鉱工業生産18年9月-自然災害の影響で2四半期ぶりの減産
鉱工業生産18年9月-自然災害の影響で2四半期ぶりの減産: 経済産業省が10月31日に公表した鉱工業指数によると、18年9月の鉱工業生産指数は前月比▲1.1%(8月:同0.2%)と2ヵ月ぶりに低下し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲0.3%、当社予想も同▲0.3%)を下回る結果となった。前月時点の予測調査では、9月は前月比2.7%の上昇となっていたが、7月の西日本豪雨、8月の台風上陸に続き、9月も台風、北海道地震による自然災害で工場の稼動停止が相次いだため、生産計画から大きく下振れた。出荷指数は前月比▲3.0%と2ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比2.3%と4ヵ月ぶりに上昇した。
9月の生産を業種別に見ると、輸送機械(前月比▲2.5%)、はん用・生産用・業務用機械(同▲1.4%)、鉄鋼(同▲3.6%)など主要業種が軒並み大きく落ち込み、速報段階で公表される15業種のうち、11業種が前月比で低下(4業種が上昇)した。
18年7-9月期の生産は前期比▲1.6%(4-6月期は同1.3%)と2四半期ぶりに低下した。業種別には、自然災害による供給制約の影響を強く受けた輸送機械(前期比▲3.8%)、鉄鋼(同▲4.8%)の落ち込みが目立つ。また、在庫の積み上がりが続く中、増産が続いていた電子部品・デバイスが前期比▲1.7%となり、16年4-6月期以来9四半期ぶりの減産となった。財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は18年4-6月期の前期比0.5%の後、7-9月期は同▲1.0%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は18年4-6月期の前期比3.3%の後、7-9月期が同▲1.5%となった。
18年4-6月期のGDP統計の設備投資は前期比3.1%と1-3月期の同0.7%から伸びが急加速した。企業収益の大幅増加に伴う潤沢なキャッシュフローを背景とした設備投資の回復基調は崩れていないと考えられるが、7-9月期は自然災害による供給制約の影響もあり伸びが大きく低下する可能性が高いだろう。消費財出荷指数は18年4-6月期の前期比3.1%の後、7-9月期は同▲3.2%となった。耐久消費財(前期比▲5.6%)、非耐久消費財(同▲0.4%)ともに前期比マイナスとなった。消費財出荷指数の弱さは輸出の落ち込みの影響も含まれているが、個人消費に直結する国内向けも弱い動きになったとみられる。
18年4-6月期のGDP統計の民間消費は前期比0.7%と高めの伸びとなったが、7-9月期は豪雨、台風上陸による外出手控え、生鮮野菜、エネルギー価格の大幅上昇が消費の下押し要因となり、全体としては弱めの動きとなった。18年7-9月期のGDP統計の民間消費は2四半期ぶりの減少となる可能性が高いだろう。在庫循環図を確認すると、18年1-3月期から3四半期続けて「在庫積み上がり局面」に位置しているが、7-9月期は出荷指数が前年比▲0.7%と8四半期ぶりの減少となる一方、在庫指数が4-6月期の前年比2.4%から同5.5%へと伸びを高めたため、「在庫調整局面」に近づく形となった。
7-9月期のIT関連財の出荷・在庫バランス(出荷・前年比-在庫・前年比)は、出荷が前年比▲2.3%と4-6月期の同▲1.4%からマイナス幅が拡大したことに加え、在庫が4-6月期の前年比26.7%から同36.8%へと伸びを大きく高めたため、4-6月期の▲28.1%ポイントから7-9月期には同▲39.1%ポイントへと悪化幅がさらに拡大した。
これまでは、在庫積み上がりがIT関連に限られていたが、7-9月期はその他の財でも積み上がりの動きが見られた。鉱工業全体の在庫調整圧力は徐々に高まっている。製造工業生産予測指数は、18年10月が前月比6.0%、11月が同▲0.8%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(9月)、予測修正率(10月)はそれぞれ▲3.4%、0.7%であった。実現率は自然災害の影響で3ヵ月続けて▲3%を超える大幅マイナスとなった(7月:▲3.5%、8月:▲4.1%)。7-9月期の生産は自然災害の影響で大きく下押しされているため、基調が見極めにくくなっており、過度に悲観する必要はない。ただし、世界貿易量の伸び率鈍化を背景に日本の輸出は実態として減速局面に入っている可能性が高い。現時点では供給制約の影響が緩和される10月は輸出、生産ともに大きくリバウンドすると予想しているが、輸出が下振れれば、本格的な在庫調整局面に入るリスクが一段と高まるだろう。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。【関連レポート】
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9月の生産を業種別に見ると、輸送機械(前月比▲2.5%)、はん用・生産用・業務用機械(同▲1.4%)、鉄鋼(同▲3.6%)など主要業種が軒並み大きく落ち込み、速報段階で公表される15業種のうち、11業種が前月比で低下(4業種が上昇)した。
18年7-9月期の生産は前期比▲1.6%(4-6月期は同1.3%)と2四半期ぶりに低下した。業種別には、自然災害による供給制約の影響を強く受けた輸送機械(前期比▲3.8%)、鉄鋼(同▲4.8%)の落ち込みが目立つ。また、在庫の積み上がりが続く中、増産が続いていた電子部品・デバイスが前期比▲1.7%となり、16年4-6月期以来9四半期ぶりの減産となった。財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は18年4-6月期の前期比0.5%の後、7-9月期は同▲1.0%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は18年4-6月期の前期比3.3%の後、7-9月期が同▲1.5%となった。
18年4-6月期のGDP統計の設備投資は前期比3.1%と1-3月期の同0.7%から伸びが急加速した。企業収益の大幅増加に伴う潤沢なキャッシュフローを背景とした設備投資の回復基調は崩れていないと考えられるが、7-9月期は自然災害による供給制約の影響もあり伸びが大きく低下する可能性が高いだろう。消費財出荷指数は18年4-6月期の前期比3.1%の後、7-9月期は同▲3.2%となった。耐久消費財(前期比▲5.6%)、非耐久消費財(同▲0.4%)ともに前期比マイナスとなった。消費財出荷指数の弱さは輸出の落ち込みの影響も含まれているが、個人消費に直結する国内向けも弱い動きになったとみられる。
18年4-6月期のGDP統計の民間消費は前期比0.7%と高めの伸びとなったが、7-9月期は豪雨、台風上陸による外出手控え、生鮮野菜、エネルギー価格の大幅上昇が消費の下押し要因となり、全体としては弱めの動きとなった。18年7-9月期のGDP統計の民間消費は2四半期ぶりの減少となる可能性が高いだろう。在庫循環図を確認すると、18年1-3月期から3四半期続けて「在庫積み上がり局面」に位置しているが、7-9月期は出荷指数が前年比▲0.7%と8四半期ぶりの減少となる一方、在庫指数が4-6月期の前年比2.4%から同5.5%へと伸びを高めたため、「在庫調整局面」に近づく形となった。
7-9月期のIT関連財の出荷・在庫バランス(出荷・前年比-在庫・前年比)は、出荷が前年比▲2.3%と4-6月期の同▲1.4%からマイナス幅が拡大したことに加え、在庫が4-6月期の前年比26.7%から同36.8%へと伸びを大きく高めたため、4-6月期の▲28.1%ポイントから7-9月期には同▲39.1%ポイントへと悪化幅がさらに拡大した。
これまでは、在庫積み上がりがIT関連に限られていたが、7-9月期はその他の財でも積み上がりの動きが見られた。鉱工業全体の在庫調整圧力は徐々に高まっている。製造工業生産予測指数は、18年10月が前月比6.0%、11月が同▲0.8%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(9月)、予測修正率(10月)はそれぞれ▲3.4%、0.7%であった。実現率は自然災害の影響で3ヵ月続けて▲3%を超える大幅マイナスとなった(7月:▲3.5%、8月:▲4.1%)。7-9月期の生産は自然災害の影響で大きく下押しされているため、基調が見極めにくくなっており、過度に悲観する必要はない。ただし、世界貿易量の伸び率鈍化を背景に日本の輸出は実態として減速局面に入っている可能性が高い。現時点では供給制約の影響が緩和される10月は輸出、生産ともに大きくリバウンドすると予想しているが、輸出が下振れれば、本格的な在庫調整局面に入るリスクが一段と高まるだろう。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
消費者物価(全国18年9月)-コアCPI上昇率は当面1%程度で推移
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