EC(欧州委員会)がソルベンシーIIレビューに関する協議を開始-EIOPAの助言をベースにドラフトを作成-

EC(欧州委員会)がソルベンシーIIレビューに関する協議を開始-EIOPAの助言をベースにドラフトを作成-: ■要旨



ソルベンシーIIに関しては、EIOPA(欧州保険年金監督局)が、欧州委員会(European Commission) からの要請を受けて、その見直しの検討を行った。EIOPAは、2017年10月30日に、「ソルベンシーII委任規則の特定項目のレビューに関する第1の助言セット」(以下、「第1の助言セット」という)をまとめて、欧州委員会に提出した。さらに、2018年2月28日には、「ソルベンシーII委任規則の特定項目のレビューに関する第2の助言セット」(以下、「第2の助言セット」という)をまとめて、欧州委員会に提出した。



これらの助言セットの概要及びそこに至るまでのCP(Consultation Paper:コンサルテーション・ペーパー)に対する意見等の動きについては、これまでのいくつかのレポートで報告してきた。



欧州委員会は、EIOPAからの助言セットの提出を受けて、ソルベンシーIIのレビューに関する検討を進めていたが、11月12日にソルベンシーIIに関する委任規則(Delegated Regulation (EU) 2015/35)を改正する案 (以下、「ソルベンシーII規則改正案」という)を協議にかけるために公表した。なお、「このドラフトについては、欧州委員会が採択したり、承認したりしたものではなく、欧州委員会の予備的見解を示したものであり、いかなる状況下においても、欧州委員会の公式ポジションを述べているものとしてみなされるべきでない。」としているが、以下において、このレポートでは、欧州委員会の案として説明している。



今回のレポートでは、このソルベンシーII規則改正案について、その具体的内容等を報告する。



■目次



1―はじめに

2―今回の欧州委員会によるソルベンシーII規則改正案の概要

  1|ソルベンシーIIのレビューの背景及びEIOPAによる検討

  2|EIOPAの助言セットの提出を受けての欧州委員会での検討等の動き

  3|今回の欧州委員会によるソルベンシーII規則改正案のポイント

  4|今後のスケジュール

3―今回の欧州委員会によるソルベンシーII規則改正案の具体的内容

  1|ソルベンシーII規則改正案の基本的な考え方

  2|ソルベンシーII規則改正案の具体的内容

4―まとめソルベンシーIIに関しては、EIOPA(欧州保険年金監督局)が、欧州委員会(European Commission) からの要請を受けて、その見直しの検討を行った。EIOPAは、2017年10月30日に、「ソルベンシーII委任規則の特定項目のレビューに関する第1の助言セット」(以下、「第1の助言セット」という)をまとめて、欧州委員会に提出した。さらに、2018年2月28日には、「ソルベンシーII委任規則の特定項目のレビューに関する第2の助言セット」(以下、「第2の助言セット」という)をまとめて、欧州委員会に提出した。



これらの助言セットの概要及びそこに至るまでのCP(Consultation Paper:コンサルテーション・ペーパー)に対する意見等の動きについては、これまでのいくつかのレポートで報告してきた。



欧州委員会は、EIOPAからの助言セットの提出を受けて、ソルベンシーIIのレビューに関する検討を進めていたが、11月12日にソルベンシーIIに関する委任規則(Delegated Regulation (EU) 2015/35)を改正する案1(以下、「ソルベンシーII規則改正案」という)を協議にかけるために公表した。なお、「このドラフトについては、欧州委員会が採択したり、承認したりしたものではなく、欧州委員会の予備的見解を示したものであり、いかなる状況下においても、欧州委員会の公式ポジションを述べているものとしてみなされるべきでない。」としているが、以下において、このレポートでは、欧州委員会の案として説明している。



今回のレポートでは、このソルベンシーII規則改正案について、その具体的内容等を報告する。



 





2―今回の欧州委員会によるソルベンシーII規則改正案の概要

1|ソルベンシーIIのレビューの背景及びEIOPAによる検討

ソルベンシーIIのレビューは、ソルベンシーII指令の立法文書に従う正式なプロセスである。ソルベンシーII委任規則のリサイタル150は、ソルベンシー資本要件の標準式の見直しのためのタイムラインを定義している。レビューの第1段階は、2018年12月までに欧州委員会によって最終決定され、ソルベンシーIIの枠組みは2021年までに見直される予定となっている。



欧州委員会は、ソルベンシー資本要件を標準式で計算する際に使用される方法、前提及び標準パラメータを検討する意向を表明し、2016年7月に、EIOPAに対して、具体的にいくつかの項目に関する技術的助言2を提供するように依頼した。



これを受けて、「1.はじめに」において一部述べたように、EIOPAは以下の対応を行ってきている(それぞれの内容については、基礎研レポートで報告)。



・2016年12月に「ソルベンシーII委任規則の特定項目のレビューに関するディスカッション・ペーパー(DP)」を公表



・2017年7月4日に「ソルベンシーII委任規則の特定項目に関する欧州委員会へのEIOPAの第1の助言セットに関するコンサルテーション・ペーパー(CP)」を公表3



・2017年10月30日に、「ソルベンシーII委任規則の特定項目のレビューに関する第1の助言セット」(以下、「第1の助言セット」という)をまとめて、欧州委員会に提出4



・2017年11月6日に、「ソルベンシーII委任規則の特定項目に関する欧州委員会へのEIOPAの第2の助言セットに関するコンサルテーション・ペーパー」を公表し、ステークホルダーからのフィードバックを徴求5



・2018年2月28日には、「ソルベンシーII委任規則の特定項目のレビューに関する第2の助言セット」をまとめて、欧州委員会に提出6

 




2 REQUEST TO EIOPA FOR TECHNICAL ADVICE ON THE REVIEW OF SPECIFIC ITEMS IN THE SOLVENCY II DELEGATED REGULATION (Regulation (EU) 2015/35)
http://ec.europa.eu/finance/insurance/docs/news/call-for-advice-to-eiopa_en.pdf#search='Ref.Ares%282016%293573955'
3EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第1の助言セットについてのCPを公表(1)-欧州委員会に対する助言内容-」(2017.8.21)及び「EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第1の助言セットについてのCPを公表(2)-政策オプションの影響評価-」(2017.8.22)
4EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第1の助言セットを欧州委員会に提出」(2017.11.7)
5EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットについてのCPを公表(1)-欧州委員会に対する助言内容-」(2017.12.12)、「EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットについてのCPを公表(2)-欧州委員会に対する助言内容-」(2017.12.18)、「EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットについてのCPを公表(3)-欧州委員会に対する助言内容-」(2017.12.25)
6EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットを欧州委員会に提出(1)」(2018.3.26)、「EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットを欧州委員会に提出(2)」(2018.3.28)、「EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットを欧州委員会に提出(3)」(2018.4.2)、「EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットを欧州委員会に提出(4)」(2018.4.5)、「EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットを欧州委員会に提出(5)」(2018.4.9)
2|EIOPAの助言セットの提出を受けての欧州委員会での検討等の動き

ここでは、公表された「ソルベンシーII規則改正案」に関する文書の中の「2.法の採択前の協議」における記述に基づいて、EIOPAの助言セットの提出を受けての欧州委員会での検討の動きを報告する。



欧州委員会は、EIOPAの助言セットの提出を受けて、2018年3月27日、ソルベンシーII委任規則の見直しに関する丸一日の公聴会を開催した。議論は4つのパネルで組織され、現在の改正規則でカバーされている全ての分野を網羅していた。スピーカーには、保険業界及びその資産管理者、監督当局、消費者団体、欧州議会の専門家が含まれていた。



EIOPAの助言は一般的に歓迎されたが、業界からのスピーカーは、マイナス金利の可能性を反映するための金利リスクの資本要件の強化に関するEIOPAの自らのイニシアティブによる助言について、その資本要件に与えるこの提案の重要な影響とそのシクリカリティのために、懸念を表明した7。実際に、EIOPAはこの提案がEU全体での資本要件における200億ユーロの増加をもたらし、ソルベンシー比率の14%ポイント、ある国では75%ポイントまでの低下を導くと推定している。



いくつかの利害関係者は、繰延税金の損失吸収能力の計算に関するより調和したガイダンスを提供するためのEIOPA自身のイニシアティブによる助言についても批判的であり、多様性は異なる国別税制によって正当化される可能性があると主張している。



標準式による計算のさらなる簡素化のためにEIOPAの提案に関しては、利害関係者は、比例原則の効果的な適用は、ソルベンシーII条項の国家監督当局の実施に大きく依存していることを強調した。最後に、EIOPAの非上場株式及び未格付債務の改善された取扱に対する提案が積極的に歓迎された一方、一部の利害関係者は、株式の長期投資を刺激するより野心的な行動を検討することを提案した。



なお、欧州議会とEIOPAをオブザーバーとし、加盟国からの専門家を集めた銀行・支払・保険(保険組合)に関する専門家グループは、2017年6月29日、2018年5月29日、2018年9月20日の会議で協議を行った。メンバーは一般的に欧州委員会によって取られたアプローチを歓迎した。いくつかの加盟国は、EIOPAが提案した優遇措置の恩恵を受ける可能性のある未格付債務及び非上場株式に関する5%の限度がないことに疑問を呈したが、CMU(capital markets union:資本市場組合)の目的に照らしてこの選択を歓迎した。最終的に、一部の加盟国は株式投資の健全な取扱に関するさらなる措置を求め、1つの加盟国はボラティリティ調整に関する行動を求めた。



これに応えて、欧州委員会はEIOPAに、長期投資家としての保険会社の行動に関する情報を提供するよう呼びかけた。なお、ボラティリティ調整は、その他の長期保証措置と同様に、指令の第77f条で予見される2020年の指令の見直しの対象となる。



今後のレビューの一般的な内容についても、2018年5月16日のECON委員会(欧州議会経済金融委員会)の精査セッションでの欧州議会で議論された。欧州委員会は、EIOPAの助言の殆どに従う意向を概説したが、ステークホルダーのフィードバックと、資本要件、特に長期的な活動に関しては、金利リスクの較正の改訂は、より包括的アプローチが採択されるソルベンシーII指令2020の見直しの文脈においてより適切に検討されるであろう、と示唆した。



精査の後、ECON委員会は、2018年9月18日に、このレビューの内容とソルベンシーIIの枠組み一般に関する提案とともに、レターを欧州委員会に送った。レターは、法的文言の最終決定において、欧州委員会によって慎重に評価され、申請日は、損害保険料リスクに対する資本要件の増加に備えるために、保険会社と再保険会社が信用補完部門においてのみ有効になることを認めるような方式で設定された。欧州委員会は、2020年のソルベンシーII指令の見直しの準備において、特にレターに提出された他の提案を調査する。



なお、本規則によって改正された軽微な草案及び誤植のリストは、EIOPAによって国家監督当局と協力して収集された。



 




7 次の「(参考)Insurance EuropeによるInsight briefing」参照
(参考)Insurance EuropeによるInsight briefing

欧州の保険業界団体であるInsurance Europeは、先に述べた欧州委員会によるソルベンシーII委任規則の見直しに関する公聴会に合わせて、そのヒアリングの前に、2018年3月27日付でInsight briefingを公表8している。



その中で、今回のソルベンシーIIの見直しに関して、(1)現在変更すべきもの、(2)変更すべきでないもの、(3)後ほど変更が必要なもの、に分けて、それぞれ以下の項目を挙げている9

(1)現在変更すべきもの-リスクマージンと長期株式較正


欧州委員会は、健全なプルデンシャルな正当性を有し、ユンケル委員会の欧州の成長と投資の野望を支持する2018年の見直しの一環として、具体的な措置を講じる必要がある:


・現在の過剰なリスクマージンが、保険会社の長期的な商品と長期的な投資能力に与える影響を認識して、リスクマージンにおける資本コストを削減する。


・非上場株式のみならず、株式への長期投資の資本要件を削減する。 これらは現実のリスクと比較して現在過剰であり、投資を増やすことへの阻害要因になっている。



(2)変更すべきでないもの-金利リスクとLAC DT


EIOPAの金利リスクへの変更提案と繰延税金の損失吸収能力(LAC DT)は、ユンケル委員会の成長目標と矛盾しているため、これを先取りすべきではない。


・金利リスクの較正に対しての変更はすべきでない。 変更は、保険契約者の保護を確実にするために必要になく、長期契約に対する障壁が増える。金利は、評価方法論に関するより広範かつ根本的な問題に直接関係しており、2020年のレビューで扱われるべきである。


・繰延税金の損失吸収能力に、任意の限度を課すべきではない。 ソルベンシーIIは、既にLAC DTの使用をサポートするための高い証拠の基準を要求している。



(3)後ほど変更が必要なもの


ソルベンシーIIが保険契約と投資の長期的な性質を正しく反映できるようにするため、2020年の全面的な見直しは全体的な見直しが必要となる。2020年の見直しでは、リスクマージンの設計が優先されるべきである。また、金利リスクの較正は、負債及び金利の評価に関連するより広い問題に対処する2020年に見直されるべきである。

さらに、最後に、全体的な意見として、以下のように述べている。

ソルベンシーIIの特定の要素は、保険会社が常に資産と負債を全て取引するという誤った仮定に基づいているため、調整が必要となる。これは、間違ったリスクが測定されていることを意味し、過度の資本要件と人為的なボラティリティにつながる。これは、欧州委員会が設定した「持続可能な財務に関するハイレベル専門家グループ」の報告書10で強調された。現実には、保険会社は長期的な投資が可能であり、投資家とは異なり、悪い時にポートフォリオ全体を売ることはほとんどない。



消費者に対して間違った措置を講じることで、保険料が高くなり、利益が低くなり、選択肢が少なくなる。それは、保険会社が経済成長をサポートする能力を制限するため、経済にとって重要である。

3|今回の欧州委員会によるソルベンシーII規則改正案のポイント

今回の欧州委員会によるソルベンシーII規則改正案は、EIOPAによる技術的助言を踏まえて、上記で述べたようなプロセスにより、欧州委員会において検討されてきた結果である。



その内容については、基本的には、EIOPAから提出された技術的助言セットに準じる形での提案がなされている。



特に、EIOPAが提案した各種の新たな簡素化や比例原則に基づく取扱や新たな証拠が出現した場合のリスクの較正の調整等を認めている。



なお、保険業界が、EIOPAに対して、強く要請を行っていたが、EIOPAの助言には組み込まれなかった項目、例えば、リスクマージンの計算、特に資本コストの算出における6%の資本コスト率の引き下げについては、今回のソルベンシーII規則改正案には反映されていない。保険業界は、EIOPAによる助言セットの提出後も欧州委員会にロビー活動を行ってきたが、結果は得られなかった。



一方で、EIOPAが提言した助言の中でも、マイナス金利の状況を反映するために提案された金利リスクの計算の改革については、欧州委員会は採用していない。これについても、保険業界が強く反対してきた項目であり、これについては保険業界の意向が反映された形になっている。



また、繰延税金の損失吸収能力(LAC DT)については、これが保険及び再保険会社のソルベンシー・ポジションに重要な影響を及ぼすことから、EIOPAが提案したLAC DTの計算のための一連の共通原則も踏まえて、保険又は再保険会社の管理、経営、監督機関(AMSB)は、これらの繰延税金の損失吸収能力を考慮した繰延税金に関連するリスク管理方針を採用すべきであり、特に、その方針は、将来の課税対象利益の予測に適用される基礎となる仮定を評価する責任を定めるべきである、とした。



今回の変更は、ソルベンシーIIへの遵守に伴う複雑さとコストを軽減するための、特に小規模の保険会社にとっての、いくつかの方法を提供している。その他の変更は、地域政府及び地方自治体債務、非上場株式及び未格付債務など、特定の資産クラスへの投資プロセスを容易にするために行われる。4|今後のスケジュール

今回のCPに対する協議機関は4週間で、12月7日まで行われる。



フィードバックは、このイニシアティブを最終化するために考慮される。



欧州委員会は協議期間に続いて、法を採択し、欧州議会(European Parliament)と欧州理事会(European Council)が2ヶ月以内に反対しなければ、委任法は効力を生じることになる。1|ソルベンシーII規則改正案の基本的な考え方

今回の欧州委員会によるソルベンシーII規則改正案の基本的な考え方は、以下の通りである。



・経済の資金調達に対する不当な制約を取り除くために、保険会社の未格付債務及び非上場株式投資の標準的な計算式における資本費用の削減を可能にする健全性基準が導入されている。これらの改正により、ショック要素をスプレッドリスクで56%、株式リスクで20%低下させることができる。また、保険会社の資産負債及び投資管理に関連するいくつかの基準が満たされているとの条件で、株式へのリング・フェンスの長期投資は、戦略的参加と同じ資本チャージから恩恵を受けるべきである。



・枠組みの比例性を高めるために、とりわけ、投資ファンドのルック・スルーの強制適用からのカーブアウトや、外部評価の使用に対する例外を含む、資本要件の標準式の不当に負担やコストのかかる要素に対するさらなる簡素化が導入される。これらの簡素化は、慎重な条件のもとで行われ、その適用が保険や再保険会社が曝されているリスクが隠れていないことを保証する。さらに、人為的カタストロフィリスクサブモジュールは簡素化されている。



・異なるEUの金融法令間の不当な不一致を取り除くために、ソルベンシーII資本要件の標準式に適用される規則は、そのような調整がこれらの異なるビジネスモデルに相応している程度まで。銀行業界で適用される規則とさらに整合される。この調整には、自己資本の分類と、中央カウンターパーティへのエクスポジャーと、地域政府及び地方自治体へのエクスポジャーの取扱が含まれる。さらに、欧州市場インフラ規制(EMIR)の採択に伴い、デリバティブの取扱が調整されている。



・現在の損失を吸収するための繰延税金の能力の認識における加盟国間の幅広い慣行の背景に照らして、異なる税制によって正当化できないものについては、連合における公平な競争の場を確保するためのさらなる原則が導入される。このような改正は、EUレベルでの全体的な資本要件に限定的な影響を及ぼしながら、国の管轄間の監督上の収斂を促進する(損失吸収前のソルベンシー資本要件に対する繰延税金の損失吸収能力の0.9%ポイントの全体的な減少)。



・最終的な較正が行われてから得られた保険料と最終的な損失の見積もりに基づいて収集された追加データを利用して、損害保険料及び準備金リスクのリスク較正、健康及び損害災害リスクを含むいくつかのパラメータが更新される。



・リスク回避手法の認識、グループソルベンシー計算、及び損害保険料リスクのボリューム指標がさらに洗練され、市場慣行における発展が反映されつつ、資本要件標準式のリスク感応度が改善される。



・より厳格な枠組みが、関連するリスクフリー金利期間構造に関する技術的情報を掲示するための方法論、原則及びテクニックの改訂に関して、規定され、透明性、慎重さ、信頼性と一貫性を高める目的での技術的情報の決定システムを改善させる。



・ソルベンシーII委任規則全体にわたる多くの草案の誤りが訂正される。2|ソルベンシーII規則改正案の具体的内容

今回の欧州委員会によるソルベンシーII規則改正案の主たる内容は以下の通りである。



・EU全体の市場の失敗や準最適投資の状況に対処することに焦点を当てて、投資プロジェクトの堅実なパイプラインの開発を支援するべきであるInvestEU Advisory Hubと投資家に簡単にアクセス可能で使いやすい投資プロジェクトのデータベースを提供するInvestEU Portalの設立を提案する。



・プライベート・エクイティ及びプライベート・ポジションの債務の健全性取扱は、これらの資産クラスへの投資に対する不当な障壁を取り除くために改正されるべきである。



・保険及び再保険会社による比例原則の適用が保証されるべきであり、保険業界及び他の金融部門における経済運営者間の平等な競争の場を確保するために、保険及び再保険会社に適用される規定の一部は、信用及び金融機関に適用される規定と、そのような調整が異なるビジネスモデルに対応したものであるという程度で、調整されるべきである。



・カウンターパーティデフォールトリスクの標準的な計算は、信用機関や金融機関に適用されるエクスポジャーの資本要件と一致する形で、適格CCPs(中央清算機関)への貿易エクスポジャーを扱うべきである。



・私募債務に対する保険会社の投資を促進すうために、保険又は再保険会社の内部信用評価に基づいて、指定ECAIによる信用評価が信用度ステップ2又は3に利用できない債券及びローンの割当てを可能にする基準を設定すべきである。



・変更された技術、データの仕様又はパラメータの影響、及びデータの変更に関する変更が、時間の経過とともに関連するリスクフリー金利期間構造に関する技術情報を決定する方法の透明性、慎重さ、信頼性及び一貫性の目的に見合っているかどうかを評価するための条件を明確にすべきである。



・払込済劣後相互勘定、払込優先株式及び関連する株式プレミアム勘定の形態の劣後債務で支払われる自己資金項目がTier1自己資本としてどの程度適格であるかを明記する基準を確立すべきである。



・免責条項のメカニズムの税効果が保険又は再保険会社のソルベンシー・ポジションを大幅に弱める可能性が高いと信ずる可能性があるかどうかを評価すべきである。



・ルックスルーアプローチは、は、その保険又は再保険会社のための資産の保有又は管理を主目的とする保険又は再保険会社に関連する会社に適用されるべきである。



・さらに、以下の項目の適用及び計算において、一定の条件が満たされる場合に、簡便化の適用等が認められるべきであるとしている。

 ・ルックスルーアプローチ

 ・解約リスクサブモジュール

 ・自然カタストロフィリスクのサブモジュール

 ・火災リスクサブモジュール

 ・生命・健康死亡リスクサブモジュール

 ・格付けの使用

 ・カウンターパーティデフォールトリスク

 ・保険引受リスクに対するリスク軽減効果 



・将来の契約に関する保険料のリスク費用は、1年超の契約期間に過度にペナルティを科すべきではない。



・自然カタストロフィリスクのソルベンシー資本要件の計算においては、自然カタストロフィに対する補償の契約上の限度を考慮する必要がある。



・海上、航空、火災のリスクに対するシナリオベースの計算は、再保険又は特殊目的の車両から回収可能な額の控除後の最大のエクスポジャーに基づいて行われるべきである。



・海上リスクサブモジュールのタンカー衝突シナリオは最低250,000ユーロ以上の保険金を有する船舶にのみ適用される。



・保険会社による非上場株式への直接投資について、とりわけ、高品質の非上場株式投資のポートフォリオが、標準式で株式リスクの資本要件を計算する際に規制市場に上場されている株式と同じ取扱から恩恵をうけることを可能にすることによって、促進されるべきである。高品質の非上場株式ポートフォリオが十分に小さいシステミックリスクを有することを確実にするための基準が設定されるべきである。



・資本市場への長期投資は奨励されるべきであり、保険会社は、少なくとも12年間平均で保有されているリング・フェンスの株式投資のサブセットに対して、株式リスクに対するより低い資本チャージを適用することが許されるべきである。



・スプレッドリスクサブモジュールの資本要件の計算は、保険又は再保険会社が高格付け私募債への投資を妨げてはならない。



・地域政府及び地方自治体が発行する保証の認識のための保険及び再保険の規則は、信用機関及び投資会社に適用される機関によって発行された保証の認識のための規則と一致させるべきである。



・全てのデリバティブは、標準式のカウンターパーティのデフォルトリスクモジュールでタイプ1のエクスポジャーとして扱われるべきである。



・個々のエクスポジャーは、まず信用力のステップと相対超過エクスポジャー臨界値にマッピングされ、リスクファクターはその後単一名エクスポジャーのレベルで適用されるべきである。



・保険及び再保険会社は、例外的な損失シナリオ後の将来の課税利益の予測において過度に楽観的な仮定を使用すべきではない。



・リスク管理実務の開発、特にリスク軽減手法の使用は、標準式のソルベンシー資本要件の計算に反映されるべきである。



・再保険カウンターパーティが最低自己資本要件を遵守しなくなった場合、保険又は再保険会社は、その再保険カウンターパーティとの再保険契約によるリスク軽減効果をもはや考慮に入れなくてもよいとすべきである。



・保険会社及び再保険会社は、ソルベンシー資本要件の標準式計算におけるストップ・ロス契約によって提供されるリスク軽減を考慮に入れるべきである。



・繰延税金の損失吸収能力は、保険及び再保険会社のソルベンシー・ポジションに重要な影響を及ぼす。従って、保険又は再保険会社の総務、経営、監督機関(AMSB)は、これらの繰延税金の損失吸収能力を考慮した繰延税金に関連するリスク管理方針を採用すべきである。



・ルックススルーアプローチが集団投資会社、又は参加保険又は再保険会社の関連会社であるファンドとしてパッケージ化された投資にソロレベルで適用される場合、ルックスルーアプローチもグループレベルで適用されるべきである。



・グループの通貨リスクに対する資本要件の計算は、特に保険又は再保険活動が異なる通貨建てである場合に、そのグループの特定の経済状況を反映すべきである。



・損害保険料及び準備金リスクサブモジュール、健康保険料及び準備金リスクサブモジュール、及び自然カタストロフィリスクサブモジュールの標準的な計算式は、保険料引当金及び支払備金に関する最近の経験的証拠を反映するように改正する必要がある。



・大量事故及び事故集中のための資本要件の複雑さの計算は、健康保険を提供する会社が曝されているリスクの性質、規模及び複雑さに比例していなければならず、従って、事故に起因する10年間続く障害に関するイベントタイプは、もはやこの計算から除外されるべきではない。



今回の欧州委員会によるソルベンシーII規則改正案の具体的内容は、以下の通りである。

なお、これらの各項目のより詳しい内容等については、以前の基礎研レポート等を参照していただきたい4及び6

(1)指令2009/138 / ECの適用初年度の保険及び再保険会社によって得られた経験は、2018年12月より前にソルベンシー資本要件の標準式を計算する際の方法、前提及び標準パラメータの見直しに使用されるべきである。



(2)InvestEU Programmeを確立する新たな規制に関する欧州委員会の提案は、EU全体の市場の失敗や準最適投資の状況に対処することに焦点を当てている。その提案には、投資プロジェクトの堅実なパイプラインの開発を支援するべきであるInvestEU Advisory Hubと投資家に簡単にアクセス可能で使いやすい投資プロジェクトのデータベースを提供するInvestEU Portalの設立が含まれる。これにより、InvestEUは、債券、ローン又はプライベート・エクイティの形での中小企業向けファイナンスへの投資ならびにその他の長期投資を支援する。標準式では、プライベート・エクイティ及びエクイティ投資に対する特定のルールは規定していない。InvestEU Portalによるこのような投資のアクセシビリティの向上が期待されているので、そのようなルールを導入する必要がある。2015年9月30日のキャピタル・マーケット・ユニオンの構築に関する行動計画に照らして、欧州への投資を促進し、欧州の中小企業の株式や債務へのアクセスを促進すべきである。従って、プライベート・エクイティ及びプライベート・ポジションの債務の健全性取扱は、これらの資産クラスへの投資に対する不当な障壁を取り除くために改正されるべきである。



(3)保険及び再保険会社による比例原則の適用が保証されるべきである。さらに、保険業界及び他の金融部門における経済運営者間の平等な競争の場を確保するために、保険及び再保険会社に適用される規定の一部は、信用及び金融機関に適用される規定と、そのような調整が異なるビジネスモデルに対応したものであるという程度で、調整されるべきである。



(4)適格CCPs(中央清算機関)への貿易エクスポジャーは、適格CCPsが提供する多国間のネッティング及びロスシェアリングのメリットから利益を得る。結果として、彼らは取引先の信用リスクが低下しているため、CCPのメカニズムを享受していない取引相手よりも自己資金需要が低くなるはずである。従って、カウンターパーティデフォールトリスクの標準的な計算は、信用機関や金融機関に適用されるエクスポジャーの資本要件と一致する形で、適格CCPsへの貿易エクスポジャーを扱うべきである。



(5)長期的な持続的成長のための連合の目的に貢献するためには、私募債務に対する保険会社の投資を促進すべきである。そのためには、保険又は再保険会社の内部信用評価に基づいて、指定ECAIによる信用評価が信用度ステップ2又は3に利用できない債券及びローンの割当てを可能にする基準を設定すべきである。



(6)関連するリスクフリー金利期間構造に関する技術情報の決定に使用されるデータの大幅な変更は、過去に使用されたデータソースがもはや利用できなくなる状況につながる可能性がある。さらに、データの利用可能性が向上すると、関連するリスクフリーの金利期間構造に関する技術情報の決定に使用される技術が時代遅れになる可能性がある。市場環境の大幅な変化は、終局フォワードレート、リスクフリー金利の外挿の開始点、又は終局フォワードレートへの収斂期間を含む、パラメータの再評価を必要とする可能性がある。そのような変更が、時間の経過とともに関連するリスクフリー金利期間構造に関する技術情報を決定する方法の透明性、慎重さ、信頼性及び一貫性の目的に見合っているかどうかを評価するための条件を明確にすべきである。この目的のために、EIOPAは、変更された技術、データの仕様又はパラメータの影響、及びデータの変更に関する変更の比例性の評価を欧州委員会に提出する必要がある。



(7)払込済劣後相互勘定、払込優先株式及び関連する株式プレミアム勘定の形態の劣後債務で支払われる自己資金項目は、ソルベンシー資本要件が3ヶ月連続で違反している場合の部分的な元本損失吸収メカニズムを提供するかもしれない。そのような項目がTier1自己資本としてどの程度適格であるかを明記する基準を確立すべきである。



(8)元本損失吸収メカニズムが引き起こされた場合の税効果による基本的な自己資本の損失は避けられるべきである。従って、保険及び再保険会社は、その仕組みの適用の免除を要求することができなければならない。しかし、免責条項を付与する前に、監督当局は、そのメカニズムの税効果が保険又は再保険会社のソルベンシー・ポジションを大幅に弱める可能性が高いと信ずる可能性があるかどうかを評価すべきである。



(9)保険セクターと他の金融セクターの経済運営者との間の平等な競争の場が確保されるべきである。従って、保険及び再保険会社は、事前の監督当局の承認を条件として、自己資本からその項目を除外する可能性のある自己資本項目の規制上の分類における予期せぬ変更がある場合、又はその項目の適用される税処理に予期しない変更がある場合、発行日の後最初の5年以内に自己資本項目の返済又は償還を行う可能性がある。



(10)ルックスルーアプローチは、会社の投資構造にかかわらず、保険又は再保険会社が晒されているリスクが適切に把握されるようにすべきである。従って、そのアプローチは、その保険又は再保険会社のための資産の保有又は管理を主目的とする保険又は再保険会社に関連する会社に適用されるべきである。



(11)ルックスルーアプローチを集合的投資会社又はファンドとしてパッケージングされた投資に適用することができない場合、保険又は再保険会社は、その単純化アプローチが関係するリスクの性質、規模及び複雑さに比例していることを条件に、集団的投資会社又はファンドの最後に報告された資産配分に基づく単純化アプローチを使用することが認められるべきである。



(12)解約リスクサブモジュールは、単一保険契約の水準に基づいて複雑な計算を必要とする。そのような複雑さが、サブモジュールに該当するリスクの性質、規模、複雑さに比例しない場合、それらのサブモジュールの計算は、もし、グループ分けが重大な誤りにつながるのでなければ、単一保険契約というよりはむしろ保険契約のグループに基づいて行うことが可能でなければならない。



(13)標準式の自然カタストロフィリスクのサブモジュールの計算は、そのリスクに対する保険又は再保険会社のエクスポジャーの性質、規模及び複雑さに比例する必要がある。自然カタストロフィリスクのサブモジュールの計算では、保険及び再保険会社が保険金額をリスクゾーンにマッピングする必要がある。全ての保険及び再保険会社が、内部システムで利用可能なこの計算に必要なリスクゾーンレベルに関する情報を持っているわけではない。これらの会社については、この情報を作成するのに費用がかかる可能性がある。これらの会社は、そのようなグループ分けに十分に根拠があり、エクスポジャーに比例している場合に、リスクゾーンのグループ分けに基づいて計算を行うことができるべきである。



(14)標準式の火災リスクサブモジュールの資本要件の計算では、保険及び再保険会社が最大の火災リスク集中を特定する必要がある。計算負担を制限するために、保険又は再保険会社は、そのアプローチが、保険又は再保険会社の火災リスクへのエクスポジャーの性質、規模及び複雑さに比例していることを条件に、最大の火災リスク集中のための識別プロセスを最大の火災リスクエクスポジャーの周辺に制限することができなければならない。



(15)標準式の生命・健康死亡リスクサブモジュールの資本要件の簡略化された計算は、保険契約のリスク資本が時間とともに変化する可能性があることを反映するように改正されるべきである。



(16)標準式を使用してソルベンシー資本要件の計算の格付けを取得するためのコストは、関連する資産リスクの性質、規模及び複雑さに比例する必要がある。従って、外部格付け機関を指名した保険及び再保険会社は、外部格付けが取得されていない負債ポートフォリオの部分について簡略化された計算が提供されるべきである。



(17)カウンターパーティデフォールトリスクに対するソルベンシー資本要件の標準式計算では、保険会社及び再保険会社は、カウンターパーティの破産財産に対するシェアがどのように決定されるかを考慮する必要がある。標準式による計算における不均衡な負担は避けられるべきである。それゆえ、カウンターパーティデフォールトリスクのためのソルベンシー資本要件の計算に標準式を使用した保険及び再保険会社は、保険又は再保険会社のカウンターパーティの破産の比例配分の決定担保を超える不動産の決定は、会社が担保を受領することを考慮しているとの前提に基づいて、計算を行うことができるべきである。



(18)ソルベンシー資本要件の計算のために標準式を用いている保険及び再保険会社は、タイプ1のエクスポジャーの損失分布の標準偏差が7%未満である場合に、タイプ1のエクスポジャーのカウンターパーティデフォールトリスクの資本要件の計算に特定の式を使用しなければならない。その要件を計算する際の不均衡な負担は避けられるべきである。従って、保険会社及び再保険会社は、タイプ1のエクスポジャーの損失分布の標準偏差が7%から20%の場合に適用される同じ式を使用して、タイプ1のエクスポジャーに関するカウンターパーティのデフォルトリスクの資本要件を計算することができる。



(19)保険引受リスクに対するリスク軽減効果の計算は複雑であり、損害保険事業を行っている保険及び再保険会社にとって、不均衡な負担となる可能性がある。従って、簡素化された式の使用が会社のリスクプロファイルの本質的規模及び複雑さに比例する場合、保険及び再保険会社が簡略化された式を使用できるようにすることが適切である。



(20)将来の契約に関する保険料のリスク費用は、1年超の契約期間に過度にペナルティを科すべきではない。従って、期間が1年以下の契約の場合、損害保険リスク及びNSLT健康保険の保険料のボリューム指標は、当初認識日から12ヵ月間に取得される保険料を除外する必要がある。期限が1年を超える契約の場合、より長期間の契約による将来の保険料に関連するより低いリスクを考慮に入れるために、損害保険リスク規模措置は将来の保険料の30%のみを考慮すべきである。



(21)自然カタストロフィリスクに対するソルベンシー資本要件の計算における会社の実際のリスクエクスポジャーを標準式に反映させるためには、自然カタストロフィに対する補償の契約上の限度を考慮する必要がある。



(22)人為的カタストロフィリスクに対するソルベンシー資本要件の計算は、保険及び再保険会社が晒されているリスクを引き続き反映するべきである。従って、海上、航空、火災のリスクに対するシナリオベースの計算は、再保険又は特殊目的の車両から回収可能な額の控除後の最大のエクスポジャーに基づいて行われるべきである。



(23)海上リスクサブモジュールのタンカー衝突シナリオを遊覧船又は硬式ゴムボート(RIB)に適用することは適切ではない。従って、このシナリオは最低250,000ユーロ以上の保険金を有する船舶にのみ適用される。



(24)保険会社による非上場株式への直接投資は、EUの長期的な持続的成長の目的に寄与することができるため、とりわけ、高品質の非上場株式投資のポートフォリオが、標準式で株式リスクの資本要件を計算する際に規制市場に上場されている株式と同じ取扱から恩恵をうけることを可能にすることによって、促進されるべきである。高品質の非上場株式ポートフォリオが十分に小さいシステミックリスクを有することを確実にするための基準が設定されるべきである。



(25)資本市場への長期投資は、資本市場組合に貢献する可能性があり、従って奨励すべきである。従って、保険会社は、少なくとも12年間平均で保有されているリング・フェンスの株式投資のサブセットに対して、株式リスクに対するより低い資本チャージを適用することが許されるべきである。しかし、保険又は再保険会社は、長期的にこれらの株式投資を保有することができることを証明し、そうする意向を文書化すべきである。



(26)標準式のスプレッドリスクサブモジュールの資本要件の計算は、保険又は再保険会社が高格付け私募債への投資を妨げてはならない。保険又は再保険会社は、信用機関又は投資会社との間で、指定されたECAIによる信用格付が利用できない債券及びローンに共同投資することを締結する可能性がある。その場合、保険又は再保険会社は、その信用機関又は投資会社の承認された内部格付手法の結果を、その信用機関又は投資会社が欧州経済域(EEA)に本店を有することを条件に、ソルベンシー資本要件を計算するために使用することが許可されるべきである。保険又は再保険会社が、指令2009/138 / ECの第100条に従って承認された内部モデルを使用する別の保険又は再保険会社との契約を締結した場合にも、同様のことが適用されるべきである。



(27)金融セクターをカバーする法律は、セクターのビジネスモデルの差異、資本要件の決定の分岐要素、又はその他の根拠を考慮しながら、一貫しているべきである。従って、地域政府及び地方自治体が発行する保証の認識のための保険及び再保険の規則は、信用機関及び投資会社に適用される機関によって発行された保証の認識のための規則と一致させるべきである。



(28)デリバティブは、デリバティブがヘッジ又は投機目的で保有されているかどうかにかかわらず、保険契約及び再保険契約を相手方のデフォルトリスクに晒す。従って、全てのデリバティブは、標準式のカウンターパーティのデフォルトリスクモジュールでタイプ1のエクスポジャーとして扱われるべきである。



(29)標準式による市場リスク集中の資本要件の計算の順序における相違は避けるべきである。従って、個々のエクスポジャーは、まず信用力のステップと相対超過エクスポジャー臨界値にマッピングされ、リスクファクターはその後単一名エクスポジャーのレベルで適用されるべきである。



(30)保険及び再保険会社は、例外的な損失シナリオ後の将来の課税利益の予測において過度に楽観的な仮定を使用すべきではない。標準式を用いて計算すると、繰延税金、保険及び再保険会社の損失吸収能力は、瞬時損失後の財務及びソルベンシー・ポジション、将来の課税対象利益の予測に関する不確実性の増加などがある。さらに、保険又は再保険会社の投資に対する想定収益率を含む瞬時損失に続く将来課税利益を予測するための仮定は、貸借対照表上の繰延税金の評価に適用される仮定及び予測される新契約の総額は事業計画の総額を超えてはならない。保険及び再保険会社は、これらのリターンが瞬時損失の後に実現されることを実証できる場合に限り、関連する金利期間構造に含まれるものよりも高いリターンを仮定することが許されるべきである。



(31)リスク管理実務の開発、特にリスク軽減手法の使用は、標準式のソルベンシー資本要件の計算に反映されるべきである。従って、この計算により、保険及び再保険会社は、期限切れ時に同様の手配で置き換えられる場合、又はリスク又は調整の頻度が1週間に1回に制限されていなければならないとの条件でリスク軽減手法の対象となるエクスポジャーの変動を反映するよう調整される場合に、リスク軽減技術の効果を考慮に入れることができるべきである。また、標準式は、いくつかの契約上の手配がリスク軽減手法の効果を併せ持つ場合に、デリバティブとヘッジ戦略の間のネッティング契約を可能にすべきである。一方で標準式に反映されたリスク緩和効果と他方に対する実際のリスク緩和効果との間に起こり得る偏差、及びベーシスリスクの評価は、会社自身のリスク及びソルベンシー評価に含めるべきである。



(32)再保険カウンターパーティがソルベンシー資本要件を遵守しなくても、最低自己資本要件を満たしている場合には、保険又は再保険会社は不利益なペナルティを科すべきではない。従って、再保険カウンターパーティとの再保険契約のリスク軽減効果を部分的に考慮に入れて、保険及び再保険会社を6ヵ月まで許可する必要がある。再保険カウンターパーティが最低自己資本要件を遵守しなくなった場合、保険又は再保険会社は、その再保険カウンターパーティとの再保険契約によるリスク軽減効果をもはや考慮に入れなくてもよいとすべきである。



(33)ストップ・ロス再保険契約は、ソルベンシー資本要件の計算において、標準式を用いて損失再保険契約を超過した場合と同様の扱いを受けるべきである。従って、保険会社及び再保険会社は、ソルベンシー資本要件の標準式計算におけるストップ・ロス契約によって提供されるリスク軽減を考慮に入れるべきである。会社固有のパラメータを計算するための標準化された方法を定めることにより、非比例再保険の標準的なパラメータを置き換える。



(34)繰延税金の損失吸収能力は、保険及び再保険会社のソルベンシー・ポジションに重要な影響を及ぼす。従って、保険又は再保険会社の管理、経営、監督機関(AMSB)は、これらの繰延税金の損失吸収能力を考慮した繰延税金に関連するリスク管理方針を採用すべきである。特に、その方針は、将来の課税対象利益の予測に適用される基礎となる仮定を評価する責任を定めるべきである。



(35)ソルベンシー資本要件の計算は、ソロとグループレベルで一貫していなければならない。ルックススルーアプローチが集団投資会社、又は参加保険又は再保険会社の関連会社であるファンドとしてパッケージ化された投資にソロレベルで適用される場合、ルックスルーアプローチもグループレベルで適用されるべきである。これらの集団投資会社又はファンドが保険又は再保険グループの子会社である場合、分散化利益は、他の連結資産及び負債との完全分散化を前提とするべきである。



(36)グループの通貨リスクに対する資本要件の計算は、特に保険又は再保険活動が異なる通貨建てである場合に、そのグループの特定の経済状況を反映すべきである。そのため、参加保険会社及び再保険会社、保険持株会社又は複合金融持株会社は、連結グループソルベンシー資本要件の通貨リスクが標準式に基づいて計算される場合、連結勘定の準備に使用された参照通貨以外の参照通貨を選択することができる。その選択は、グループの技術的準備金の重要な金額又は自己資本が表示される通貨などの客観的基準に基づいて行われるべきである。



(37)損害保険料及び準備金リスクサブモジュール、健康保険料及び準備金リスクサブモジュール、及び自然カタストロフィリスクサブモジュールの標準的な計算式は、保険料引当金及び支払備金に関する最近の経験的証拠を反映するように改正する必要がある。



(38)大量事故及び事故集中のための資本要件の複雑さの計算は、健康保険を提供する会社が曝されているリスクの性質、規模及び複雑さに比例していなければならない。従って、事故に起因する10年間続く障害に関するイベントタイプは、もはやこの計算から除外されるべきではない。



(39)委任規則(EU)2015/35には、間違った内部相互参照などのいくつかの誤植が含まれているがこれを改正する必要がある。



(40)損害保険市場における混乱を回避するために、特に一事業部門のみを運営する保険及び再保険会社については、保険及び再保険会社が損害保険及び健康保険の保険料及び責任準備金リスク・モジュールの計算における変更を準備するのに十分な時間を与えるべきである。従って、これらの変更は2020年1月1日より前に適用されるべきではない。



(41)従って、委任規則(EU)2015/35はそれに従って改正されるべきである。

 





4―まとめ

ここまで、今回のレポートでは、欧州委員会が、EIOPAからの助言セットの提出を受けて、ソルベンシーIIのレビューに関する検討を進めてきた結果としての「ソルベンシーII規則改正案」について、その具体的内容等を報告してきた。



2―3|今回の欧州委員会によるソルベンシーII規則改正案のポイント」で述べたように、今回の欧州委員会によるソルベンシーII規則改正案では、欧州委員会での検討を踏まえて、EIOPAの助言からの若干の改正が行われている。保険業界の大きな関心の的となっていた問題については、リスクマージンの問題はEIOPAの提案通り、金利リスクの見直しは保険業界の要望を受け入れてEIOPAの提案を却下等と、監督当局と保険業界の双方の意見を一定程度踏まえたドラフトとなっている。



今回の欧州委員会からの改正ドラフトの提案を受けて、Insurance Europe等の保険関係団体がどのような反応を示すのかは現段階では不透明だが、いずれにしてもこれらのフィードバックを踏まえて、最終案の策定が行われていくことになる。



因みに、EIOPAのGabriel Bernardino会長は、11月20日にフランクフルトで開催された第8回年次総会(8th Annual Conference)におけるオープニング基調演説において、今回の欧州委員会によるソルベンシーII規則改正案について触れて、「我々は、欧州委員会が委任法のドラフトにおいて、我々の助言の大部分を考慮したことを喜んでいる。それにもかかわらず、私は金利リスクの取扱の見直しを検討することを延期することを残念に思う。そのような状況において、私は、株式リスクとリスクマージンの取扱のような他の分野に関する同様の決定が行われることを期待している。2020年のレビューに関して、EIOPAは改革ではなく進化を信じている。」と述べた。



このように、今回の欧州委員会によるソルベンシーII規則改正案の中に含まれなかったリスクマージンや金利リスクの見直しについては、いずれにしても2020年のソルベンシーIIの全体的な見直しの中では検討されていくことになり、それが大変重要な課題になってくることになる。



ソルベンシーIIの改正を巡る動きについては、グローバルベースで資本規制の見直しが重要な課題になっている中で、世界各国の保険監督当局や保険会社等の保険関係者が注目している。その意味において、今回の欧州委員会によるソルベンシーII規則改正案に対する保険業界の反応及びそれを受けての欧州委員会の動き等については、大変関心が高いものであることから、今後も引き続き注視していくこととしたい。





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