ソフトバンクが自律清掃ロボットに参入した理由、自律運転ソフトウェアを他社製品にも供給可能
ソフトバンクが自律清掃ロボットに参入した理由、自律運転ソフトウェアを他社製品にも供給可能:
ソフトバンクロボティクスは19日に、2機種めとなる自律運転の清掃ロボットを発表し、清掃業界に本格的な参入を果たした。清掃業界の企業が集まる展示会イベントである「ビルメンヒューマンフェア&クリーンEXPO 2018」(東京ビッグサイト)にも展示ブースを設けて、8月に発売を開始した大型のスクラバー(床洗浄)「RS26」と、先日発表したばかりの中型の乾式バキューム掃除機「Whiz」(ウィズ)を展示した。
「Whiz」については30分ごとに展示ブースでデモンストレーションが行われ、来場者から高い注目を集めていた。
「RS26」と「Whiz」は同様の自律運転機能を持っているが、いずれも米国Brain社が開発しているOS「BrainOS」を搭載しているからだ。「BrainOS」については、国内の清掃機器製品への組込提供も可能だと言う。
清掃業界は現在、深刻な人手不足と高齢化の課題に直面している。吉田氏は「ある調査によると、有効求人倍率は一般の職種が1.35なのに対して清掃業界は2倍、平均年齢は一般が42.1歳に対して清掃業界は52.6歳とされているが、実際の肌感はどちらの数字ももっと上ではないか」と語った。
現在、同社が発売している自律掃除型ロボットの最大の特徴はどちらも「手動」と「自律運転」が切り換えられること。通常、自律運転するためには「ティーチング」と呼ばれる走行ルートの学習が必要だが、同社の機種の場合、初日は操縦したり(RS26の場合)、手押しして(Whizの場合)、手動で清掃することができ、次回からは同じルートを手動で走行したとおりにトレースして自律走行ができる。もちろん、人が飛び出したり、障害物が置かれている場合はLiDARやカメラ、センサー類がそれらを検知して、避けて掃除を継続したり、中断して管理者に通知を行うことができる。
「手動で掃除しても、自動でやっても、どちらでも人が選択することができる。ロボットができる清掃作業は人がこなせるほんの一部にすぎない。その一部をロボットで自動化し、あとは人がやるという役割分担が
重要だし、ロボットと人が協働するとどのように作業することが効率的か、ビジネスを再構築していくことが重要」と語った。
続いて同社のCEOが登壇し、「私達の技術は、タイヤがついてさえいれば、あらゆるものを自律運転化することができる」と強調した。
最後に質疑応答で、吉田氏は自律清掃ロボットに今後追加したいと検討している機能をあげた。まずはモップがけの機能。Whizはバキューム機能の掃除ロボットだが、先端にモップのようなオプションを装着することで拭き掃除の機能も追加できるのではないか、とした。また、エレべータと連動して、階を超えた自律清掃を実現することも今後の視野に入れていることも明らかにした。
「Whiz」については30分ごとに展示ブースでデモンストレーションが行われ、来場者から高い注目を集めていた。
「ビルメンヒューマンフェア&クリーンEXPO 2018」のソフトバンクロボティクスの展示ブース。新製品を見ようと多くの人が来場した
数日前に発表したばかりの乾式のバキューム型自律運転掃除ロボット「Whiz」。本体前面の上部(黒い縦線状の位置)にRGBカメラと3Dカメラ、下の横線状の中央にLiDARを搭載している。腹部の丸い部分にペーパーバッグが収容されている
本体上部の青いLEDは右左折時に黄色く光るウィンカーの役割をする。背部の丸い部分は排気ダクト。エアフィルター内蔵なので排気をクリーンに保ち、高齢者施設などでも安心して利用できるよう配慮されている。その下の背面のカバー部を開けると着脱式のバッテリーが内蔵されている
■ クリーンエキスポでの「Whiz」のデモンストレーション展示ブースで稼働展示されていた大型のスクラバー「RS26」
なぜ、ソフトバンクグループが清掃ロボット業界に参入したのか
なぜ、ソフトバンクグループが清掃ロボット業界に参入したのか、ロボット化に注力する同社はどのような未来を描くのか、Brain社の自動化システムとはどのようなものか、同展示会の最終日にソフトバンクロボティクスとBrain社による講演が行われ、それが明らかになってきた。ソフトバンクロボティクスが描くロボット化のマイルストーン
朝一番の講演であるにも関わらず超満員にふくれあがった会場で、ソフトバンクロボティクスの吉田氏が登壇した。吉田氏はまず「シンギュラリティ」に触れ、人間の知能を凌駕する超知性の誕生に向かってICT技術は進化していくこと、その上で近い将来、ロボット化が進むマイルストーンについての見解を語った。ソフトバンクロボティクス株式会社 Chief Business Officer 事業推進本部 本部長 吉田 健一氏
同グループが傘下に納めているボストンダイナミクス社のロボットにも触れた上で、人間と同様のロボットを作ることは極めて困難ではあり、要介護者を介護できる自律ロボットなどはこれから30年以上も登場しないだろう、とした。顔、脚、手の各部をロボット化して社会に実践利用していくことは現実的であり、「顔」(表情や会話を含む)の部分は「Pepper」で着手した。また器用で細かい人間の「手」を再現できるロボット化は当分先の未来の話で、それよりも「脚」、モビリティはすぐにでも実現できることを強調した。顔はPepperで実現した。手の実現は極めてまだ難しい。脚はすぐにでも着手できると考えた(吉田氏)
「タクシーやバス、トラックなどが自動運転車となり、公道を走る時代があと7年でやってくる」と予測した上で、公道の自動運転はまだ先の話だが、屋内や限られた範囲内での「脚」のロボット化、すなわち自律運転は既にもう実用的な技術水準にあり、それをすぐにでも着手できるのが「清掃業界」であり、ここから参入していくべきだと語った。清掃業界は現在、深刻な人手不足と高齢化の課題に直面している。吉田氏は「ある調査によると、有効求人倍率は一般の職種が1.35なのに対して清掃業界は2倍、平均年齢は一般が42.1歳に対して清掃業界は52.6歳とされているが、実際の肌感はどちらの数字ももっと上ではないか」と語った。
現在、同社が発売している自律掃除型ロボットの最大の特徴はどちらも「手動」と「自律運転」が切り換えられること。通常、自律運転するためには「ティーチング」と呼ばれる走行ルートの学習が必要だが、同社の機種の場合、初日は操縦したり(RS26の場合)、手押しして(Whizの場合)、手動で清掃することができ、次回からは同じルートを手動で走行したとおりにトレースして自律走行ができる。もちろん、人が飛び出したり、障害物が置かれている場合はLiDARやカメラ、センサー類がそれらを検知して、避けて掃除を継続したり、中断して管理者に通知を行うことができる。
「手動で掃除しても、自動でやっても、どちらでも人が選択することができる。ロボットができる清掃作業は人がこなせるほんの一部にすぎない。その一部をロボットで自動化し、あとは人がやるという役割分担が
重要だし、ロボットと人が協働するとどのように作業することが効率的か、ビジネスを再構築していくことが重要」と語った。
清掃会社やテナント企業が自社で清掃する場合でも、床の掃除機清掃は全体の40%程度。そこをまずは自動化していこう、という提案となる
他社の既存製品に自律運転ソフトウェアを提供できる
この自律運転や自動化のソフトウェアは前述のとおり、サンディエゴにあるBrain社が開発を担当している。米国では既にウォルマート、コストコ(日本の名称ではコスコ)などの大型店で導入されているほか、空港、病院、大学などでも採用されている。続いて同社のCEOが登壇し、「私達の技術は、タイヤがついてさえいれば、あらゆるものを自律運転化することができる」と強調した。
Brain Corporation Co-Founder & CEO Dr. Eugene M. Izhikevich (ユージーン・イジケビッチ)氏
その上で「日本には清掃業界などで、信頼性の高い多くの機器が使われている。それらの製品の中に自律運転技術を追加したいと考えている企業があれば、ソフトバンクロボティクスを通じて私達に相談して欲しい」と呼びかけた。最後に質疑応答で、吉田氏は自律清掃ロボットに今後追加したいと検討している機能をあげた。まずはモップがけの機能。Whizはバキューム機能の掃除ロボットだが、先端にモップのようなオプションを装着することで拭き掃除の機能も追加できるのではないか、とした。また、エレべータと連動して、階を超えた自律清掃を実現することも今後の視野に入れていることも明らかにした。
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