2018~2020年度経済見通し(18年11月)

2018~2020年度経済見通し(18年11月): ■要旨



<実質成長率:2018年度1.0%、2019年度0.8%、2020年度1.2%を予想>

 



  1. 2018年7-9月期の実質GDPは消費、設備、輸出がいずれも減少し、前期比年率▲1.2%と2四半期ぶりのマイナス成長となった。10-12月期は自然災害による落ち込みの反動から高めの成長となるが、景気の牽引役となってきた輸出は、海外経済の減速を背景に2018年に入り減速している。


     
  2. 2019年度から2020年度にかけての日本経済は、消費税率引き上げ、東京オリンピック・パラリンピック開催によって景気の振幅が大きくなることが見込まれる。消費税率が引き上げられる2019年10-12月期のマイナス成長は避けられないが、軽減税率の導入、各種の負担軽減策から2019年度下期の景気の落ち込みは限定的にとどまるだろう。


     
  3. 2020年度前半は東京オリンピック開催に向けた需要の拡大から高めの成長となるが、2020年度後半はその反動から景気の停滞色が強まる可能性が高い。実質GDP成長率は2018年度が1.0%、2018年度が0.8%、2019年度が1.2%と予想する。


     
  4. 消費者物価上昇率(生鮮食品を除く総合)は、2018年度が0.9%、2019年度が0.8%、2020年度が1.1%(消費税の影響を除く)と予想する。賃金上昇率が低水準にとどまりサービス価格の上昇率が高まらない中では、物価目標の2%が達成されることはないだろう。
■目次



1.2018年7-9月期は年率▲1.2%と2四半期ぶりのマイナス成長

  ・7-9月期の落ち込みは自然災害の影響大も、輸出は基調として減速

  ・消費税率引き上げの影響

2. 実質成長率は2018年度1.0%、2019年度0.8%、2020年度1.2%を予想

  ・消費増税後、オリンピック終了後に景気は正念場を迎える可能性

  ・消費の本格回復は見込めず

  ・設備投資の循環的な調整圧力が徐々に高まる

  ・公共事業の景気押し上げ効果は限定的

  ・厳しさを増す輸出環境

  ・物価の見通し2018年7-9月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比▲0.3%(前期比年率▲1.2%)と2四半期ぶりのマイナス成長となった。



4-6月期の高成長(前期比年率3.0%)から一転してマイナス成長となった主因は、4-6月期に高い伸びとなった民間消費、設備投資がいずれも減少に転じたことである。民間消費は天候不順による外出の手控えや生鮮野菜、エネルギー価格の高騰による実質購買力の低下から、前期比▲0.1%と2四半期ぶりに減少した(4-6月期:同0.7%)。また、好調が続いていた設備投資も自然災害に伴う供給制約の影響から前期比▲0.2%と8四半期ぶりに減少した(4-6月期:同3.1%)。



また、海外経済の減速や自然災害の影響などから輸出が前期比▲1.8%と大きく落ち込んだことから(輸入は前期比▲1.4%)、外需寄与度は前期比▲0.1%(年率▲0.3%)と小幅ながら4-6月期に続き成長率の押し下げ要因となった。



夏場以降の景気は自然災害の影響で実勢が見極めにくくなっているが、民間消費は2017年4-6月期から増加と減少を繰り返しており、緩やかな持ち直しにとどまっている。一方、設備投資は好調な企業収益を背景に回復基調を維持していると判断される。(7-9月期の落ち込みは自然災害の影響大も、輸出は基調として減速)

2018年7-9月期の経済活動は、西日本豪雨、台風、北海道地震などの相次ぐ自然災害の発生によって大きく落ち込んだ。景気との連動性が高い鉱工業生産指数は、豪雨、台風上陸によって一部の工場で操業停止を余儀なくされたことなどから、前期比▲1.3%と2四半期ぶりに低下した。また、これまで好調を続けてきたインバウンド需要だが、9月に台風第21 号、北海道地震によって関西空港、新千歳空港などが一時閉鎖されたこともあり、訪日外客数は前年比▲5.3%と2013年1月以来5年8ヵ月ぶりの減少となった。特に、関西、北海道への訪問客が多い中国、韓国など東アジアからの来客数が大幅に減少した。2018年7-9月期の経済指標の悪化は、その多くが自然災害による悪影響を受けたものと考えられるため、その影響がなくなる10月には反発することが期待される。ただし、景気の牽引役となっていた輸出は2018年入り後伸びが鈍化しており、海外経済の回復ペース鈍化を背景に基調として減速局面に入っている可能性が高い。



IHS Markitの製造業PMI(購買者担当指数)は2017年12月の54.5をピークに低下を続けており、2018年10月には52.1となった。地域別には、米国が高水準を維持している一方、2017年末にかけて60台の高水準まで上昇したユーロ圏が急低下している。PMIは世界、米国、ユーロ圏、新興国ともに引き続き中立水準の50を上回っており、製造業の改善基調が途切れたわけではないが、拡大ペースは明らかに鈍化している。また、日本の輸出数量に対して先行性のあるOECD景気先行指数(OECD+非加盟主要6カ国)も2017年末頃をピークに緩やかな低下傾向が続いている。輸出を取り巻く環境は徐々に厳しくなっている。(消費税率引き上げの影響)

10/15に安倍首相は、予定通り2019年10月に消費税率を8%から10%に引き上げることを表明し、経済に影響を及ぼすことがないようにあらゆる施策を総動員するとした。



具体的には、従来から決まっていた幼児教育の無償化、軽減税率の導入に加え、キャッシュレス決済時のポイント還元、自動車、住宅について2019年10月以降の購入にメリットがでるような施策を準備することを明らかとした。その後、低所得者対策としてプレミアム商品券の発行も検討されている。



政府が特に重視しているのが、消費税率引き上げ前後の需要の平準化で、付加価値税率引き上げ前後の景気変動が小さく抑えられている欧州の事例を参考に、税率引き上げ前後に企業が柔軟な価格付けができるよう、ガイドラインを整備するとしている。



確かに、ドイツ、英国の付加価値税率引き上げ前後の個人消費は、日本に比べて増税前の駆け込み、増税後の反動ともに小さい。その一因が、日本と欧州で税率引き上げ時の価格転嫁の仕方が違うことだ。日本では税率引き上げと同時にほぼ100%価格転嫁されているのに対し、欧州では税率引き上げ時には税抜き価格が引き下げられ、税込み価格はあまり変わっていない。消費者から見れば税率引き上げ前に前倒しで購入するインセンティブがない。



欧州は価格の表示方式が総額表示(税込み)となっていることもあり、企業は増税前も増税後もほぼ同じペースで値上げをしている。結果的に税抜き価格では増税直後に値下げをしていることになる。このことは増税の一部を企業が負担していることを意味するが、もともとの物価上昇率が高いため、約半年後には税抜き価格でも増税前の水準に戻り、負担のかなりの部分は短期間で吸収されている。



一方、日本は欧州のように価格改定が頻繁ではないため、税率引き上げ時に価格転嫁を行わなかった場合には、長期にわたって企業が負担し続けることになりかねない。企業が価格決定を自由に行うのは望ましいことだが、デフレマインドが残る日本では増税前に積極的な値上げが行われることは考えにくい。欧州の価格転嫁方式を日本で取り入れることは難しいだろう。もうひとつの需要平準化策は、駆け込み需要と反動が大きい自動車、住宅について増税後の購入支援策を講じることだ。ただ、前回の引き上げ時にも、自動車取得税の引き下げやエコカー減税、住宅ローン減税の拡充、すまい給付金などの施策が実施されたが、減税等の規模が小さかったこともあり、あまり効果はなかった。2019年10月の消費増税に向けた具体的な対策の規模は年末までに取りまとめられる。もちろん、減税等の規模が消費税率引き上げによる負担増加分を上回るようなものとなれば、駆け込み需要や反動減は抑制できるが、それでは何のための増税なのか分からなくなってしまう。また、対策の規模が大きすぎれば、増税前に買い控えが発生するといった副作用をもたらす恐れもあるだろう。



もともと、2019年10月の消費税率引き上げによる影響は、前回(2014年4月)よりも税率の引き上げ幅が小さいこと(3%→2%)、飲食料品(酒類と外食を除く)及び新聞に軽減税率の導入が予定されていたことから、実質的な引き上げ幅は前回の約半分であり、政府の追加的な施策がなくても消費増税による影響は前回よりも小さくなることが見込まれていた。また、住宅、自動車など買い替えサイクルの長い高額品については前回の引き上げ時に前倒しで購入されている割合が高いため、駆け込み需要の規模は前回増税時を下回る可能性が高い。当研究所では、消費増税前の駆け込み需要の規模は、1997年4月が3.5兆円(個人消費1.7兆円、住宅投資1.8兆円)、2014年4月が4.0兆円(個人消費3.0兆円、住宅投資1.0兆円)と試算しているが、次回の増税前の駆け込み需要は1.9兆円(個人消費1.5兆円、住宅投資0.4兆円)と前回の半分程度になると想定している。増税前に高成長となる一方、増税後には一時的にマイナス成長となることは避けられないが、成長率の振幅は前回に比べれば小さくなるだろう。



なお、次回の消費税率引き上げは年度途中からとなるため、駆け込み需要とその反動減は2019年度内でほぼ相殺されることが想定される。駆け込み需要とその反動はあくまでも需要の発生時期がずれるだけで、一定期間を均してみれば影響はニュートラルだ。長期にわたって個人消費などの経済活動に影響を及ぼすのは物価上昇に伴う実質所得低下のほうである。前回の消費税率引き上げ後の個人消費は反動減が一巡した後も低迷が続いたが、これは消費税率引き上げによって急速に落ち込んだ実質所得の水準がなかなか元に戻らなかったことが主因と考えられる。前回増税時の実質雇用者所得(一人当たり実質賃金×雇用者数)の動きを振り返ると、名目賃金の伸び悩みが続く中で消費者物価上昇率が前年比3%を上回る水準まで高まったため、実質賃金上昇率が大幅なマイナスとなり、このことが消費低迷の長期化につながった。実質雇用者所得が増税前(2014年1-3月期)の水準に戻ったのは増税から2年が経過した2016年1-3月期であった。



足もとの賃金上昇率は好調な企業収益を背景としたボーナスの大幅増加から高めの伸びとなっているが、賃金総額の約4分の3を占める所定内給与の伸びは前年比0.5%程度(毎月勤労統計の共通事業所による伸び率)にとどまり、1%程度の消費者物価上昇率を下回っている。次回の消費税率引き上げによる消費者物価上昇率への影響は1%程度だが、賃上げ率が高まらなければ実質賃金上昇率はマイナスとなり、消費低迷が長期化するリスクが高まるだろう。(消費増税後、オリンピック終了後に景気は正念場を迎える可能性)

2018年7-9月期は自然災害の影響でマイナス成長となったが、10-12月期は供給制約の緩和から民間消費、設備投資、輸出がいずれも増加に転じ、前期比年率2.3%と潜在成長率を大きく上回る高成長となることが予想される。ただし、海外経済の減速に伴う輸出の伸び悩みから景気の基調は2017年に比べて弱まっており、景気の牽引役となってきた設備投資も企業収益の伸び率鈍化を背景に減速に向かう可能性が高い。2019年度入り後は10月に予定されている消費増税前の駆け込み需要を主因として高めの成長となるが、増税直後の2019年10-12月期は前期比年率▲2.7%とマイナス成長となることは避けられないだろう。ただし、税率の引き上げ幅が小さいことなどから成長率のマイナス幅は前回増税時(2014年4-6月期の前期比年率▲7.1%)を下回るだろう。2020年度は東京オリンピック・パラリンピックの開催・終了が景気振幅の一因となりそうだ。過去の夏季オリンピック開催国において、開催前後の四半期毎の実質GDP成長率(1964年の東京(日本)から2016年のリオデジャネイロ(ブラジル)までの平均。ただしデータ上の制約から1980年のモスクワ(ソ連)を除く)をみると、成長率のピークは開催2四半期前で、その後1年間は伸び率が低下していることが確認できる。需要項目別には、総固定資本形成は開催3四半期前がピークで、開催2四半期後まで伸び率が急低下しており、個人消費は開催2四半期前をピークに、開催3四半期後まで伸び率が緩やかに鈍化している。これを機械的に2020年の東京オリンピック・パラリンピックに当てはめると、成長率のピークは2020年1-3月期となる。もちろん、実際の経済はオリンピック以外の要因に左右されるが、現在、計画されている消費増税に向けての各種施策は期限付きのものも多く、対策の効果一巡がオリンピック終了と重なることで、景気の落ち込みを増幅するリスクがあることには注意が必要だろう。



今回の予測では、オリンピック関連需要の一巡によるマイナスの影響を、消費増税後の反動減の緩和による押し上げが打ち消すことにより、2020年度前半まで景気は好調を維持するとした。しかし、オリンピック終了後の2020年度下期には押し上げ要因がなくなるため、景気の停滞色が強まることは避けられないだろう。



実質GDP成長率は2018年度が1.0%、2019年度が0.8%、2020年度が1.2%と予想する。(消費の本格回復は見込めず)

実質GDP成長率の予想を需要項目別にみると、民間消費は2018年度が前年比0.5%、2019年度が同0.3%、2020年度が同0.6%と予想する。



消費動向を左右する雇用所得環境の先行きを展望すると、2018年度は春闘賃上げ率との連動性が高い所定内給与の伸びは限定的にとどまるものの、好調な企業収益を背景にボーナスの伸びが大きく高まることから、名目雇用者報酬は前年比2.8%と2017年度の同2.1%から伸びが加速するだろう。2019、2020年度は春闘賃上げ率が徐々に高まるものの、企業収益の改善ペース鈍化を受けてボーナスの伸びが低下すること、労働供給制約の問題から雇用者数の伸びも頭打ちとなることから、名目雇用者報酬の伸びは2019年度が前年比2.4%、2020年度が同2.2%へと低下する。



また、消費税率引き上げによって物価上昇率が高まるため、実質雇用者報酬の伸びは2018年度の前年比2.0%から2019年度が同1.1%、2019年度が同0.9%と低い伸びにとどまるだろう。



さらに利子所得の低迷、年金給付の抑制などから、家計の可処分所得の伸びは引き続き雇用者報酬の伸びを大きく下回る。実質可処分所得の伸びは2018年度が前年比0.7%、2019年度が同0.3%、2020年度が同0.4%と低い伸びが続く。個人消費は、オリンピック関連需要(宿泊費、交通費、飲食費、買い物代、家電製品など)の一時的な盛り上がりは見込まれるものの、実質可処分所得の伸び悩みを背景に基調としては低調な推移が続くことが予想される。(設備投資の循環的な調整圧力が徐々に高まる)

2018年7-9月期の設備投資は前期比▲0.2%と8四半期ぶりに減少したが、4-6月期の高い伸び(前期比3.1%)の反動に加え、自然災害による供給制約が下押し要因になったことを考慮すると、基調としては増加傾向が続いていると判断される。



日銀短観2018年9月調査では、2018年度の設備投資計画(含むソフトウェア、除く土地投資額)が前年度比11.2%(全規模・全産業)と9月調査としては過去最高の伸びとなっており、設備投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)は2018年7-9月期に前期比0.9%と5四半期連続で増加した後、10-12月期の見通しも同3.6%の増加となっている。



「設備投資/キャッシュフロー」比率や「設備投資/経常利益」比率は低水準にとどまっており、企業の投資スタンスは積極化しているわけではないが、企業収益の大幅増加に伴う潤沢なキャッシュフローを背景に、設備投資は先行きも底堅い動きが続く可能性が高い。ただし、個人消費を中心とした国内需要は当面力強さに欠ける状況が続く可能性が高く、期待成長率の上昇によって企業の投資意欲が高まるまでには時間を要するだろう。また、過去最高水準にある企業収益だが、輸出の減速、原材料費、人件費上昇に伴うコスト増などから先行きは増益率が鈍化することが見込まれる。設備投資の名目GDP比は2018年7-9月期には16.6%と現行のGDP統計(簡易遡及を除く)で遡ることができる1994年以降のピークを更新しており、循環的な調整圧力は高まりつつある。



設備投資は2017年度の前年比3.1%から2018年度は同5.1%へと伸びを高めるが、企業収益の伸び率低下を受けて、2019年度が同2.2%、2020年度が同2.2%へ減速すると予想する。(公共事業の景気押し上げ効果は限定的)

公的固定資本形成は、2016年度第2次補正予算の執行本格化から2017年4-6月期に前期比5.0%の高い伸びとなったが、その効果が一巡した後は1年以上にわたって減少が続いている。



安倍政権発足後は毎年、年度途中に補正予算が編成される一方、当初予算は抑制気味となっており、補正予算がなければ年度末にかけて公共事業が落ち込んでしまう構造になっている。2017年度補正予算では、公共事業関係費が約1兆円積み増されたが、2016年度補正予算の1.6兆円に比べて規模が小さかったため、公的固定資本形成の減少に歯止めをかけるまでには至っていない。先行きについては、11/7に成立した災害からの復旧・復興を中心とした総額0.9兆円の2018年度第1次補正予算(うち公共事業関係費は0.4兆円)の執行が2018年度末にかけて公的固定資本形成を押し上げることが見込まれる。さらに、2018年度内には防災・減災、国土強靭化のための第2次補正予算の編成が予定されている。ただし、2019年度当初予算はこれまでと同様に抑制気味となる可能性が高く、公共事業による景気押し上げ効果は限定的にとどまることが予想される。(厳しさを増す輸出環境)

輸出は海外経済の減速を背景に回復ペースが鈍化している。当研究所では、米国は2018年には3%近い高成長となるものの、歳出拡大の時限措置終了、減税による押し上げ効果の減衰、保護主義的な通商政策による下押しなどから、2019年が2.6%、2020年が1.8%と成長率が徐々に低下すると予想している。また、すでに景気が減速し始めているユーロ圏、中国も2018年から2020年にかけて成長率が緩やかに低下することを見込んでいる。



さらに、2019年中に米国の利上げ局面が終了することを受けて、これまで輸出の下支え要因となっていた円安・ドル高基調にも歯止めがかかりそうだ。先行きの輸出は回復基調を維持するものの、輸出環境が厳しさを増していく中で力強さに欠けるものとなるだろう。なお、東京オリンピック開催時には訪日外国人の急増によってサービス輸出(旅行収支の受取額)が大幅に増加することが見込まれる。



財貨・サービスの輸出は2017年度には前年比6.3%の高い伸びとなったが、2018年度が同2.5%、2019年度が同3.3%、2020年度が同3.3%と緩やかな伸びが続くと予想する。



一方、財貨・サービスの輸入は、国内需要の回復ペースが個人消費を中心に緩やかにとどまることを反映し、2018年度が前年比2.3%、2019年度が同2.2%、2020年度が同2.1%と輸出の伸びを下回る。この結果、外需寄与度は2018年度が前年比+0.0%、2019年度が同0.2%、2020年度が同0.2%とプラスを維持するだろう。(物価の見通し)

消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、2018年9月に前年比1.0%と7ヵ月ぶりに1%に達したが、その主因は既往の原油高に伴うエネルギー価格の上昇幅拡大である。日銀が基調的な物価変動を把握するために重視している「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」(いわゆるコアコアCPI)の上昇率はゼロ%台前半にとどまっている。



先行きについては、足もとの原油価格急落に伴うエネルギー価格の上昇幅縮小を主因として2018年末までには1%を割り込む可能性が高く、2019年度中はゼロ%台後半の推移が続くことが予想される。コアCPI上昇率が1%に達するのはオリンピック開催に向けて需要の拡大が見込まれる2020年度入り後となろう。



消費者物価のうち、財については為替、原油価格などの変動に伴う原材料価格の上昇を一定程度価格転嫁する動きが見られる一方、サービス価格については変動幅が非常に小さくなっている。サービス価格と連動性の高い賃金の伸びが、労働需給が引き締まる中でも緩やかなものにとどまっていることがその背景にある。



企業収益が過去最高を更新し、失業率もバブル期の水準まで低下するなど、賃上げを巡る環境は極めて良好だったにもかかわらず、2018年度の春闘賃上げ率は定期昇給分を除いたベースアップで0.5%程度にとどまった。企業の慎重な賃金設定スタンスが維持される中、デフレマインドが残存していることを背景に労働者側の賃上げ要求水準が上がらないことが賃上げ率の低迷につながっていると考えられるが、このような傾向は今後も続く可能性が高い。



消費者物価は先行きも為替、原油価格などの外生的な要因によって左右されやすい状況が続くが、2020年度中に日本銀行が物価安定の目標としている2%に達することは難しいだろう。



コアCPI上昇率は2018年度が前年比0.9%、2019年度が同1.3%(0.8%)、2020年度が同1.6%(1.1%)と予想する(括弧内は消費税率引き上げの影響を除くベース)。 



 







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