医療保険制度の保険料はどうやって決まるの?

医療保険制度の保険料はどうやって決まるの?: ■要旨



公的医療保険の保険料は、全員が同じというわけではなく、保険主体である保険者毎に異なっています。



保険料の決定方法についても、保険者毎に異なっています。



健康保険や共済組合等の職域保険においては、基本的には被保険者の報酬(給料)や賞与(ボーナスなど)の額等の所得に応じて定められています。ここで、毎月の保険料は「標準報酬月額」に対する割合、賞与などの保険料は「標準賞与額」に対する割合という形で決められます。この割合を「保険料率」と呼んでいます。この保険料率が保険者毎に異なっていることにより、各医療保険制度に加入する被保険者の負担が(仮に、同じ所得水準等であっても)異なってくることになります。



ここで、保険料の計算の基礎となる報酬(給料)には、基本給のほか、残業手当なども含まれています。しかし、私たちの報酬は人により千差万別であるため、個々人の報酬の実額に基づいて、毎月の保険料を計算することになると、大変面倒なことになります。そのため、「標準報酬月額」という概念を用いて、各人の実際の報酬をそれに当てはめて、簡単に保険料の計算ができるようにしています。「標準報酬月額」は、平成30年度においては、最低5万8,000円から最高139万円まで、50等級に区分されています。



また、国民健康保険等の地域保険においては、所得に応じて定められる額に加えて、被保険者毎に定額の保険料が徴収されることになります。



なお、職域保険の場合、保険料は、被保険者だけでなく、事業主がその半分以上を負担する形になっています。



■目次



1―公的医療保険の保険料設定の概要

2―健康保険(一般被用者保険)の保険料

  1|組合管掌健康保険(組合健保) 

  2|全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)

3―共済組合等(特定被用者保険)の保険料

4―地域保険の保険料

  1|国民健康保険(市町村国保)

  2|国民健康保険組合(国保組合)

5―後期高齢者医療制度の保険料

6―まとめ公的医療保険の保険料は、全員が同じというわけではなく、保険主体である保険者毎に異なっています。



保険料の決定方法についても、保険者毎に異なっています。



健康保険や共済組合等の職域保険においては、基本的には被保険者の報酬(給料)や賞与(ボーナスなど)の額等の所得に応じて定められています。ここで、毎月の保険料は「標準報酬月額」に対する割合、賞与などの保険料は「標準賞与額」に対する割合という形で決められます。この割合を「保険料率」と呼んでいます。この保険料率が保険者毎に異なっていることにより、各医療保険制度に加入する被保険者の負担が(仮に、同じ所得水準等であっても)異なってくることになります。



ここで、保険料の計算の基礎となる報酬(給料)には、基本給のほか、残業手当なども含まれています。しかし、私たちの報酬は人により千差万別であるため、個々人の報酬の実額に基づいて、毎月の保険料を計算することになると、大変面倒なことになります。そのため、「標準報酬月額」という概念を用いて、各人の実際の報酬をそれに当てはめて、簡単に保険料の計算ができるようにしています。「標準報酬月額」は、平成30年度においては、最低5万8,000円から最高139万円まで、50等級に区分されています。



また、国民健康保険等の地域保険においては、所得に応じて定められる額に加えて、被保険者毎に定額の保険料が徴収されることになります。



なお、職域保険の場合、保険料は、被保険者だけでなく、事業主がその半分以上を負担する形になっています。



以下では、医療保険制度の種類毎にその保険料の決定方法についての概要を説明します1。なお、各医療保険制度の概要については、基礎研レター「医療保険制度にはどんな種類があるの?」(2018.4.23)を参照して下さい。



 




1 保険者を通じては、医療保険に加えて、介護保険の保険料も一緒に徴収されますが、ここではあくまでも医療保険の保険料について述べています。
 





2―健康保険(一般被用者保険)の保険料

健康保険は、いわゆるサラリーマンとして民間企業に勤めている人とその家族が加入する医療保険制度です。これには、(1)組合管掌健康保険(組合健保)、(2)全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)、の2種類がありますが、それぞれについての保険料の設定等は、以下の通りとなっています。

 1|組合管掌健康保険(組合健保) 

組合管掌健康保険には、主に大企業が単独で設立している「単一型健康保険組合」と、業界単位で複数の企業が共同して設立される「総合型健康保険組合」があります2



企業単独の単一型健康保険組合でも、複数の企業による総合型健康保険組合でも、一定の範囲内で、それぞれの組合の財政状況等に応じて、保険料率を自主的に設定することができます(現在、健康保険法の規定により、保険料率は3%から13%までの範囲内と定められています)。



なお、保険料率の設定区分には上限がありますが、この金額は、年金の場合よりも低く設定されています。



また、保険料の負担については、労使の折半(即ち、被保険者と事業主がそれぞれ12)という選択肢だけではなく、事業主側がより多く負担することも可能です。



従って、保険料率や被保険者と事業主の負担の割合等については、組合健保毎に異なっています。



実際に、単一型健康保険組合の場合には、各健康保険組合の被保険者の年齢・性別構成等も反映された財政状況等によって、保険料率及び被保険者と事業主の負担の割合の双方とも、健保組合毎に比較的大きな差異が見られます。また、単一型健康保険組合の多くにおいて、事業主が折半を超える負担を行っています。



具体的には、各組合健保のHPで公開されている情報に基づくと、例えば、自動車・保険・商社業界からの10社の健康保険組合の例は、以下の通りとなっております。これに比べて、総合型健康保険組合の場合には、相対的に保険料率の分布の幅は小さく、また保険料率の負担も労使折半としている場合が殆どで、事業主負担の割合が大きい健保組合は比較的限定されています。



 




2 健康保険法等には「単一型」、「総合型」という表現はなく、「単一」、「総合」といった言い方もします。
2|全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ) 

「協会けんぽ」の医療保険の保険料率は、日本全国一律と言うわけではなく、全国健康保険協会が、都道府県毎に必要な医療費等に基づいて、都道府県毎に設定しています。ただし、都道府県毎の保険料率の設定に際しては、地域間の医療費や所得水準の違いがそのまま反映されるのではなく、連帯の観点から、年齢構成の違いに伴う医療費の差や所得水準の違いは都道府県間で相互に調整した上で、保険料率を設定することとなっています。



都道府県毎の保険料率及び保険料額表については、全国健康保険協会(協会けんぽ)のWebサイト3から入手することができます。



これによれば、例えば、「平成30年度都道府県単位保険料率」は、以下の図表の通りとなっています。



このように、保険料率は都道府県毎に異なっていますが、保険料率の範囲は、平成30年度の例では、新潟県の9.63%から佐賀県の10.61%までと、1%程度となっています。また、全国平均は10%程度となっています。なお、保険料の負担は労使折半となっています。



 




3 平成30年度保険料率(平成30年4月分から)


   https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/sb3130/h30/300209


平成30年度保険料額表(平成30年4月分から)https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/sb3150/h30/h30ryougakuhyou4gatukara
特定被用者保険とは、公務員、私立学校の教職員、船員を対象とした医療保険です。制度の歴史や海上での保障という特殊性等を考慮して、一般被用者保険とは異なる制度となっています。



これには、(1)国家公務員共済組合、(2)地方公務員共済組合、(3)私立学校教職員共済制度、(4)船員保険、がありますが、それぞれの保険料の決定は、基本的には同様で、以下の通りとなっています。



まずは、保険料率については、各共済組合が独自に設定することができます。従って、例えば、地方公務員共済組合でも、都道府県毎に保険料率は異なっています。



また、保険料の負担については、基本的に労使折半となっていますが、例えば、船員保険については、被保険者負担分の保険料率の軽減がなされており、船舶所有者負担分が高くなっています。

 



4―地域保険の保険料

地域保険は、自営業者、農林水産業者、無職者等被用者保険に加入していない人を対象としています。



これには、(1)国民健康保険(市町村国保)、(2)国民健康保険組合(国保組合)、の2種類があります。1|国民健康保険(市町村国保) 

国民健康保険(市町村国保) の保険料は、市区町村によって異なっています



また、その算定方法についても、所得に比例した保険料率に基づく「所得割」だけでなく、「均等割」と併せて、保険料が算出されます。さらには、市区町村によっては、「資産割」(保有資産にかかる)や、「平等割」(世帯ごとにかかる)が加算される場合もあります。



(1)所得割

基礎控除後の所得金額に対して、市区町村が決定した割合を掛けて算出します。



(2)均等割

1つの世帯内で国保加入者1人当たりに賦課されます。



(3)平等割

国保加入者が1人以上いる世帯に対して賦課されます。市区町村によっては賦課しない場合もあります。



(4)資産割

固定資産税の課税対象者にかかる部分で、市区町村が決定した割合を年間の固定資産税に乗じて算出します。近年は資産割を廃止する市区町村が増えています。2|国民健康保険組合(国保組合) 

国民健康保険組合(国保組合)の保険料や算定方法も、組合毎に異なっています



その算定方法は、国民健康保険(市町村国保)の保険料の算定で用いられている所得割均等割の考え方を採用しています。



多くの場合、国民健康保険組合(国保組合)の保険料率の方が、国民健康保険(市町村国保) に比べて低くなっていますが、基礎研レター「医療保険制度にはどんな種類があるの?」(2018.4.23)で述べた通り、国民健康保険組合(国保組合)がある業種は限られています。

 



5―後期高齢者医療制度の保険料

国民健康保険(市町村国保)では、運営する市区町村毎に設定されるのに対して、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度では、都道府県毎の後期高齢者医療広域連合毎に設定されます



後期高齢者医療制度の保険料については、「均等割」と「所得割」の合計で算出されます。均等割額や所得割率は各都道府県の医療費の水準や加入者の状況、財政的な負担能力等に応じて、広域連合毎に異なっています。2年毎に各広域連合が設定し、同じ広域連合では、市区町村に関わらず、均一となります。



なお、保険料額には上限が定められるとともに、所得の低い世帯には均等割額が所得に応じて7割(ただし、特例措置4により、現在は9割、8.5割)、5割、2割のいずれかの割合で軽減されます。



具体的には、例えば、夫婦二人世帯で妻の年金収入80万円以下の場合、夫の年金収入額に応じて、保険料額は、以下の通りとなっています(平成30年度、平成31年度全国平均保険料率)。因みに、平成30年度、平成31年度の都道府県(広域連合)別の均等割額及び所得割率は、次ページの図表の通りとなっています。



均等割額は、36,900円から56,085円、所得割率は、7.36%から11.42%と、都道府県(広域連合)毎に、かなり大きな差異が見られています。 



 




4 なお、厚生労働省は、この保険料の特例措置を2019年10月から、段階的に廃止していくことを検討しているようです。
 





6―まとめ

以上、ここまで述べてきたように、医療保険制度の種類毎にその保険料の決定方法や実際の保険料率等はかなり異なっています。また、地域保険や後期高齢者医療制度では、お住まいの地域によって、仮に同じ所得水準等であっても、保険料額は大きく異なってくることになります。



ご自身の加入する医療保険制度の保険料率等について、今一度ご確認してみることも大事だと思われます。





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