見直され始めた国内REIT~2018年12月の投信動向~
見直され始めた国内REIT~2018年12月の投信動向~: 2018年12月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く)の推計資金流出入をみると、国内株式とバランス型には資金流入が続いていたが、2年以上資金流入が続いていた外国株式が資金流出に転じた【図表1】。外国債券や外国REITと比べて流出金額自体は小さいが、外国株式から200億円弱の資金流出があった。
外国株式の資金流出は、新興国株式ファンドからが主であった。新興国株式ファンドからの資金流出は、流出額こそ12月は膨らんでいたが、7月から資金流出が続いていた1。ただ、11月まではそれを大きく上回る資金流入がテーマ型を中心に先進国株式ファンドにあった。それが、12月は先進国株式ファンドへの資金流入も急減速したため、外国株式全体でも資金流出に転じた。先進国株式ファンドの販売の急減速は、これまで牽引していたテーマ型ファンドの人気一巡【図表2】や新たな投資テーマの不在、さらには11月から引き続き大型新規公開株の影響も考えられる2。ただ、12月は米中貿易摩擦、米政策運営、さらには米金融政策の不透明感が高まったことが嫌気され、世界的に株価が急落したことが大きかったと思われる。12月のファンドのパフォーマンスをみると、好調だったのは金関連ファンド(赤太字)、空売りを活用している一部のファンド(青太字)、メキシコ債券ファンドくらいであった【図表3】。先進国の金利が低下し先進国債券価格が上昇したためヘッジ付の先進国債券ファンドや国内債券も堅調であったが、その他のファンドは総じて軟調だった(なお、12月は先進国債券価格の上昇以上に円高が進行したため、ヘッジ無しの先進国債券は下落するものが多かった)。
特に株式ファンドの下落が顕著で、投資地域または地域分散の有無に関係なく10%近くもしくはそれ以上下落する株式ファンドが多かった。パニック売りこそ無かった様子であるが、世界的な株価急落によって投資家の外国株式への投資意欲が冷え込んだ、もしくは様子見姿勢を強めた可能性が高いといえるだろう。
国内株式についても、パッシブ・ファンド(【図表2】赤太字)を中心に資金流入こそあったが、国内株式の先行きに対して慎重になっている投資家が多くなっていることがうかがえた。
パッシブ・ファンドの資金動向は逆張り投資の傾向が引き続き鮮明で12月は大きく下落する中、1,000億円弱の資金流入があった。金額自体は大きいが、日経平均株価の下落幅や下落率が同程度であった10月にはパッシブ・ファンドに2,000億円以上の資金流入があり、12月の資金流入はその半分以下であった。また、12月は最大で26日(日経平均株価が19,100円台まで下落した翌営業日)の130億円程度の資金流入であった。10月は12日に500億円の資金流入があり、200億円以上の資金流入があった日が12日以外に4日あった。パッシブ・ファンドの資金動向から、12月は株価下落にかなり身構えている投資家が多かったことが分かる。
さらに中小型株ファンドでは資金流出に転じた。中小型株ファンドは2017年末から2018年初にかけて大人気となった。その後、5月まで安定した資金流入があったが、6月以降は資金流入が鈍化していた【図表4】。12月はついに流出金額自体は100億円程度と小額だが資金流出となった。4月以降、中小型株にとって厳しい市場環境の中で苦戦している中小型株ファンドがほとんどであった。特に12月は配当込みTOPIXの10%下落に対して、中小型株ファンドは平均で15%下落しており、TOPIXに大きく劣後するファンドも多かった。そのため、中小型株ファンドに見切りをつける投資家が12月に増えたのかもしれない。
中小型株市場は流動性が低いだけに、中小型株ファンドからの資金流出は中小型株市場の需給悪化を招きやすい。ファンドからの資金流出は小額でも株価下落を誘発し、その資金流出自体がファンドのパフォーマンスを押し下げる可能性がある。今後の中小型株ファンドの動向には注意が必要である。12月は投信市場販売が厳しい中、金額自体は小額であったが国内REITは資金流入に転じた。国内REITが資金流入になったのは9月以来、3カ月ぶりのことである。12月は資金流出が続いている国内REITファンドもあったが、一部の国内REITファンドにまとまった資金流入があった。11月までだと資金流入が最大の国内REITファンドでも流入金額は50億円以下であった。それが12月は50億円以上の資金を集めた国内REITファンドが3本あり、最も資金流入が大きい国内REITファンド(【図表2】青太字)は70億円の純流入があった。
2018年を振り返ってみると、年末にかけて世界的に株価が下落したことがあり、国内REITが相対的に最も良好なパフォーマンスとなった【図表5】。2018年の収益率が10%を超えた国内REITファンドが多かった。
国内REITは外部環境の影響を受けにくいと考えられ、実際に12月は下落したものの、下落幅は2%程度と内外株式と比べると底堅かった。12月は外部環境の不透明感がより高まる中、他の資産と比べて安定したインカム(配当)が期待できる国内REITを改めて見直す動きが出てき始めたのかもしれない。
(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。【関連レポート】
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特に株式ファンドの下落が顕著で、投資地域または地域分散の有無に関係なく10%近くもしくはそれ以上下落する株式ファンドが多かった。パニック売りこそ無かった様子であるが、世界的な株価急落によって投資家の外国株式への投資意欲が冷え込んだ、もしくは様子見姿勢を強めた可能性が高いといえるだろう。
国内株式についても、パッシブ・ファンド(【図表2】赤太字)を中心に資金流入こそあったが、国内株式の先行きに対して慎重になっている投資家が多くなっていることがうかがえた。
パッシブ・ファンドの資金動向は逆張り投資の傾向が引き続き鮮明で12月は大きく下落する中、1,000億円弱の資金流入があった。金額自体は大きいが、日経平均株価の下落幅や下落率が同程度であった10月にはパッシブ・ファンドに2,000億円以上の資金流入があり、12月の資金流入はその半分以下であった。また、12月は最大で26日(日経平均株価が19,100円台まで下落した翌営業日)の130億円程度の資金流入であった。10月は12日に500億円の資金流入があり、200億円以上の資金流入があった日が12日以外に4日あった。パッシブ・ファンドの資金動向から、12月は株価下落にかなり身構えている投資家が多かったことが分かる。
さらに中小型株ファンドでは資金流出に転じた。中小型株ファンドは2017年末から2018年初にかけて大人気となった。その後、5月まで安定した資金流入があったが、6月以降は資金流入が鈍化していた【図表4】。12月はついに流出金額自体は100億円程度と小額だが資金流出となった。4月以降、中小型株にとって厳しい市場環境の中で苦戦している中小型株ファンドがほとんどであった。特に12月は配当込みTOPIXの10%下落に対して、中小型株ファンドは平均で15%下落しており、TOPIXに大きく劣後するファンドも多かった。そのため、中小型株ファンドに見切りをつける投資家が12月に増えたのかもしれない。
中小型株市場は流動性が低いだけに、中小型株ファンドからの資金流出は中小型株市場の需給悪化を招きやすい。ファンドからの資金流出は小額でも株価下落を誘発し、その資金流出自体がファンドのパフォーマンスを押し下げる可能性がある。今後の中小型株ファンドの動向には注意が必要である。12月は投信市場販売が厳しい中、金額自体は小額であったが国内REITは資金流入に転じた。国内REITが資金流入になったのは9月以来、3カ月ぶりのことである。12月は資金流出が続いている国内REITファンドもあったが、一部の国内REITファンドにまとまった資金流入があった。11月までだと資金流入が最大の国内REITファンドでも流入金額は50億円以下であった。それが12月は50億円以上の資金を集めた国内REITファンドが3本あり、最も資金流入が大きい国内REITファンド(【図表2】青太字)は70億円の純流入があった。
2018年を振り返ってみると、年末にかけて世界的に株価が下落したことがあり、国内REITが相対的に最も良好なパフォーマンスとなった【図表5】。2018年の収益率が10%を超えた国内REITファンドが多かった。
国内REITは外部環境の影響を受けにくいと考えられ、実際に12月は下落したものの、下落幅は2%程度と内外株式と比べると底堅かった。12月は外部環境の不透明感がより高まる中、他の資産と比べて安定したインカム(配当)が期待できる国内REITを改めて見直す動きが出てき始めたのかもしれない。
(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
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