PrudentialがSIFI指定解除され、米国におけるノンバンクSIFIがゼロに-FSOCの公表内容と関係者の反応等-
PrudentialがSIFI指定解除され、米国におけるノンバンクSIFIがゼロに-FSOCの公表内容と関係者の反応等-: ■要旨
米国のFSOC(Financial Stability Oversight Council:金融安定監督評議会)は、10月17日にPrudential Financial Group(以下、Prudential)のSIFI指定を解除すると公表した。
米国におけるSIFI指定を巡る動きについては、これまでも何回かのレポートで報告してきた。ここ1年では、AIGのSIFI指定解除に関しては、保険年金フォーカス「AIGのSIFI指定解除について-FSOCの公表内容と関係者の反応-」(2017.10.11)で、財務省のSIFI指定プロセスの見直しに関する覚書については、保険年金フォーカス「米国財務省がノンバンクSIFIの指定プロセスに関する覚書を公表-ノンバンクSIFI指定プロセスの改善方法を勧告-」(2017.12.4)で、それぞれ報告した。
AIGのSIFI指定解除については、先のレポートで報告した通りであるが、MetLifeのSIFI指定についても、2018年1月18日にMetLifeのSIFI指定解除を求める訴訟がMetLifeの勝利で終了したことから、確定した。これにより、2013年から2014年にかけてSIFIに指定された保険会社3グループの中では、Prudential のみがSIFIに指定されたまま取り残された形になっていた。
今回のFSOCのPrudential のSIFI指定解除の決定により、結果的に3社ともSIFI指定が解除されたことになる。また、これにより、米国において、ノンバンクのSIFI指定会社は存在しなくなった。
今回のレポートでは、このPrudentialのSIFI指定解除に関して、FSOCの公表内容及びこれに対する関係者の反応等を報告する。
■目次
1―はじめに
2―SIFI指定及びその解除を巡るこれまでの動き
1|SIFIとは
2|SIFI指定のプロセス
3|SIFI指定解除を巡るこれまでの動き
3―今回のPrudentialのSIFI指定解除の公表
1|FSOCの公表内容
2|FSOCの説明
3|FSOCのメンバーの意見
4―Prudential及び関係団体は歓迎の意を表明
1|Prudentialの反応
2|ACLI(American Council of Life Insurers:米国生命保険会社協会)の反応
3|NAIC(National Association of Insurance Commissioners
:全米保険監督官協会)の反応
5―まとめ
1|米国におけるノンバンクSIFI指定
2|国際的なG-SIIs指定への影響米国のFSOC(Financial Stability Oversight Council:金融安定監督評議会)は、10月17日にPrudential Financial Group(以下、Prudential)のSIFI指定を解除すると公表1した。
米国におけるSIFI指定を巡る動きについては、これまでも何回かのレポートで報告してきた。ここ1年では、AIGのSIFI指定解除に関しては、保険年金フォーカス「AIGのSIFI指定解除について-FSOCの公表内容と関係者の反応-」(2017.10.11)で、財務省のSIFI指定プロセスの見直しに関する覚書については、保険年金フォーカス「米国財務省がノンバンクSIFIの指定プロセスに関する覚書を公表-ノンバンクSIFI指定プロセスの改善方法を勧告-」(2017.12.4)で、それぞれ報告した。
AIGのSIFI指定解除については、先のレポートで報告した通りであるが、MetLifeのSIFI指定についても、2018年1月18日にMetLifeのSIFI指定解除を求める訴訟がMetLifeの勝利で終了したことから、確定した。これにより、2013年から2014年にかけてSIFIに指定された保険会社3グループの中では、Prudential のみがSIFIに指定されたまま取り残された形になっていた。
今回のFSOCのPrudential のSIFI指定解除の決定により、結果的に3社ともSIFI指定が解除されたことになる。また、これにより、米国において、ノンバンクのSIFI指定会社は存在しなくなった。
今回のレポートでは、このPrudentialのSIFI指定解除に関して、FSOCの公表内容及びこれに対する関係者の反応等を報告する。
2―SIFI指定及びその解除を巡るこれまでの動き
ここでは、これまでのレポートでも述べてきたように、SIFIの概念及び米国におけるSIFI指定及びその解除を巡る動きについて、報告する。
1|SIFIとは
SIFIとは、「Systemically Important Financial Institution」の略で、「システム上重要な金融機関」と呼ばれている。事業や取引規模が大きく、破綻すると金融システムに大きな影響を与える金融機関のことを示している。2008年9月のリーマンショック以降、新たな金融規制対象区分を表す言葉として使用されており、SIFIに指定されると、例えばより厳しい自己資本規制が課せられたりすることになる。
米国においては、SIFIはFSOCによって指定される。ドッド・フランク法により、連結総資産500億ドル以上の銀行持株会社及びシステム上重要なノンバンク(ノンバンクSIFI)は、FRB(連邦準備制度理事会)による厳格な規制監督の対象となる。FSOCによってSIFIに指定されたノンバンクはFRBの監督下に置かれ、SIFIに指定された米国銀行と同様の健全性規制が課されることになる。
FSOCはこれまで、保険グループのノンバンクSIFIとして、2013年7月にAIG、2013年9月にPrudential 、2014年12月にMetLifeを指定してきた2。
FSOCは、ドッド・フランク法の下で創設され、米国金融機関の安定性を確保するための包括的な監視を実施する。連邦金融監督者と州規制監督者、そして大統領によって任命された保険の専門家等で構成されているが、投票権を有するメンバー10名3とOFR(財務省金融調査局)及びFIO(連邦保険局)局長等の投票権を有しないメンバーに分かれ、財務長官が議長を務めている。
これに対して、国際機関であるFSB(Financial Stability Board:金融安定理事会)は、2011年11月から、経営危機に陥った場合に世界の金融システムに大きな混乱をもたらす恐れのある国際的な巨大金融機関をG-SIFIs(Global Systemically Important Financial Institutions:グローバルにシステム上重要な金融機関 )として指定し、より高い健全性を求める政策措置を課すこととしてきている。なお、G-SIFIsについては、2011年と2012年は、G-SIBs(Global Systemically Important Banks:グローバルにシステム上重要な銀行)のみだったが、2013年からは、G-SIIs(Global Systemically Important Insurers:グローバルにシステム上重要な保険会社)も、公表されてきている4。
2 ノンバンクSIFIとしては、これらの3社以外に、GE Capitalが2013年7月に指定されていたが、2015年4月の金融事業からの撤退表明以後の金融資産の売却により、2016年6月に指定解除されている。
3 財務長官に加えて、連邦準備制度理事会(FRB)、通貨監督庁(OCC)、証券取引委員会(SEC)、商品先物取引委員会(CFTC)、連邦預金保険公社(FDIC)、連邦住宅金融庁(FHFA)、全米信用組合管理庁(NCUA)、消費者金融保護局(CFPB)の長と保険の専門性を有する独立メンバー
4 FSBによる最新の公表リストによれば、G-SIBsは30行(2017年)、G-SIIsは9社(2016年)となっている。2|SIFI指定のプロセス
このSIFI指定のプロセスについては、以前の手法について、保険年金フォーカス「AIGのSIFI指定解除について-FSOCの公表内容と関係者の反応-」(2017.10.11)で、そのSIFI指定プロセスの見直しについては、保険年金フォーカス「米国財務省がノンバンクSIFIの指定プロセスに関する覚書を公表-ノンバンクSIFI指定プロセスの改善方法を勧告-」(2017.12.4)で報告しているので、これらのレポートを参照していただきたい。
3|SIFI指定解除を巡るこれまでの動き
AIGのSIFI指定については、2017年9月のFSOCによって解除が決定されているが、この動きについては、保険年金フォーカス「AIGのSIFI指定解除について-FSOCの公表内容と関係者の反応-」(2017.10.11)で報告した。
MetLifeは、FSOCによるSIFI指定に対して、2015年1月に、SIFI指定の撤回を求めてFSOCを提訴し、2016年4月にワシントンDCの連邦地方裁判所が、FSOCのSIFI指定を無効にする判決を出したが、これに対して、オバマ政権下でのFSOCは「我々の決定は合理的である。」と主張して、上訴していた。
MetLifeは、2017年4月に、ワシントンDCの控訴裁判所に、FSOCの控訴を保留することを求めたが、米国政府も、60日間の審理の一時停止を要請し、裁判所もこれを認める等の動きがあり、その後、さらなる審理の延長が行われていた。
結局この裁判は、トランプ政権下の2018年1月18日に、MetLifeとFSOCがMetLifeのノンバンクSIFIとしての指定解除に関する地方裁判所の決定に対するFSOCの控訴を棄却するとの共同申立てを行うことで、最終決着し、MetLifeのSIFI指定が解除された。
3―今回のPrudentialのSIFI指定解除の公表
1|FSOCの公表内容
FSOCは、10月17日に、PrudentialのSIFI指定の解除を満場一致で承認した、と公表1した。
Steven T. Mnuchin財務長官は、「評議会の決定は、同社(Prudential)の広範な関与と、同社が金融の安定性を脅かす可能性のある重大なリスクはないことを示す詳細な分析に基づいている。」とし、「評議会は、正当な理由のない指定を取り除くために断固として行動し続けている。」と述べた。
2018年10月17日
金融安定監督評議会は、ノンバンク金融会社の指定を解除すると発表
ワシントン -金融安定監督評議会(評議会)は本日、Prudential Financial Inc. (Prudential)での重大な財務的苦境が米国の金融安定性に脅威を与える可能性があり、Prudentialは連邦準備制度理事会の監督と強化された健全性基準に従わなければならない、との決定を撤回した、と発表した。
Steven T. Mnuchin財務長官は、「評議会の決定は、同社の広範な関与と、同社が金融の安定性を脅かす可能性のある重大なリスクはないことを示す詳細な分析に基づいている。」「評議会は、正当な理由のない指定を取り除くために断固として行動し続けている。」と述べた。
ドッド・フランクのウォールストリート改革及び消費者保護法の第113条(d)は、評議会に対し、少なくとも年に1回はノンバンク金融会社の判断を再評価するように求めている。
評議会は、満場一致で、Prudentialの指定の解除を承認した。Jay Clayton証券取引委員会(SEC)委員長は、この件について忌避され、議決権をElad Roisman SECコミッショナーに委任した。
2|FSOCの説明
FSOCは、今回の決定の基礎となる説明資料5を公開している。
これによれば、FSOCは、まずはPrudentialの重大な財務的苦境が米国の金融安定性に脅威を与える可能性の程度について、評議会の結論に重大な影響を及ぼすPrudentialに関する要因を特定した、としている。次に、Prudentialの重大な財務的苦境が、(1)エクスポージャー、(2)資産流動化、(3)重要な機能又はサービス、の3つの伝達経路を通じて、米国の金融安定性に脅威を与える可能性について、評価し、評議会の主要な結論を述べている。
「(1)エクスポージャー伝達経路」に関しては、「Prudentialの総資本市場エクスポージャーは大きく変化していないように見える。」とし、さらに、例えば「Prudentialの重大な財務的苦境により、年金制度スポンサー、退職金制度参加者、年金制度参加者に損害を与える可能性があるが、これらの商品は、同社の重大な財務的苦境が米国の金融安定性に与える可能性のある脅威の重大な一因にはならないようにみえる。」としている。
「(2)資産流動化経路」に関しては、「負債の[•]6は 90日かかるため、Prudentialの資産流動化リスクに大きく寄与していない。」とし、「財務的苦境が生じた場合にPrudentialの流動性ニーズを見積もるには不確実性は高いものの、リテール及び機関投資家や契約者の行動の過去の証拠と比較して、厳しい例を含む以下の分析は、Prudentialの強制資産清算が、主要市場における取引を混乱させたり、又は同様の保有持分を有する他の会社にとって重大な損失又は資金調達上の問題を引き起こすという重大なリスクではないことを示している。」とし、さらに「強制売却による影響分析は、他の大手金融機関と比較して、Prudentialの純資産に対する下方ショックの市場の影響が、大きくはPrudentialのレバレッジ比率の低下及び流動性の高い資産の保有の増加により、2012年から減少したことを示唆している。」としている。
「(3)重要な機能又はサービス伝達経路」に関しては、「主要事業におけるPrudentialの市場シェアは、Prudentialについての評議会の最終決定以来安定している。」とし、「同社は保険及び退職商品の主導的な提供者だが、これらは非常に競争の激しい市場である。Prudentialは、年金リスク移転や安定価値商品においてより大きな市場シェアを有しているが、Prudentialのこれらのサービスの提供は、米国経済や金融システムの機能にとって重要ではない。」としている。
さらには、Prudentialは、「内部組織の変更、キャプティブ再保険会社の創設と解散、閉鎖ブロック事業の再構築、会社の資本及び流動性管理の変更、その内部負債の再編等の、その複雑さと破綻処理の実行可能性に影響を与える可能性のある規制上の枠組みにおける一定の変更及び一定の措置を行ってきた。」と述べた。
加えて、Prudentialのグループ全体の監督当局であるNJDOBI(ニュージャージー州銀行・保険局)は、2012年以降に、「全社的リスクの評価を実施し調整する権限、Prudentialの保険会社子会社のリスクに関するPrudential及び関連会社の検査及びPrudentialがグループの保険会社に対する重大なリスクを認識し軽減することを保証するための措置を講じる権限を含む、いくつかの新しい権限を実施してきた。」としている。
以上の分析等の結果を踏まえて、「評議会は、Prudentialの重大な財務的苦境が米国の金融の安定性を脅かす可能性があり、Prudentialが理事会の監督を受け、強化された健全性基準に従わなければならない、との最終決定を撤回した。」としている。
5https://home.treasury.gov/system/files/261/Prudential-Financial-Inc-Rescission.pdf
6 今回の設営資料においては、機密情報保持の観点から、一部の数値等に該当する箇所において、この記号が使用されている。説明資料のうちの「1.概要」と「2.3.年次再評価の結論のまとめ」の具体的な記載については、以下の通りとなっている。
1.概要
ドッド・フランク法の第113条(d)は、金融安定監督評議会に対して、年に1回以上、Prudentialの重大な財務的苦境が米国の金融の安定性を脅かす可能性があり、Prudentialが連邦準備制度理事会(理事会)の監督と強化された健全性基準に従わなければならない、という決定を再評価することを求めている。評議会は、Prudentialの分析を行う上で、Prudentialが提出する書面による資料、Prudentialとノンバンク金融会社指定委員会(ノンバンク指定委員会)のスタッフとの間の会合、ニュージャージー州銀行・保険局(NJDOBI)、コネチカット州保険局(CID)、アリゾナ州保険局、ボストン連邦準備銀行、理事会、連邦預金保険公社(FDIC)との協議を含む、この文書の中で引用した情報や書類に依存した。この文書の中に記載された理由により、評議会は、Prudentialの重大な財務的苦境が米国の金融の安定性を脅かす可能性があり、Prudentialが理事会の監督を受け、健全性基準の強化を受けるべきとの最終決定を撤回した。
2.3.年次再評価の結論のまとめ
Prudentialは、米国最大の生命保険会社であり、その重大な財務的苦境は、市場参加者、取引相手方、規制当局に課題をもたらす可能性がある。これらの課題は、Prudentialの株式市場との高い相関性を考慮すると特に重要である。Prudentialの苦境は金融市場の低迷と同時に発生する可能性があることを示唆している。Prudentialの事業及び活動の特定の側面は2013年における会社に関する評議会の最終決定から、大きくは変化していない。しかしながら、評議会は、Prudentialの重大な財務的苦境が米国の金融安定性への脅威もたらす可能性の程度について、評議会の結論に重大な影響を及ぼすPrudentialに関する要因を特定している。以下は、Prudentialの重大な財務的苦境が、エクスポージャー、資産流動化、重要な機能又はサービスの伝達経路を通じて、米国の金融安定性に脅威を与える可能性についての評議会の主要な結論である。
エクスポージャー伝達経路に関して:
・Prudentialの総資本市場エクスポージャーは大きく変化していないように見える。Prudentialの長期借入金残高及び連邦住宅ローン銀行(FHLB)からの前払金は減少し、買戻契約及び有価証券貸付業務が増加した。Prudentialのデリバティブ及びデリバティブ負債の想定元本総額は増加している。Prudentialが参照企業であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の想定元本は減少している。
・グローバルにシステム上重要な銀行(G-SIB)及び他の大手銀行持株会社のPrudentialへの合計エクスポージャーは[•]であり、殆どは個人のエクスポージャーである。
・Prudentialの法人保険商品に関連するエクスポージャーは[•]である。Prudentialの重大な財務的苦境により、年金制度スポンサー、退職金制度参加者、年金制度参加者に損害を与える可能性があるが、これらの商品は、同社の重大な財務的苦境が米国の金融安定性に与える可能性のある脅威の重大な一因にはならないようにみえる。
資産流動化経路に関して:
・Prudentialは、保険契約者が要求に応じて現金を引き出すことを認めている[•]の米国一般勘定負債を有している。契約条件の下で、保険契約者による要求に応じて、2012年には現金で[•]に対して返金されえた[•]に比較して、これらの負債の約[•]は現金で[•]に対して直ちに返金されうる。米国の一般勘定負債の残りの[•]は、[•]に対して返金されうるが、しかしこれらの負債の[•]は 90日以内には支払われないため、Prudentialの資産の流動性リスクの大きな一因とはならない。
・Prudentialとのカウンターパーティの資本市場取引-特にPrudentialの短期借入金、買戻契約、有価証券貸付、デリバティブ取引-は、Prudentialの強制資産売却の規模を増加させる可能性がある。 Prudentialはこれらの活動から生じる200億ドルの負債を有している。
・Prudentialは、個別変額年金、退職及びその他の商品において、2012年末の2,530億ドルに対し、2017年末現在で3,070億ドルの分離勘定負債も有している。
・Prudentialの流動性ニーズが高まった場合に清算されるPrudentialの資産に関しては、会社の米国一般勘定投資ポートフォリオは、流動性の高い資産における[•]から[•]への増加を含めて、[•]から[•]に成長した。
・重大な財務的苦境が生じた場合におけるPrudentialの流動性ニーズを見積もるには不確実性は高いものの、リテール及び機関投資家や契約者の行動の過去の証拠と比較して、厳しい例を含む以下の分析は、Prudentialの強制資産清算が、主要市場における取引を混乱させたり、又は同様の保有持分を有する他の会社にとって重大な損失又は資金調達上の問題を引き起こすという重大なリスクではないことを示している。
・強制売却による影響分析は、他の大手金融機関と比較して、Prudentialの純資産に対する下方ショックの市場の影響が、大きくはPrudentialのレバレッジ比率の低下及び流動性の高い資産の保有の増加により、2012年から減少したことを示唆している。2017年12月31日現在、Prudentialは大手金融機関の中で、資産ショックで11位、株式ショックで16位にランクされた。
重要な機能又はサービス伝達経路に関して:
・主要事業におけるPrudentialの市場シェアは、Prudentialについての評議会の最終決定以来、安定している。
・同社は保険及び退職商品の主導的な提供者だが、これらは非常に競争の激しい市場である。Prudentialは、年金リスク移転や安定価値商品においてより、大きな市場シェアを有しているが、Prudentialのこれらのサービスの提供は、米国経済や金融システムの機能にとって重要ではない。
Prudentialの法的構造は、何百もの法人が存在しており、複雑なままである。Prudential及びその子会社は、引き続き相当な金額の業務上及び金融上の相互接続性と相互依存性を有している。これらの複雑さは、会社の破綻処理の実行可能性に障害を与え続けている。Prudentialは、その複雑さと破綻処理の実行可能性に影響を与える可能性のある規制上の枠組みにおける一定の変更及び取られた一定の措置を特定した。これらには、内部組織の変更、キャプティブ再保険会社の創設と解散、閉鎖ブロック事業の再構築、会社の資本及び流動性管理の変更、その内部負債の再編が含まれる。
NJDOBIによるPrudentialの規制における多くの変更が2012年以降に行われた。NJDOBIはニュージャージー州法の下でのPrudentialのグループ全体の監督当局であり、全社的リスクの評価を実施し調整する権限、Prudentialの保険会社子会社のリスクに関するPrudential及び関連会社の検査及びPrudentialがグループの保険会社に対する重大なリスクを認識し軽減することを保証するための措置を講じる権限を含む、いくつかの新しい権限を実施してきている。ニュージャージー州法の変更は、NJDOBIが適切と考えるときに、NJDOBIにグループ全体の監督活動を行う権限を付与している。
ここに記載された理由により、評議会は、Prudentialの重大な財務的苦境が米国の金融の安定性を脅かす可能性があり、Prudentialが理事会の監督を受け、強化された健全性基準に従わなければならない、との最終決定を撤回した。
3|FSOCのメンバーの意見
FSOCは、メンバーの意見を公表7している。
これによると、FHFA(連邦住宅金融庁)のMelvin Watt長官は、以下の見解を公表している。
評議会は、(1)ノンバンク金融会社の重大な財務的苦境は、米国の金融安定性を脅かす可能性がある、又は (2).ノンバンク金融会社の性質、範囲、規模、スケール、集中度、相互接続性又は活動のミックスは、米国の金融安定性を脅かす可能性がある、という2つの法定基準のいずれかが満たされている場合、ノンバンク金融会社に連邦制度理事会の監督と健全性基準を課さなければならない。
ところが、Prudentialの指定を取り消すための評議会の決定が明確に述べているように、「ドッド・フランク法第113条(a)に基づく第1の基準の下で、Prudentialの重大な財務的苦境は米国の金融安定性に脅威となる可能性がある、という最終決定を行った。」結果として、Prudentialが第2の基準を満たしているかどうかの評価は行われてこなかった。
Melvin Watt氏は、Prudentialが第1の基準の下で指定の基準を満たさなくなったため、その基準に基づいて撤廃されるべきであるという理事会の決定に同意する、と述べている。さらに、「私は、Prudentialが第2基準の下で評価された場合にも、Prudentialが指定解除に適格であると考えているので、本日Prudentialの指定を解除することに賛成する。」と述べている。
一方で、「FSOCは、ドッド・フランク法の第113条の規定を公正に遵守するために、会社を指定するか又は指定解除するかを決定する過程において、両方の基準を独立して見なければならない義務を負っている。」という見解を示した。
連邦住宅金融庁長官の見解
ドッド・フランク法第113条に基づき、評議会は、以下を決定した場合には、ノンバンク金融会社が連邦準備制度理事会の監督を受け、強化された健全性基準に従わなければならない、との決定を行わなければならない。
1.ノンバンク金融会社の重大な財務的苦境が、米国の金融安定性を脅かす可能性がある。 又は
2.ノンバンク金融会社の性質、範囲、規模、スケール、集中度、相互接続性又は活動のミックスが、米国の金融安定性を脅かす可能性がある。
評議会は、この2つの法定基準のいずれかが満たされている場合、ノンバンク金融会社に連邦制度理事会の監督と健全性基準を課さなければならない。
Prudentialの指定を取り消すための評議会の決定が明確に述べているように、「ドッド・フランク法第113条(a)に基づく第1の基準の下で、Prudentialの重大な財務的苦境は米国の金融安定性に脅威となる可能性がある、という最終決定を行った。」 結果として、Prudentialが第2の基準を満たしているかどうかの評価は行われてこなかった。
私は、Prudentialが第1の基準の下で指定の基準を満たさなくなったため、その基準に基づいて撤回されるべきであるという評議会の決定に同意する。しかしながら、私は、第2の基準の下で、FSOCによって何らの独立した評価がなされていないことを懸念し続けている。 AIGの反対意見で述べたように、「議会は、明らかに第2の基準を第1の基準と同等の法的根拠とみなすことを意図し、会社がたとえ第1の基準に定められているテストに合格し、財務的苦境を経験していなかったとしても、『失敗するには大きすぎる』可能性があると理解していた。」
私は、Prudentialが第2の基準の下で評価された場合にも、Prudentialが指定解除に適格であると考えているので、本日Prudentialの指定を解除することに賛成する。しかし、私は、私が以前に述べた、FSOCは、ドッド・フランク法の第113条の規定を公正に遵守するために、会社を指定するか又は指定解除するかを決定する過程において、両方の基準を独立して見なければならない義務を負っている、という見解を書面で再度述べることが重要であると信じている。
2018年10月16日
謹んで提出します。
なお、Melvin Watt氏は、この見解の中でも述べられているように、2017年6月のAIGのSIFI指定解除決定のFSOCにおいては、今回の見解で述べられているのと同様の意見を述べて、指定解除に反対していた。今回のFSOCにおけるPrudentialのSIFI指定解除決定に対しては、保険業界の関係団体から、歓迎の意が表明されている。
1|Prudentialの反応
Prudentialは、今回のFSOCのSIFI指定解除を歓迎する旨の声明を公表8している。
「Prudentialが指定の基準を決して満たしてこなかったという私たちの長年の信念を裏付けるこの決定に満足している。」とし、さらに「FSOCのプロセス及び金融安定性に対する潜在的なリスクに対処するためのその他の措置を改善し強化するために、規制当局と引き続き協力する。」と述べた。
加えて、「我々のクライアント、顧客及びその他の利害関係者に利益をもたらす、より良い、情報に基づいた公共政策の成果を確実にしていくために、グループ全体の監督当局としての拡大された規制上の役割において、ニュージャージー州銀行・保険局と引き続き協働していく。」と述べた。
2018年10月17日
Prudential Financialは、金融安定監督評議会がSIFIラベルを削除した後に声明を出す
ニューアーク ニュージャージー州-(BUSINESS WIRE)-Prudential Financial Inc.(NYSE:PRU)は、金融安定監督評議会(FSOC)が、Prudentialのノンバンクのシステム上重要な金融機関としての指定を撤回することを投票した、と本日発表したことを受けて、以下の会社の声明を発する、
「Prudentialが指定の基準を決して満たしてこなかったという私たちの長年の信念を裏付けるこの決定に満足している。この結果は、Prudentialの持続可能なビジネスモデル、資本力、包括的なリスク管理を反映しており、これらが、顧客に対する約束を果たし、一貫した業績を達成し、規制義務を果たしていくことを可能にする。」
「Prudentialのアプローチ(FSOCの厳格な審査プロセスを通じて)は、Prudentialがシステミックなリスクを負わないという評議会の適切な結論をもたらした。我々は、FSOCのプロセス及び金融安定性に対する潜在的なリスクに対処するためのその他の措置を改善し強化するために、規制当局と引き続き協力する。当社はまた、我々のクライアント、顧客及びその他の利害関係者に利益をもたらす、より良い、情報に基づいた公共政策の成果を確実にしていくために、グループ全体の監督当局としての拡大された規制上の役割において、ニュージャージー州銀行・保険局と引き続き協働していく。」
2|ACLI(American Council of Life Insurers:米国生命保険会社協会)の反応
ACLIも、今回のFSOCのSIFI指定解除に関して、以下の声明を公表9している。
これによれば、ACLIは、「Prudential Financialの不適切な指定は、保険ビジネスモデルの理解が不十分であり、州保険監督者の生命保険業界に対する効果的な監視を無視した欠陥のあるプロセスの結果であった。」とし、「生命保険会社は、システミックリスクではなく、経済における金融安定の源泉である。彼らの永続的な約束と長期的な投資哲学は、ストレスの時代に経済のためのショックアブソーバを提供する。」と述べた。
さらに、「ACLIは、FSOCの前進する努力が、米国の金融安定性に対するマクロプルーデンシャルリスクの評価と、それらに対処するために主要金融規制当局と協働することに焦点を当てることを推奨している。FSOCは、プロセスを改革し、最初のアプローチから離れることで、国家経済と米国消費者を保護する重要な役割を果たすことができる。」とFSOCの役割についての意見も述べた。
2018年10月17日
ACLIはFSOCの生命保険会社の指定解除を賞賛する
米国生命保険協会(ACLI)のSusan Neely会長兼最高経営責任者(CEO)は、金融安定監督評議会(FSOC)がPrudential Financialの「ノンバンクのシステム上重要な金融機関」としての指定の取消しを発表した後、本日以下の声明を発した。
ワシントンDC(2018年10月17日)-「金融安定監督評議会(FSOC)の行動を強く支持している。Prudential Financialの不適切な指定は、保険ビジネスモデルの理解が不十分であり、州保険監督者の生命保険業界に対する効果的な監視を無視した欠陥のあるプロセスの結果であった。」
「生命保険会社は、システミックリスクではなく、経済における金融安定の源泉である。彼らの永続的な約束と長期的な投資哲学は、ストレスの時代に経済のためのショックアブソーバを提供する。」
「ACLIは、FSOCの前進する努力が、米国の金融安定性に対するマクロプルーデンシャルリスクの評価と、それらに対処するために主要金融規制当局と協働することに焦点を当てることを推奨している。FSOCは、プロセスを改革し、最初のアプローチから離れることで、国家経済と米国消費者を保護する重要な役割を果たすことができる。」
3|NAIC(National Association of Insurance Commissioners:全米保険監督官協会)の反応
NAICは、今回のFSOCのSIFI指定解除に関して、以下の声明を公表10している。
「NAICは、Prudentialに適用されたSIFI指定プロセスに欠陥があると一貫して主張してきた。」とし、NAIC会長兼テネシー州の商業・保険コミッショナーのJulie Mix McPeak氏は、「Prudentialの指定を取り消すという評議会の決定に拍手を送る。この行動は、州の保険規制制度の強化とグループ監督ツールの強化を反映している。」と述べた。「また、これらのツールを実施し、それらをPrudentialの規制に適用することは、Prudentialのグループ全体の監督当局であるニュージャージー州銀行・保険局の業務であると認識している。」とした。
NAIC次期会長兼メイン州の保険監督官のEric A. Cioppa氏は、「指定解除を正当化する理由は、保険のビジネスモデルとその規制に沿った改訂された分析アプローチを反映している。」と述べた。
NAICはPrudentialのSIFIとしての指定解除を賞賛する
ワシントン(2018年10月17日) - 金融安定監督評議会(FSOC)は、本日、Prudential Insurance Company of America のシステム上重要な金融機関(SIFI)としての指定を取りやめた。全米保険監督官協会(NAIC)は、Prudentialに適用されたSIFI指定プロセスに欠陥があると一貫して主張してきた。
「Prudentialの指定を取り消すという評議会の決定に拍手を送る。この行動は、州の保険規制制度の強化とグループ監督ツールの強化を反映している。」と、NAIC会長兼テネシー州の商業・保険コミッショナーのJulie Mix McPeak氏は述べた。「また、これらのツールを実施し、それらをPrudentialの規制に適用することは、Prudentialのグループ全体の監督当局であるニュージャージー州銀行・保険局の業務であると認識している。」
2010年にドッド・フランクのウォールストリート改革及び消費者保護法が成立して設立されたFSOCは、米国の金融システムに対するシステミックリスクを特定し対応するために設立された。様々な業界の監督者を集めて視点を共有し、セクター間の脅威を特定し対処することを目的としている。しかし、FSOCに対する州の保険コミッショナーの代表は、議決権のあるメンバーではない。
NAICの次期会長兼メイン州の保険監督官のEric A. Cioppa氏は、「指定解除を正当化する理由は、保険のビジネスモデルとその規制に沿った改訂された分析アプローチを反映している。」と述べた。「私の前任者は、保険がどのように規制されているかについて、評議会に教育を行い、保険部門が潜在的なリスクに対処すると主張する優れた職務を果たした。私は、州の保険監督当局を代表し続け、評議会の同僚と一緒に働くことを楽しみにしている。」
9月に、州の保険監督当局は、Cioppa氏をFSOCの州の保険コミッショナーの代表として2年間任命した。Cioppa氏は、評議会において州の保険監督当局の利害を代表する。
5―まとめ
以上、ここまで、PrudentialのSIFI指定解除に関するFSOCの公表内容及びこれに対する関係者の反応を報告してきた。
1|米国におけるノンバンクSIFI指定
「2―SIFI指定及びその解除を巡るこれまでの動き」で述べたように、これまでにノンバンクでは、AIG、Prudential、MetLifeの保険会社3社と、GE Capitalの合計4社がSIFIに指定されてきたが、今回PrudentialがSIFI指定から解除されたことにより、これで4社ともSIFI指定が解除されたことになり、結果として米国においては、ノンバンクSIFIは存在しなくなった。
これらのノンバンクのSIFI指定に関しては、PrudentialやMetLifeが、指定プロセスが不透明で整合的でなく、政治的であったと主張してきていた。こうした意見も踏まえて、トランプ政権下では、SIFIの指定基準やその指定プロセスの見直しが検討されてきている。これによれば、特定の会社が提示するリスクを優先させるのではなくて、特定の事業活動がもたらすリスクや業界全体がどのようにリスクをもたらすのかという観点からのアプローチに焦点を当てるようになる。特定の会社をSIFIに指定するためには、当該会社の有するリスクについて、より高い信頼性や確実性を持って、FSOCが説明していくことが求められてくることになる。
その意味では、今回のPrudentialのSIFI指定解除が示しているように、今後のノンバンクのSIFI指定については、少なくとも保険会社を念頭に置いた場合には想定しがたいものとなってくるが、さらにはそれ以外のノンバンクの金融会社についても、そのハードルがかなり高くなっているといえるだろう。
2|国際的なG-SIIs指定への影響
今回のPrudentialのSIFI指定解除を受けて、米国においてSIFI指定されている保険会社は存在しなくなったが、一方で、AIG、MetLife及びPrudentialの3つの保険会社は全て、金融安定理事会(FSB)が指定するG-SIIs(Global Systemically Important Insurers:グローバルにシステム上重要な保険会社)のリストにとどまっている。
より正確には、FSBは2017年11月21日に、毎年11月に更新していたG-SIIsのリストを公表しないことを決定したが、2016年にG-SIIsに選定された9社については、それまでと同様の政策措置が適用されることになっている。
G-SIIsの指定基準については、現在IAIS(保険監督者国際機構)において、活動ベースのアプローチに基づくシステミックリスクの評価が検討されており、今年の11月には、その時点でのIAISによる活動ベースの開発に関する進展に基づき、状況がレビューされる予定になっている。
これに関連して、昨年のAIGのSIFI指定解除の決定時に、NAIC現会長(当時は次期会長)のJulie Mix McPeak氏は、「FSOCの下での徹底した国内評価の結果、米国のグループがシステミックとはみなされない場合、なぜ国際的な目的でシステミックに残るのかを調整することは難しい。」と述べていた。
もちろん、米国におけるSIFIとFSBによるG-SIIsの指定の考え方等は同一のものをベースにしているわけではないことから、こうした考え方が必ずしも妥当だというわけではない。ただし、こうした意見も踏まえて、IAISによるG-SIIsの指定の検討がどのような形で行われていくことになるのか、さらにはこれを踏まえてFSBがG-SIIsの指定等に関してどのような判断を行っていくことになるのか、は極めて注目されていくことになる。
現在、日本の保険会社において、FSBによりG-SIIsに指定されている会社はなく、また米国と同様の形で、金融庁によってSIFIに指定されている会社もない。ただし、日本の大手保険グループも積極的に海外展開を進めて規模の拡大を図ってきていることや、SIFIやG-SIIsの指定やその規制等が、その他の保険会社の規制等に与える影響も考えられる。
従って、関係者の関心も高いことから、米国におけるSIFIやG-SIIsを巡る動向については、引き続き注視していくこととしたい。
【関連レポート】
AIGのSIFI指定解除について-FSOCの公表内容と関係者の反応-
米国財務省がノンバンクSIFIの指定プロセスに関する覚書を公表-ノンバンクSIFI指定プロセスの改善方法を勧告-
トランプ政権による保険会社規制への影響について-国内・国外(EU、IAIS)問題への対応-
米国のFSOC(Financial Stability Oversight Council:金融安定監督評議会)は、10月17日にPrudential Financial Group(以下、Prudential)のSIFI指定を解除すると公表した。
米国におけるSIFI指定を巡る動きについては、これまでも何回かのレポートで報告してきた。ここ1年では、AIGのSIFI指定解除に関しては、保険年金フォーカス「AIGのSIFI指定解除について-FSOCの公表内容と関係者の反応-」(2017.10.11)で、財務省のSIFI指定プロセスの見直しに関する覚書については、保険年金フォーカス「米国財務省がノンバンクSIFIの指定プロセスに関する覚書を公表-ノンバンクSIFI指定プロセスの改善方法を勧告-」(2017.12.4)で、それぞれ報告した。
AIGのSIFI指定解除については、先のレポートで報告した通りであるが、MetLifeのSIFI指定についても、2018年1月18日にMetLifeのSIFI指定解除を求める訴訟がMetLifeの勝利で終了したことから、確定した。これにより、2013年から2014年にかけてSIFIに指定された保険会社3グループの中では、Prudential のみがSIFIに指定されたまま取り残された形になっていた。
今回のFSOCのPrudential のSIFI指定解除の決定により、結果的に3社ともSIFI指定が解除されたことになる。また、これにより、米国において、ノンバンクのSIFI指定会社は存在しなくなった。
今回のレポートでは、このPrudentialのSIFI指定解除に関して、FSOCの公表内容及びこれに対する関係者の反応等を報告する。
■目次
1―はじめに
2―SIFI指定及びその解除を巡るこれまでの動き
1|SIFIとは
2|SIFI指定のプロセス
3|SIFI指定解除を巡るこれまでの動き
3―今回のPrudentialのSIFI指定解除の公表
1|FSOCの公表内容
2|FSOCの説明
3|FSOCのメンバーの意見
4―Prudential及び関係団体は歓迎の意を表明
1|Prudentialの反応
2|ACLI(American Council of Life Insurers:米国生命保険会社協会)の反応
3|NAIC(National Association of Insurance Commissioners
:全米保険監督官協会)の反応
5―まとめ
1|米国におけるノンバンクSIFI指定
2|国際的なG-SIIs指定への影響米国のFSOC(Financial Stability Oversight Council:金融安定監督評議会)は、10月17日にPrudential Financial Group(以下、Prudential)のSIFI指定を解除すると公表1した。
米国におけるSIFI指定を巡る動きについては、これまでも何回かのレポートで報告してきた。ここ1年では、AIGのSIFI指定解除に関しては、保険年金フォーカス「AIGのSIFI指定解除について-FSOCの公表内容と関係者の反応-」(2017.10.11)で、財務省のSIFI指定プロセスの見直しに関する覚書については、保険年金フォーカス「米国財務省がノンバンクSIFIの指定プロセスに関する覚書を公表-ノンバンクSIFI指定プロセスの改善方法を勧告-」(2017.12.4)で、それぞれ報告した。
AIGのSIFI指定解除については、先のレポートで報告した通りであるが、MetLifeのSIFI指定についても、2018年1月18日にMetLifeのSIFI指定解除を求める訴訟がMetLifeの勝利で終了したことから、確定した。これにより、2013年から2014年にかけてSIFIに指定された保険会社3グループの中では、Prudential のみがSIFIに指定されたまま取り残された形になっていた。
今回のFSOCのPrudential のSIFI指定解除の決定により、結果的に3社ともSIFI指定が解除されたことになる。また、これにより、米国において、ノンバンクのSIFI指定会社は存在しなくなった。
今回のレポートでは、このPrudentialのSIFI指定解除に関して、FSOCの公表内容及びこれに対する関係者の反応等を報告する。
2―SIFI指定及びその解除を巡るこれまでの動き
ここでは、これまでのレポートでも述べてきたように、SIFIの概念及び米国におけるSIFI指定及びその解除を巡る動きについて、報告する。
1|SIFIとは
SIFIとは、「Systemically Important Financial Institution」の略で、「システム上重要な金融機関」と呼ばれている。事業や取引規模が大きく、破綻すると金融システムに大きな影響を与える金融機関のことを示している。2008年9月のリーマンショック以降、新たな金融規制対象区分を表す言葉として使用されており、SIFIに指定されると、例えばより厳しい自己資本規制が課せられたりすることになる。
米国においては、SIFIはFSOCによって指定される。ドッド・フランク法により、連結総資産500億ドル以上の銀行持株会社及びシステム上重要なノンバンク(ノンバンクSIFI)は、FRB(連邦準備制度理事会)による厳格な規制監督の対象となる。FSOCによってSIFIに指定されたノンバンクはFRBの監督下に置かれ、SIFIに指定された米国銀行と同様の健全性規制が課されることになる。
FSOCはこれまで、保険グループのノンバンクSIFIとして、2013年7月にAIG、2013年9月にPrudential 、2014年12月にMetLifeを指定してきた2。
FSOCは、ドッド・フランク法の下で創設され、米国金融機関の安定性を確保するための包括的な監視を実施する。連邦金融監督者と州規制監督者、そして大統領によって任命された保険の専門家等で構成されているが、投票権を有するメンバー10名3とOFR(財務省金融調査局)及びFIO(連邦保険局)局長等の投票権を有しないメンバーに分かれ、財務長官が議長を務めている。
これに対して、国際機関であるFSB(Financial Stability Board:金融安定理事会)は、2011年11月から、経営危機に陥った場合に世界の金融システムに大きな混乱をもたらす恐れのある国際的な巨大金融機関をG-SIFIs(Global Systemically Important Financial Institutions:グローバルにシステム上重要な金融機関 )として指定し、より高い健全性を求める政策措置を課すこととしてきている。なお、G-SIFIsについては、2011年と2012年は、G-SIBs(Global Systemically Important Banks:グローバルにシステム上重要な銀行)のみだったが、2013年からは、G-SIIs(Global Systemically Important Insurers:グローバルにシステム上重要な保険会社)も、公表されてきている4。
2 ノンバンクSIFIとしては、これらの3社以外に、GE Capitalが2013年7月に指定されていたが、2015年4月の金融事業からの撤退表明以後の金融資産の売却により、2016年6月に指定解除されている。
3 財務長官に加えて、連邦準備制度理事会(FRB)、通貨監督庁(OCC)、証券取引委員会(SEC)、商品先物取引委員会(CFTC)、連邦預金保険公社(FDIC)、連邦住宅金融庁(FHFA)、全米信用組合管理庁(NCUA)、消費者金融保護局(CFPB)の長と保険の専門性を有する独立メンバー
4 FSBによる最新の公表リストによれば、G-SIBsは30行(2017年)、G-SIIsは9社(2016年)となっている。
このSIFI指定のプロセスについては、以前の手法について、保険年金フォーカス「AIGのSIFI指定解除について-FSOCの公表内容と関係者の反応-」(2017.10.11)で、そのSIFI指定プロセスの見直しについては、保険年金フォーカス「米国財務省がノンバンクSIFIの指定プロセスに関する覚書を公表-ノンバンクSIFI指定プロセスの改善方法を勧告-」(2017.12.4)で報告しているので、これらのレポートを参照していただきたい。
3|SIFI指定解除を巡るこれまでの動き
AIGのSIFI指定については、2017年9月のFSOCによって解除が決定されているが、この動きについては、保険年金フォーカス「AIGのSIFI指定解除について-FSOCの公表内容と関係者の反応-」(2017.10.11)で報告した。
MetLifeは、FSOCによるSIFI指定に対して、2015年1月に、SIFI指定の撤回を求めてFSOCを提訴し、2016年4月にワシントンDCの連邦地方裁判所が、FSOCのSIFI指定を無効にする判決を出したが、これに対して、オバマ政権下でのFSOCは「我々の決定は合理的である。」と主張して、上訴していた。
MetLifeは、2017年4月に、ワシントンDCの控訴裁判所に、FSOCの控訴を保留することを求めたが、米国政府も、60日間の審理の一時停止を要請し、裁判所もこれを認める等の動きがあり、その後、さらなる審理の延長が行われていた。
結局この裁判は、トランプ政権下の2018年1月18日に、MetLifeとFSOCがMetLifeのノンバンクSIFIとしての指定解除に関する地方裁判所の決定に対するFSOCの控訴を棄却するとの共同申立てを行うことで、最終決着し、MetLifeのSIFI指定が解除された。
3―今回のPrudentialのSIFI指定解除の公表
1|FSOCの公表内容
FSOCは、10月17日に、PrudentialのSIFI指定の解除を満場一致で承認した、と公表1した。
Steven T. Mnuchin財務長官は、「評議会の決定は、同社(Prudential)の広範な関与と、同社が金融の安定性を脅かす可能性のある重大なリスクはないことを示す詳細な分析に基づいている。」とし、「評議会は、正当な理由のない指定を取り除くために断固として行動し続けている。」と述べた。
2018年10月17日
金融安定監督評議会は、ノンバンク金融会社の指定を解除すると発表
ワシントン -金融安定監督評議会(評議会)は本日、Prudential Financial Inc. (Prudential)での重大な財務的苦境が米国の金融安定性に脅威を与える可能性があり、Prudentialは連邦準備制度理事会の監督と強化された健全性基準に従わなければならない、との決定を撤回した、と発表した。
Steven T. Mnuchin財務長官は、「評議会の決定は、同社の広範な関与と、同社が金融の安定性を脅かす可能性のある重大なリスクはないことを示す詳細な分析に基づいている。」「評議会は、正当な理由のない指定を取り除くために断固として行動し続けている。」と述べた。
ドッド・フランクのウォールストリート改革及び消費者保護法の第113条(d)は、評議会に対し、少なくとも年に1回はノンバンク金融会社の判断を再評価するように求めている。
評議会は、満場一致で、Prudentialの指定の解除を承認した。Jay Clayton証券取引委員会(SEC)委員長は、この件について忌避され、議決権をElad Roisman SECコミッショナーに委任した。
2|FSOCの説明
FSOCは、今回の決定の基礎となる説明資料5を公開している。
これによれば、FSOCは、まずはPrudentialの重大な財務的苦境が米国の金融安定性に脅威を与える可能性の程度について、評議会の結論に重大な影響を及ぼすPrudentialに関する要因を特定した、としている。次に、Prudentialの重大な財務的苦境が、(1)エクスポージャー、(2)資産流動化、(3)重要な機能又はサービス、の3つの伝達経路を通じて、米国の金融安定性に脅威を与える可能性について、評価し、評議会の主要な結論を述べている。
「(1)エクスポージャー伝達経路」に関しては、「Prudentialの総資本市場エクスポージャーは大きく変化していないように見える。」とし、さらに、例えば「Prudentialの重大な財務的苦境により、年金制度スポンサー、退職金制度参加者、年金制度参加者に損害を与える可能性があるが、これらの商品は、同社の重大な財務的苦境が米国の金融安定性に与える可能性のある脅威の重大な一因にはならないようにみえる。」としている。
「(2)資産流動化経路」に関しては、「負債の[•]6は 90日かかるため、Prudentialの資産流動化リスクに大きく寄与していない。」とし、「財務的苦境が生じた場合にPrudentialの流動性ニーズを見積もるには不確実性は高いものの、リテール及び機関投資家や契約者の行動の過去の証拠と比較して、厳しい例を含む以下の分析は、Prudentialの強制資産清算が、主要市場における取引を混乱させたり、又は同様の保有持分を有する他の会社にとって重大な損失又は資金調達上の問題を引き起こすという重大なリスクではないことを示している。」とし、さらに「強制売却による影響分析は、他の大手金融機関と比較して、Prudentialの純資産に対する下方ショックの市場の影響が、大きくはPrudentialのレバレッジ比率の低下及び流動性の高い資産の保有の増加により、2012年から減少したことを示唆している。」としている。
「(3)重要な機能又はサービス伝達経路」に関しては、「主要事業におけるPrudentialの市場シェアは、Prudentialについての評議会の最終決定以来安定している。」とし、「同社は保険及び退職商品の主導的な提供者だが、これらは非常に競争の激しい市場である。Prudentialは、年金リスク移転や安定価値商品においてより大きな市場シェアを有しているが、Prudentialのこれらのサービスの提供は、米国経済や金融システムの機能にとって重要ではない。」としている。
さらには、Prudentialは、「内部組織の変更、キャプティブ再保険会社の創設と解散、閉鎖ブロック事業の再構築、会社の資本及び流動性管理の変更、その内部負債の再編等の、その複雑さと破綻処理の実行可能性に影響を与える可能性のある規制上の枠組みにおける一定の変更及び一定の措置を行ってきた。」と述べた。
加えて、Prudentialのグループ全体の監督当局であるNJDOBI(ニュージャージー州銀行・保険局)は、2012年以降に、「全社的リスクの評価を実施し調整する権限、Prudentialの保険会社子会社のリスクに関するPrudential及び関連会社の検査及びPrudentialがグループの保険会社に対する重大なリスクを認識し軽減することを保証するための措置を講じる権限を含む、いくつかの新しい権限を実施してきた。」としている。
以上の分析等の結果を踏まえて、「評議会は、Prudentialの重大な財務的苦境が米国の金融の安定性を脅かす可能性があり、Prudentialが理事会の監督を受け、強化された健全性基準に従わなければならない、との最終決定を撤回した。」としている。
5https://home.treasury.gov/system/files/261/Prudential-Financial-Inc-Rescission.pdf
6 今回の設営資料においては、機密情報保持の観点から、一部の数値等に該当する箇所において、この記号が使用されている。
1.概要
ドッド・フランク法の第113条(d)は、金融安定監督評議会に対して、年に1回以上、Prudentialの重大な財務的苦境が米国の金融の安定性を脅かす可能性があり、Prudentialが連邦準備制度理事会(理事会)の監督と強化された健全性基準に従わなければならない、という決定を再評価することを求めている。評議会は、Prudentialの分析を行う上で、Prudentialが提出する書面による資料、Prudentialとノンバンク金融会社指定委員会(ノンバンク指定委員会)のスタッフとの間の会合、ニュージャージー州銀行・保険局(NJDOBI)、コネチカット州保険局(CID)、アリゾナ州保険局、ボストン連邦準備銀行、理事会、連邦預金保険公社(FDIC)との協議を含む、この文書の中で引用した情報や書類に依存した。この文書の中に記載された理由により、評議会は、Prudentialの重大な財務的苦境が米国の金融の安定性を脅かす可能性があり、Prudentialが理事会の監督を受け、健全性基準の強化を受けるべきとの最終決定を撤回した。
2.3.年次再評価の結論のまとめ
Prudentialは、米国最大の生命保険会社であり、その重大な財務的苦境は、市場参加者、取引相手方、規制当局に課題をもたらす可能性がある。これらの課題は、Prudentialの株式市場との高い相関性を考慮すると特に重要である。Prudentialの苦境は金融市場の低迷と同時に発生する可能性があることを示唆している。Prudentialの事業及び活動の特定の側面は2013年における会社に関する評議会の最終決定から、大きくは変化していない。しかしながら、評議会は、Prudentialの重大な財務的苦境が米国の金融安定性への脅威もたらす可能性の程度について、評議会の結論に重大な影響を及ぼすPrudentialに関する要因を特定している。以下は、Prudentialの重大な財務的苦境が、エクスポージャー、資産流動化、重要な機能又はサービスの伝達経路を通じて、米国の金融安定性に脅威を与える可能性についての評議会の主要な結論である。
エクスポージャー伝達経路に関して:
・Prudentialの総資本市場エクスポージャーは大きく変化していないように見える。Prudentialの長期借入金残高及び連邦住宅ローン銀行(FHLB)からの前払金は減少し、買戻契約及び有価証券貸付業務が増加した。Prudentialのデリバティブ及びデリバティブ負債の想定元本総額は増加している。Prudentialが参照企業であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の想定元本は減少している。
・グローバルにシステム上重要な銀行(G-SIB)及び他の大手銀行持株会社のPrudentialへの合計エクスポージャーは[•]であり、殆どは個人のエクスポージャーである。
・Prudentialの法人保険商品に関連するエクスポージャーは[•]である。Prudentialの重大な財務的苦境により、年金制度スポンサー、退職金制度参加者、年金制度参加者に損害を与える可能性があるが、これらの商品は、同社の重大な財務的苦境が米国の金融安定性に与える可能性のある脅威の重大な一因にはならないようにみえる。
資産流動化経路に関して:
・Prudentialは、保険契約者が要求に応じて現金を引き出すことを認めている[•]の米国一般勘定負債を有している。契約条件の下で、保険契約者による要求に応じて、2012年には現金で[•]に対して返金されえた[•]に比較して、これらの負債の約[•]は現金で[•]に対して直ちに返金されうる。米国の一般勘定負債の残りの[•]は、[•]に対して返金されうるが、しかしこれらの負債の[•]は 90日以内には支払われないため、Prudentialの資産の流動性リスクの大きな一因とはならない。
・Prudentialとのカウンターパーティの資本市場取引-特にPrudentialの短期借入金、買戻契約、有価証券貸付、デリバティブ取引-は、Prudentialの強制資産売却の規模を増加させる可能性がある。 Prudentialはこれらの活動から生じる200億ドルの負債を有している。
・Prudentialは、個別変額年金、退職及びその他の商品において、2012年末の2,530億ドルに対し、2017年末現在で3,070億ドルの分離勘定負債も有している。
・Prudentialの流動性ニーズが高まった場合に清算されるPrudentialの資産に関しては、会社の米国一般勘定投資ポートフォリオは、流動性の高い資産における[•]から[•]への増加を含めて、[•]から[•]に成長した。
・重大な財務的苦境が生じた場合におけるPrudentialの流動性ニーズを見積もるには不確実性は高いものの、リテール及び機関投資家や契約者の行動の過去の証拠と比較して、厳しい例を含む以下の分析は、Prudentialの強制資産清算が、主要市場における取引を混乱させたり、又は同様の保有持分を有する他の会社にとって重大な損失又は資金調達上の問題を引き起こすという重大なリスクではないことを示している。
・強制売却による影響分析は、他の大手金融機関と比較して、Prudentialの純資産に対する下方ショックの市場の影響が、大きくはPrudentialのレバレッジ比率の低下及び流動性の高い資産の保有の増加により、2012年から減少したことを示唆している。2017年12月31日現在、Prudentialは大手金融機関の中で、資産ショックで11位、株式ショックで16位にランクされた。
重要な機能又はサービス伝達経路に関して:
・主要事業におけるPrudentialの市場シェアは、Prudentialについての評議会の最終決定以来、安定している。
・同社は保険及び退職商品の主導的な提供者だが、これらは非常に競争の激しい市場である。Prudentialは、年金リスク移転や安定価値商品においてより、大きな市場シェアを有しているが、Prudentialのこれらのサービスの提供は、米国経済や金融システムの機能にとって重要ではない。
Prudentialの法的構造は、何百もの法人が存在しており、複雑なままである。Prudential及びその子会社は、引き続き相当な金額の業務上及び金融上の相互接続性と相互依存性を有している。これらの複雑さは、会社の破綻処理の実行可能性に障害を与え続けている。Prudentialは、その複雑さと破綻処理の実行可能性に影響を与える可能性のある規制上の枠組みにおける一定の変更及び取られた一定の措置を特定した。これらには、内部組織の変更、キャプティブ再保険会社の創設と解散、閉鎖ブロック事業の再構築、会社の資本及び流動性管理の変更、その内部負債の再編が含まれる。
NJDOBIによるPrudentialの規制における多くの変更が2012年以降に行われた。NJDOBIはニュージャージー州法の下でのPrudentialのグループ全体の監督当局であり、全社的リスクの評価を実施し調整する権限、Prudentialの保険会社子会社のリスクに関するPrudential及び関連会社の検査及びPrudentialがグループの保険会社に対する重大なリスクを認識し軽減することを保証するための措置を講じる権限を含む、いくつかの新しい権限を実施してきている。ニュージャージー州法の変更は、NJDOBIが適切と考えるときに、NJDOBIにグループ全体の監督活動を行う権限を付与している。
ここに記載された理由により、評議会は、Prudentialの重大な財務的苦境が米国の金融の安定性を脅かす可能性があり、Prudentialが理事会の監督を受け、強化された健全性基準に従わなければならない、との最終決定を撤回した。
3|FSOCのメンバーの意見
FSOCは、メンバーの意見を公表7している。
これによると、FHFA(連邦住宅金融庁)のMelvin Watt長官は、以下の見解を公表している。
評議会は、(1)ノンバンク金融会社の重大な財務的苦境は、米国の金融安定性を脅かす可能性がある、又は (2).ノンバンク金融会社の性質、範囲、規模、スケール、集中度、相互接続性又は活動のミックスは、米国の金融安定性を脅かす可能性がある、という2つの法定基準のいずれかが満たされている場合、ノンバンク金融会社に連邦制度理事会の監督と健全性基準を課さなければならない。
ところが、Prudentialの指定を取り消すための評議会の決定が明確に述べているように、「ドッド・フランク法第113条(a)に基づく第1の基準の下で、Prudentialの重大な財務的苦境は米国の金融安定性に脅威となる可能性がある、という最終決定を行った。」結果として、Prudentialが第2の基準を満たしているかどうかの評価は行われてこなかった。
Melvin Watt氏は、Prudentialが第1の基準の下で指定の基準を満たさなくなったため、その基準に基づいて撤廃されるべきであるという理事会の決定に同意する、と述べている。さらに、「私は、Prudentialが第2基準の下で評価された場合にも、Prudentialが指定解除に適格であると考えているので、本日Prudentialの指定を解除することに賛成する。」と述べている。
一方で、「FSOCは、ドッド・フランク法の第113条の規定を公正に遵守するために、会社を指定するか又は指定解除するかを決定する過程において、両方の基準を独立して見なければならない義務を負っている。」という見解を示した。
連邦住宅金融庁長官の見解
ドッド・フランク法第113条に基づき、評議会は、以下を決定した場合には、ノンバンク金融会社が連邦準備制度理事会の監督を受け、強化された健全性基準に従わなければならない、との決定を行わなければならない。
1.ノンバンク金融会社の重大な財務的苦境が、米国の金融安定性を脅かす可能性がある。 又は
2.ノンバンク金融会社の性質、範囲、規模、スケール、集中度、相互接続性又は活動のミックスが、米国の金融安定性を脅かす可能性がある。
評議会は、この2つの法定基準のいずれかが満たされている場合、ノンバンク金融会社に連邦制度理事会の監督と健全性基準を課さなければならない。
Prudentialの指定を取り消すための評議会の決定が明確に述べているように、「ドッド・フランク法第113条(a)に基づく第1の基準の下で、Prudentialの重大な財務的苦境は米国の金融安定性に脅威となる可能性がある、という最終決定を行った。」 結果として、Prudentialが第2の基準を満たしているかどうかの評価は行われてこなかった。
私は、Prudentialが第1の基準の下で指定の基準を満たさなくなったため、その基準に基づいて撤回されるべきであるという評議会の決定に同意する。しかしながら、私は、第2の基準の下で、FSOCによって何らの独立した評価がなされていないことを懸念し続けている。 AIGの反対意見で述べたように、「議会は、明らかに第2の基準を第1の基準と同等の法的根拠とみなすことを意図し、会社がたとえ第1の基準に定められているテストに合格し、財務的苦境を経験していなかったとしても、『失敗するには大きすぎる』可能性があると理解していた。」
私は、Prudentialが第2の基準の下で評価された場合にも、Prudentialが指定解除に適格であると考えているので、本日Prudentialの指定を解除することに賛成する。しかし、私は、私が以前に述べた、FSOCは、ドッド・フランク法の第113条の規定を公正に遵守するために、会社を指定するか又は指定解除するかを決定する過程において、両方の基準を独立して見なければならない義務を負っている、という見解を書面で再度述べることが重要であると信じている。
2018年10月16日
謹んで提出します。
なお、Melvin Watt氏は、この見解の中でも述べられているように、2017年6月のAIGのSIFI指定解除決定のFSOCにおいては、今回の見解で述べられているのと同様の意見を述べて、指定解除に反対していた。今回のFSOCにおけるPrudentialのSIFI指定解除決定に対しては、保険業界の関係団体から、歓迎の意が表明されている。
1|Prudentialの反応
Prudentialは、今回のFSOCのSIFI指定解除を歓迎する旨の声明を公表8している。
「Prudentialが指定の基準を決して満たしてこなかったという私たちの長年の信念を裏付けるこの決定に満足している。」とし、さらに「FSOCのプロセス及び金融安定性に対する潜在的なリスクに対処するためのその他の措置を改善し強化するために、規制当局と引き続き協力する。」と述べた。
加えて、「我々のクライアント、顧客及びその他の利害関係者に利益をもたらす、より良い、情報に基づいた公共政策の成果を確実にしていくために、グループ全体の監督当局としての拡大された規制上の役割において、ニュージャージー州銀行・保険局と引き続き協働していく。」と述べた。
2018年10月17日
Prudential Financialは、金融安定監督評議会がSIFIラベルを削除した後に声明を出す
ニューアーク ニュージャージー州-(BUSINESS WIRE)-Prudential Financial Inc.(NYSE:PRU)は、金融安定監督評議会(FSOC)が、Prudentialのノンバンクのシステム上重要な金融機関としての指定を撤回することを投票した、と本日発表したことを受けて、以下の会社の声明を発する、
「Prudentialが指定の基準を決して満たしてこなかったという私たちの長年の信念を裏付けるこの決定に満足している。この結果は、Prudentialの持続可能なビジネスモデル、資本力、包括的なリスク管理を反映しており、これらが、顧客に対する約束を果たし、一貫した業績を達成し、規制義務を果たしていくことを可能にする。」
「Prudentialのアプローチ(FSOCの厳格な審査プロセスを通じて)は、Prudentialがシステミックなリスクを負わないという評議会の適切な結論をもたらした。我々は、FSOCのプロセス及び金融安定性に対する潜在的なリスクに対処するためのその他の措置を改善し強化するために、規制当局と引き続き協力する。当社はまた、我々のクライアント、顧客及びその他の利害関係者に利益をもたらす、より良い、情報に基づいた公共政策の成果を確実にしていくために、グループ全体の監督当局としての拡大された規制上の役割において、ニュージャージー州銀行・保険局と引き続き協働していく。」
2|ACLI(American Council of Life Insurers:米国生命保険会社協会)の反応
ACLIも、今回のFSOCのSIFI指定解除に関して、以下の声明を公表9している。
これによれば、ACLIは、「Prudential Financialの不適切な指定は、保険ビジネスモデルの理解が不十分であり、州保険監督者の生命保険業界に対する効果的な監視を無視した欠陥のあるプロセスの結果であった。」とし、「生命保険会社は、システミックリスクではなく、経済における金融安定の源泉である。彼らの永続的な約束と長期的な投資哲学は、ストレスの時代に経済のためのショックアブソーバを提供する。」と述べた。
さらに、「ACLIは、FSOCの前進する努力が、米国の金融安定性に対するマクロプルーデンシャルリスクの評価と、それらに対処するために主要金融規制当局と協働することに焦点を当てることを推奨している。FSOCは、プロセスを改革し、最初のアプローチから離れることで、国家経済と米国消費者を保護する重要な役割を果たすことができる。」とFSOCの役割についての意見も述べた。
2018年10月17日
ACLIはFSOCの生命保険会社の指定解除を賞賛する
米国生命保険協会(ACLI)のSusan Neely会長兼最高経営責任者(CEO)は、金融安定監督評議会(FSOC)がPrudential Financialの「ノンバンクのシステム上重要な金融機関」としての指定の取消しを発表した後、本日以下の声明を発した。
ワシントンDC(2018年10月17日)-「金融安定監督評議会(FSOC)の行動を強く支持している。Prudential Financialの不適切な指定は、保険ビジネスモデルの理解が不十分であり、州保険監督者の生命保険業界に対する効果的な監視を無視した欠陥のあるプロセスの結果であった。」
「生命保険会社は、システミックリスクではなく、経済における金融安定の源泉である。彼らの永続的な約束と長期的な投資哲学は、ストレスの時代に経済のためのショックアブソーバを提供する。」
「ACLIは、FSOCの前進する努力が、米国の金融安定性に対するマクロプルーデンシャルリスクの評価と、それらに対処するために主要金融規制当局と協働することに焦点を当てることを推奨している。FSOCは、プロセスを改革し、最初のアプローチから離れることで、国家経済と米国消費者を保護する重要な役割を果たすことができる。」
3|NAIC(National Association of Insurance Commissioners:全米保険監督官協会)の反応
NAICは、今回のFSOCのSIFI指定解除に関して、以下の声明を公表10している。
「NAICは、Prudentialに適用されたSIFI指定プロセスに欠陥があると一貫して主張してきた。」とし、NAIC会長兼テネシー州の商業・保険コミッショナーのJulie Mix McPeak氏は、「Prudentialの指定を取り消すという評議会の決定に拍手を送る。この行動は、州の保険規制制度の強化とグループ監督ツールの強化を反映している。」と述べた。「また、これらのツールを実施し、それらをPrudentialの規制に適用することは、Prudentialのグループ全体の監督当局であるニュージャージー州銀行・保険局の業務であると認識している。」とした。
NAIC次期会長兼メイン州の保険監督官のEric A. Cioppa氏は、「指定解除を正当化する理由は、保険のビジネスモデルとその規制に沿った改訂された分析アプローチを反映している。」と述べた。
NAICはPrudentialのSIFIとしての指定解除を賞賛する
ワシントン(2018年10月17日) - 金融安定監督評議会(FSOC)は、本日、Prudential Insurance Company of America のシステム上重要な金融機関(SIFI)としての指定を取りやめた。全米保険監督官協会(NAIC)は、Prudentialに適用されたSIFI指定プロセスに欠陥があると一貫して主張してきた。
「Prudentialの指定を取り消すという評議会の決定に拍手を送る。この行動は、州の保険規制制度の強化とグループ監督ツールの強化を反映している。」と、NAIC会長兼テネシー州の商業・保険コミッショナーのJulie Mix McPeak氏は述べた。「また、これらのツールを実施し、それらをPrudentialの規制に適用することは、Prudentialのグループ全体の監督当局であるニュージャージー州銀行・保険局の業務であると認識している。」
2010年にドッド・フランクのウォールストリート改革及び消費者保護法が成立して設立されたFSOCは、米国の金融システムに対するシステミックリスクを特定し対応するために設立された。様々な業界の監督者を集めて視点を共有し、セクター間の脅威を特定し対処することを目的としている。しかし、FSOCに対する州の保険コミッショナーの代表は、議決権のあるメンバーではない。
NAICの次期会長兼メイン州の保険監督官のEric A. Cioppa氏は、「指定解除を正当化する理由は、保険のビジネスモデルとその規制に沿った改訂された分析アプローチを反映している。」と述べた。「私の前任者は、保険がどのように規制されているかについて、評議会に教育を行い、保険部門が潜在的なリスクに対処すると主張する優れた職務を果たした。私は、州の保険監督当局を代表し続け、評議会の同僚と一緒に働くことを楽しみにしている。」
9月に、州の保険監督当局は、Cioppa氏をFSOCの州の保険コミッショナーの代表として2年間任命した。Cioppa氏は、評議会において州の保険監督当局の利害を代表する。
5―まとめ
以上、ここまで、PrudentialのSIFI指定解除に関するFSOCの公表内容及びこれに対する関係者の反応を報告してきた。
1|米国におけるノンバンクSIFI指定
「2―SIFI指定及びその解除を巡るこれまでの動き」で述べたように、これまでにノンバンクでは、AIG、Prudential、MetLifeの保険会社3社と、GE Capitalの合計4社がSIFIに指定されてきたが、今回PrudentialがSIFI指定から解除されたことにより、これで4社ともSIFI指定が解除されたことになり、結果として米国においては、ノンバンクSIFIは存在しなくなった。
これらのノンバンクのSIFI指定に関しては、PrudentialやMetLifeが、指定プロセスが不透明で整合的でなく、政治的であったと主張してきていた。こうした意見も踏まえて、トランプ政権下では、SIFIの指定基準やその指定プロセスの見直しが検討されてきている。これによれば、特定の会社が提示するリスクを優先させるのではなくて、特定の事業活動がもたらすリスクや業界全体がどのようにリスクをもたらすのかという観点からのアプローチに焦点を当てるようになる。特定の会社をSIFIに指定するためには、当該会社の有するリスクについて、より高い信頼性や確実性を持って、FSOCが説明していくことが求められてくることになる。
その意味では、今回のPrudentialのSIFI指定解除が示しているように、今後のノンバンクのSIFI指定については、少なくとも保険会社を念頭に置いた場合には想定しがたいものとなってくるが、さらにはそれ以外のノンバンクの金融会社についても、そのハードルがかなり高くなっているといえるだろう。
2|国際的なG-SIIs指定への影響
今回のPrudentialのSIFI指定解除を受けて、米国においてSIFI指定されている保険会社は存在しなくなったが、一方で、AIG、MetLife及びPrudentialの3つの保険会社は全て、金融安定理事会(FSB)が指定するG-SIIs(Global Systemically Important Insurers:グローバルにシステム上重要な保険会社)のリストにとどまっている。
より正確には、FSBは2017年11月21日に、毎年11月に更新していたG-SIIsのリストを公表しないことを決定したが、2016年にG-SIIsに選定された9社については、それまでと同様の政策措置が適用されることになっている。
G-SIIsの指定基準については、現在IAIS(保険監督者国際機構)において、活動ベースのアプローチに基づくシステミックリスクの評価が検討されており、今年の11月には、その時点でのIAISによる活動ベースの開発に関する進展に基づき、状況がレビューされる予定になっている。
これに関連して、昨年のAIGのSIFI指定解除の決定時に、NAIC現会長(当時は次期会長)のJulie Mix McPeak氏は、「FSOCの下での徹底した国内評価の結果、米国のグループがシステミックとはみなされない場合、なぜ国際的な目的でシステミックに残るのかを調整することは難しい。」と述べていた。
もちろん、米国におけるSIFIとFSBによるG-SIIsの指定の考え方等は同一のものをベースにしているわけではないことから、こうした考え方が必ずしも妥当だというわけではない。ただし、こうした意見も踏まえて、IAISによるG-SIIsの指定の検討がどのような形で行われていくことになるのか、さらにはこれを踏まえてFSBがG-SIIsの指定等に関してどのような判断を行っていくことになるのか、は極めて注目されていくことになる。
現在、日本の保険会社において、FSBによりG-SIIsに指定されている会社はなく、また米国と同様の形で、金融庁によってSIFIに指定されている会社もない。ただし、日本の大手保険グループも積極的に海外展開を進めて規模の拡大を図ってきていることや、SIFIやG-SIIsの指定やその規制等が、その他の保険会社の規制等に与える影響も考えられる。
従って、関係者の関心も高いことから、米国におけるSIFIやG-SIIsを巡る動向については、引き続き注視していくこととしたい。
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