不透明なインターネット広告を「クリア」にする

不透明なインターネット広告を「クリア」にする:

電通デジタルの田中彩華です。データやテクノロジーを駆使した、クライアント向けのソリューション提供や、BIツールの開発をチームで行っています。

さて、インターネット広告は、テレビ広告や新聞広告などに比べて、広告枠の希少性や価値、安全性が分かりにくいという課題があります。

また、広告運用テクノロジーの進化に伴って新たな課題も生まれてきています。海外では、著名ブランドの責任者が「インターネット広告は不透明性が高く、広告価値毀損のリスクもある。この市場環境自体を、広告主・メディア・広告会社が一丸となって改善していかなければならない」と警鐘を鳴らすなど、インターネット広告の抱える課題が活発に議論されるようになってきました。

今回から2回にわたり、不透明な市場環境で、どんな対策をとっていけば広告価値毀損を防げるのか?そして、より良い広告体験を消費者に提供できるのか?を考えていきたいと思います。

インターネット広告が抱える問題をアドベリフィケーション推進協議会が調査

日本のインターネット広告、特に運用型広告は、いくつもの問題を抱えています。

  • ビューアビリティ(ユーザーに広告が認識されているか)
  • アドフラウド(人間以外のBOTによってPVやクリック数を水増しされていないか)
  • ブランドセーフティ(ブランド価値を損なう不適切なコンテンツ上に広告が掲載されていないか)
  • アドエクスペリエンス(ユーザー体験を損ねるような広告を掲載していないか)
そして、これらのリスクに対応する「アドベリフィケーション」(広告価値毀損の検証とそのコントロール)という概念が注目されています。

そんな中、電通グループは2017年、グローバルでアドベリフィケーションツールを提供するインテグラル・アド・サイエンス、Momentumなどのベンダーと共に、インターネット広告市場の正常化に向けて「アドベリフィケーション推進協議会」を立ち上げました。

同協議会では、ある企業が複数の配信手法を使って実施した約1カ月間の自社広告配信キャンペーンを対象に、複数回の共同調査を実施しました(協議会の直近の調査レポートはリンク先を参照ください)。

今回は前述の諸問題のうち、数値による測定・検証が実用化されつつある「ビューアビリティ」「アドフラウド」「ブランドセーフティ」についての調査結果をご紹介します。日本のインターネット広告の価値毀損リスクは、「配信面」と「配信デバイス」ごとに以下のような状況でした。

<2017年日本のアドベリフィケーション調査レポートにおける用語の定義>


SNS①:個別のSNS媒体①を指す。


SNS②:個別のSNS媒体②を指す。


PMP:Private Market Placeの略称。参加できるウェブ媒体とクライアントを限定し、信頼性を高めた広告配信の仕組み。


ADNW:Ad Networkの略称。広告媒体のウェブサイトを多数集めて形成される広告配信ネットワーク。


DSP①:Demand-Side Platformの略称。複数のアドネットワークなどに広告配信を行うプラットフォーム。調査では二つのDSPを①と②として調査したが、DSP②は他とかけ離れた「外れ値」であったためレポートの対象外とした。


●「ビューアビリティ」(Viewability)調査:

広告がユーザーに本当に見られているのか?を測るのがビューアビリティです。国際基準としては、全インプレッションのうち、広告面積の50%以上が1秒以上(動画広告なら2秒以上)表示されたものをビューアブル(ユーザーに認識された)とみなします。

まず、配信面の比較では、参加できるクライアントとメディアを限定することで信頼性を高めたPMP(Private Market Place)配信が76%と、最も高い(≒良い)数値になりました。一方で、比較的コントロールしづらいDSPやSNSでの配信では、インプレッション数のうち実際に閲覧されている割合が低くなっています。

調査内容:ビューアビリティ(配信面の比較)
調査内容:ビューアビリティ(配信面の比較)
次に、配信デバイス別のビューアビリティの比較も見てみましょう。

調査内容:ビューアビリティ(配信デバイスの比較)
調査内容:ビューアビリティ(配信デバイスの比較)
デバイス別では、PCでSP(スマートフォン)よりも全体的に高いビューアビリティが計測されました。通常、ブラウザの表示面積はSPよりもPCの方が広いので、ビューアビリティも高くなっていると考えられます。

●「アドフラウド」(Ad fraud)調査:

広告が“人”ではなく、悪質な業者による“ボット”(=BOT、インターネット上の操作を自動で行うプログラム)によって閲覧やクリックをされてしまう問題はアドフラウド(広告詐欺)と呼ばれます。配信面での比較では、DSP①で特に高いアドフラウド値(12%)が認められました。

クライアントは、広告出稿する際、SNSであれば「Twitter」や「Facebook」といった媒体を指名できますし、PMPであれば参加媒体のリストを参照できます。つまりクライアントは「配信先として信頼できるかどうか」をある程度把握した上で出稿ができます。

しかし膨大なサイトをまとめて配信先として束ねているアドネットワーク(ADNW)やDSPの場合、配信先の多さ故に、SNSやPMPと違って不正なボット設置などをした悪質サイトを回避しきれない可能性が高まります。そのため、アドフラウドが比較的高く検出されたと考えられます。

調査内容:アドフラウド(配信面の比較)
調査内容:アドフラウド(配信面の比較)

●「ブランドセーフティ(リスク率)」(Brand safety)調査:

広告がアダルト系や反社会的活動関連などの、ブランドにとって不適切なサイト・コンテンツ上で表示されてしまう―こうしたリスクに対する取り組みを、ブランドセーフティといいます。今回、ブランドリスクの検出対象としたコンテンツには、ヘイトスピーチ、性的表現、違法ダウンロードサイトなどが含まれます。

調査内容:ブランドリスク率(配信面の比較)
調査内容:ブランドリスク率(配信面の比較)
調査内容:ブランドリスク率(配信デバイスの比較)
調査内容:ブランドリスク率(配信デバイスの比較)
アドネットワーク(ADNW)とDSP①で高いリスク率が計測されました。アドネットワークやDSPは配信先サイトが膨大にあるので、全配信面のブランドリスクチェックを完璧に行うことは物理的にとても難しいといえます。反対にリスクが低いのはPMP配信で、PC面・SP面ともに0.1%以下でした。

なお、SNSでは表示される広告が受信者個人の嗜好や行動によって規定されるため、計測対象から外しています。

以上の調査結果からも、インターネット広告には、配信面・配信デバイスによってさまざまなリスクがあることが見えてきます。

電通グループの行動指針「Clear Code」(クリア・コード)とその施策

電通グループは、以前から「運用広告のリスクを把握し、クライアントの承諾のもとで、最大限リスクをコントロールする」という行動指針に基づいて行動してきました。

その行動指針を今後は「Clear Code」(クリア・コード、商標出願中)として提唱していきます。

そして私たちはこのクリア・コードに基づき、「インターネット広告ってやっぱり危ないものなのでは…」と不安を抱くクライアントに対して「こういう安全策がある」と分かりやすく提示していきます。

クリア・コード

■四つのアドベリフィケーション施策をフレームワーク化

  1. 市場把握……アドベリフィケーション推進協議会として定期的な市場把握調査を実施し、ホワイトペーパー形式で公開
  2. ソリューション開発……電通グループによるオリジナルソリューションの開発と提供
  3. メディアプランニング……クライアントの要望やリスク許容度に応じて、アドベリフィケーション施策を盛り込んだ配信設計を実施
  4. 効果検証……従来型のクリック率やCV率に加え、ビューアビリティやアドフラウド率、ブランドリスク率といったアドベリフィケーション系の指標でも効果検証を実施
電通グループは上記①~④のサイクルを繰り返しながら、アドベリフィケーション対応を進化させていきます。

アドベリフィケーションにおいて、問題が起こるたびに単発的なソリューションで対応するのは、浸水した船底につぎはぎで蓋をしているようなもの。そうではなく、そもそも浸水しづらいように船自体を再設計することが、安全な航海につながります。

次回は、クリア・コードに基づいて電通グループが提供する二つのソリューション「エージェンシーブラックリスト」と「テーラードホワイトリスト」をご紹介します!

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