最近の人民元と今後の展開(2019年2月号)-米中合意で当面はボックス圏、その後は?
最近の人民元と今後の展開(2019年2月号)-米中合意で当面はボックス圏、その後は?:
なお、日本円に対する人民元レートは、対米ドルの日本円の上昇率が人民元よりも小幅だったため、100日本円=6.1722元(1元=16.20円)と前月末比0.9%の元高・円安で終えた(図表-2)。さて、19年3月末に向けては、米中ともに短期金利の操作はしづらく、対米ドル人民元レートは横ばい圏での推移と予想している(想定レンジは1米ドル=6.5~6.9元、1元=15.5~16.5円)。但し、米中貿易協議が一旦手打ちとなった後も貿易不均衡の是正が進まなければ、購買力平価(PPP)基準で見た人民元の割安感に焦点が当たって、元高に振れる可能性がある。米中経済を概観すると、米国では株価が乱高下するなど先行き不安が高まったことを背景に、FRBのパウエル議長は利上げ停止を示唆した。他方、中国では景気減速が鮮明となってきたものの、債務圧縮(デレバレッジ)の方針も堅持しているため、利下げに踏み切る可能性は今のところ低い。したがって、米中の短期金利はほぼ同水準で推移する可能性が高く、対米ドル人民元レートは横ばい圏での推移を予想している(図表-3)。
一方、米中両国は18年12月の首脳会談で、米国が19年1月1日に発動する予定だった追加関税(2000億ドル相当の製品に対する関税を10%から25%に引き上げる)を3月1日まで猶予した上で、中国が米国からの輸入を拡大して貿易不均衡是正を図るとともに、中国の構造的問題(技術移転の強要、知的財産権の保護、非関税障壁の是正、サイバー攻撃の停止、サービスと農業分野の市場開放)の解決に関する議論を進めることとなった。その後の米中貿易協議(次官級、閣僚級)の状況を見ると、2月には米中首脳会談を開催されて、一旦の手打ちとなる可能性が高いだろう。しかし、米中貿易不均衡の是正という点では力不足だ。貿易不均衡が生じた背景には、前述の構造的問題に加えて、“米国の過剰消費”と“中国の過剰生産”という根本的な問題がある1。そして、その背後には購買力平価(PPP)基準で見た人民元の割安感がある。新興国の通貨は一般に、金利水準は高いものの国際的信用が低いため割安に放置されるが、世界第2位の経済大国で大幅貿易黒字の中国もその例外ではない。現下のこうした環境は、1985年のプラザ合意前に、米国の貿易赤字が拡大していたにも拘らず、高金利を背景に米ドル高が進んだ局面を想起させる(図表-4)。米中貿易不均衡を定点チェックしていく過程では、購買力平価(PPP)基準で見た人民元の割安感に焦点が当たり、「現代版プラザ合意」のようなことが起きて、人民元が上昇するという流れになる可能性があると見ている。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。【関連レポート】
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- 1月の人民元レート(対米ドル、基準値、中国外貨取引センター)は前月末比2.4%上昇し1米ドル=6.7025元で終えた。米長期金利が18年11月の3.2%台をピークに低下に転じたため、人民元は3ヵ月連続の上昇となった。なお、日本円に対する人民元レートは、対米ドルの日本円の上昇率が人民元よりも小幅だったため、前月末比0.9%の元高・円安で終えた。
- 19年3月末に向けては、米中ともに短期金利の操作はしづらく、対米ドル人民元レートは横ばい圏での推移と予想している(想定レンジは1米ドル=6.5~6.9元、1元=15.5~16.5円)。但し、米中貿易協議が一旦手打ちとなった後も貿易不均衡の是正が進まなければ、購買力平価(PPP)基準で見た人民元の割安感に焦点が当たって、元高に振れる可能性がある。
なお、日本円に対する人民元レートは、対米ドルの日本円の上昇率が人民元よりも小幅だったため、100日本円=6.1722元(1元=16.20円)と前月末比0.9%の元高・円安で終えた(図表-2)。さて、19年3月末に向けては、米中ともに短期金利の操作はしづらく、対米ドル人民元レートは横ばい圏での推移と予想している(想定レンジは1米ドル=6.5~6.9元、1元=15.5~16.5円)。但し、米中貿易協議が一旦手打ちとなった後も貿易不均衡の是正が進まなければ、購買力平価(PPP)基準で見た人民元の割安感に焦点が当たって、元高に振れる可能性がある。米中経済を概観すると、米国では株価が乱高下するなど先行き不安が高まったことを背景に、FRBのパウエル議長は利上げ停止を示唆した。他方、中国では景気減速が鮮明となってきたものの、債務圧縮(デレバレッジ)の方針も堅持しているため、利下げに踏み切る可能性は今のところ低い。したがって、米中の短期金利はほぼ同水準で推移する可能性が高く、対米ドル人民元レートは横ばい圏での推移を予想している(図表-3)。
一方、米中両国は18年12月の首脳会談で、米国が19年1月1日に発動する予定だった追加関税(2000億ドル相当の製品に対する関税を10%から25%に引き上げる)を3月1日まで猶予した上で、中国が米国からの輸入を拡大して貿易不均衡是正を図るとともに、中国の構造的問題(技術移転の強要、知的財産権の保護、非関税障壁の是正、サイバー攻撃の停止、サービスと農業分野の市場開放)の解決に関する議論を進めることとなった。その後の米中貿易協議(次官級、閣僚級)の状況を見ると、2月には米中首脳会談を開催されて、一旦の手打ちとなる可能性が高いだろう。しかし、米中貿易不均衡の是正という点では力不足だ。貿易不均衡が生じた背景には、前述の構造的問題に加えて、“米国の過剰消費”と“中国の過剰生産”という根本的な問題がある1。そして、その背後には購買力平価(PPP)基準で見た人民元の割安感がある。新興国の通貨は一般に、金利水準は高いものの国際的信用が低いため割安に放置されるが、世界第2位の経済大国で大幅貿易黒字の中国もその例外ではない。現下のこうした環境は、1985年のプラザ合意前に、米国の貿易赤字が拡大していたにも拘らず、高金利を背景に米ドル高が進んだ局面を想起させる(図表-4)。米中貿易不均衡を定点チェックしていく過程では、購買力平価(PPP)基準で見た人民元の割安感に焦点が当たり、「現代版プラザ合意」のようなことが起きて、人民元が上昇するという流れになる可能性があると見ている。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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