく初心者も理解しやすいように書かれており、内容が充実しているので、オススメです。
モナドを理解するのが難しい理由
- 数学と用語問題。モナドの理論的基盤として圏論があるのは事実。理論的基盤がしっかりしているのはプログラミングという数学的作業において歓迎すべきことではある一方で、他方そのため一般的なプログラマにとってはまず用語に馴染みがない。歴史的に、圏論ベースのモナドを理論から関数型プログラミングに応用されていく過程では、実際、先駆者の間でさえ紆余曲折があったのだが、学習者へは馴染みのない用語を伴って、いきなり高度な数学的概念全開で天下り的に提示されてしまうことが多い。わかっている人、そもそも実用性以上に数学性、理論的側面に興味がある人にとっては知的好奇心を掻き立てられるトピックではあるが、そうでないプログラマにとっては「難しい、とっつきにくい、学習コストが大きすぎて実用性もよくわからない」となることが多い。「わからないの?ならとりあえず、巷の半端な解説よりPhilip Wadler先生の数々の素晴らしい論文を読んだほうがいい!」という人もいるが、ほとんどの学習者にとって、そういうアドバイスをされる時点で、このアプローチは絶望的である。そもそも彼らには初学者に向けて噛み砕いて教えるつもりはない。そして、実はモナドを理解するために高度な数学の素養は不要。小中高で習った数学レベルで十分だ。
- 逆に過度に理論面を放棄した解説を読んだ結果、余計にわけわからなくなった問題。 モナド解説に限らず科学分野の一般読者向け解説記事でアルアル。比喩、例示という極めて高度な芸術的作業が不十分なため、一瞬わかったような錯覚にさせられはするが、実際はなにもわかっておらず、その後長期間に渡り理解の不整合に苦しむ羽目になる、という不幸なパターン。読者、特にプログラマは馬鹿ではないので、そういう読者の知性を愚弄する真似は努めて避けるべき。小中高レベルの数学で十分ならばちゃんと説明すればいいだけのこと。それができないというのは、説明者自身が理解していない証拠。
- Haskellに寄りすぎ問題。歴史的に、圏論のモナドが関数型プログラミングへ応用できることが発見され、論文が発表された際に、使用された言語はHaskellであり、関数型言語としてのHaskellの根源的なフレームワークとして積極的にモナドが導入された。そのためHaskellerにとってはモナドの理解は必須要項であり、情報交換もHaskellのSyntaxをもって活発に行われている。彼らの知識の源泉は主にMonad - Haskell Wikiであったり、Haskell/圏論#モナドであったり、Learn You a Haskell for Great Good!(無料公開中)(有料日本語訳『すごいHaskellたのしく学ぼう!』)であったりして、ほとんどの場合そのHaskellで一般的な用語、Syntaxで語られる。Haskellerにとっては「モナドとはすでに手元にあるもの」であり、手元あるいは、足場となる言語を活用するための学習モティベーションも極めて高い。裏を返すと、Haskellerでないその他大勢のプログラマにとっては以上の事実は逆風となる。
- 複数の新規概念ごっちゃまぜ問題。モナドが関数型プログラミングに応用される際、学習者にとっては。複数にわたる本来興味深いはずの新規概念があるのだが、それらはほとんどの場合整理されて説明されることはない。たとえば上記のHaskellに寄りすぎ問題により、Haskellの基本的文法とからめて天下り的に
do
とかIO
だ、などとしょっぱなから当たり前のように言われるのだが、これはモナドを遅延評価、イベント、非同期プログラミング、FRPの概念と合わせて応用する話であり、モナドの概念導入段階では本来すべき話ではない。事実モナドの関数型プログラミングへの応用黎明期では、モナドによって入出力(IO)が扱える、とPhilip Wadler先生たちから提案されたのはちょっと後になってからだ。聡明な専門家の間でさえそんな感じだったのだから、IO、それから状態管理への展開はこれはこれでひとつの一大発明であって、モナドの応用シーンとして、面白い別トピックとしてわけて考えたほうがいい。しかし、「モナドが一体何に役立つのか?」という強い要請のために「ほらHaskellではIOやdoで使われてるよ」と言いたい事情もわかる。これはHaskellに寄りすぎ問題の弊害でもある。
(Haskellの)Monadタイプクラスへの不釣り合いなまでの大注目度合いは歴史的な幸運にすぎない。彼らはよくIOをモナドを関連づけるが、この2つは独立した有用な概念だ。(関数型プログラミングでの)IOはマジカルで、モナドはそのIOとしょっちゅう関連づけられているので、モナドがマジカルだという錯覚に陥りやすい。
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