竜間の郷 栄養改善の重要性を在宅へつなぐ
竜間の郷 栄養改善の重要性を在宅へつなぐ:
18年度介護報酬改定では栄養や嚥下機能向上が重視され、新規加算として「低栄養リスク改善加算」が新設されたが「算定が困難である」「加算額が割に合わない」などの声も多い。そうした中、在宅復帰や在宅療養支援機能も高いレベルにあるなどの要件を満たし、今般の介護報酬改定で超在宅強化型老健に移行した「介護老人保健施設竜間之郷」(大阪府大東市、大河内二郎施設長)は、栄養関係加算の実績も伴う。同施設栄養課の辻本美香課長は、加算算定のため「施設全体および在宅復帰後を支える家族に栄養の重要性を認識してもらう取組みが重要」と強調する。
栄養関連加算低調の背景
今回の介護報酬改定では、栄養に関する新設加算も設定されるなど栄養改善に取り組む姿勢がより鮮明になった。しかしながら、介護施設で新設の栄養関連の加算算定は低調。背景には多職種連携が必要であることや、定期的な会議の開催などの手間のほか、「低栄養リスク改善加算」の場合、経口移行加算または経口維持加算や褥瘡マネジメント加算を算定している場合は併算定できないことから、そもそもの対象者が少ないことなどが挙げられる。
組織の意識向上のために
そうした中、「介護老人保健施設竜間之郷」では平均して3~4件の低栄養リスク改善加算を算定している。管理栄養士の辻本美香課長は「定期的なアルブミン値測定など丁寧なスクリーニングをすれば、数は限られても必ず対象者はいる。在宅復帰を目指す本人や家族の意向があるのなら、栄養改善が欠かせないのは言うまでもない」と強調する。
「栄養に関する関心の高まりの中で、施設での栄養士の業務は多忙を極める。ただ、そのことをもって栄養関連の加算算定をしないのは本末転倒」と、栄養改善への評価の流れを栄養士という専門職の評価につなげるように、組織の中心で、周囲を巻き込む栄養士の働きぶりが試されていると辻本氏は話す。
経口関連加算との関係
同施設では、現在、低栄養リスク加算3~4件に対して、経口移行加算または経口維持加算算定をする入所者は19件程度。「両方を行ったり来たりする入所者も多い」と説明する。一般に、低栄養と誤嚥リスクの両方が同時にある入所者の場合、誤嚥性肺炎など重篤な症状の恐れがあることへの対処が優先されるため、経口関連の加算算定をし、改善後に低栄養への対応に移ることになる。
「一般論として、在宅復帰後を支える家族もそうだが、介護施設関係者の間にも栄養に関する重要性の認識が低いように思われる。そうした中で、周囲に対して栄養への関心を高めるのが栄養士の役割」と辻本氏は話す。
多職種連携がしやすいツールづくり
また、組織として栄養に関する取組みをするようになれば「多職種のそれぞれがどのような役割を果たすべきか」「どのような状態になれば、どのような対応を検討するべきか」など、管理栄養士の頭の中をある程度共有できるようにルール化したフローチャートを作成した(図)。「栄養計算は栄養士である私の業務としても、それ以外の対応については、介護職でもある程度対応できる状況になった」と効果を説明する。
関心高まる栄養加算算定
最近では「加算算定はどのようにすればよいのか」など、同市内や周辺施設の栄養士からの問い合わせも多く、栄養士自身も施設組織の栄養に関する認識共有に迷う状況にあるのではないかと辻本氏は分析する。
さらに「多職種連携が重要であることは言うまでもないが、ミールラウンドの時に相談員を同行させているのも当施設の特徴と考える。それは、施設から在宅に帰った後の生活との調整をする上で、栄養に関する両方の橋渡しとなることを期待するからだ。私は急性期や慢性期などを含め多くの職場を渡り歩いてきました。現在では法人の在宅部門も含めて150人の栄養状態を一人で管理している。大変ではあるがやり甲斐もあります」と、施設での栄養ケアの本気度合いを、在宅までつなぐことも含めて、栄養士の役割を説明する。
低栄養リスク改善加算
(1月につき300単位(計画作成月から6月以内)
①低栄養状態またはそのおそれのある入所者に対して、医師、歯科医師、管理栄養士、看護師、ケアマジャーその他の職種の者が共同して、入所者の栄養管理をするための会議を行い、入所者ごとに低栄養状態の改善等を行うための栄養管理方法等を示した計画を作成
②計画に従い、医師または歯科医師の指示を受けた管理栄養士または栄養士が、栄養管理を実施
③計画に基づき、管理栄養士または栄養士が行う栄養管理が、当該計画の作成日から起算し6月を超えた期間に行われた場合であっても、低栄養状態の改善等が可能な入所者であって、医師の指示に基づき継続して栄養管理が必要とされるものに対しては、引き続き算定できる
※栄養マネジメント加算を算定していない場合は算定しない。
※経口移行加算または経口維持加算を算定している場合は算定しない。
留意事項(抜粋)
①「入所者の栄養管理をするための会議」は月1回以上とする。
②当該計画に基づき、管理栄養士等は対象となる入所者に対して食事の観察を週5回以上行う。6月を超えて同加算を算定する場合は、医師または歯科医師の指示は概ね2週ごとに受ける。
③褥瘡を有する場合であって、褥瘡マネジメント加算を算定している場合は算定できない。
18年度介護報酬改定では栄養や嚥下機能向上が重視され、新規加算として「低栄養リスク改善加算」が新設されたが「算定が困難である」「加算額が割に合わない」などの声も多い。そうした中、在宅復帰や在宅療養支援機能も高いレベルにあるなどの要件を満たし、今般の介護報酬改定で超在宅強化型老健に移行した「介護老人保健施設竜間之郷」(大阪府大東市、大河内二郎施設長)は、栄養関係加算の実績も伴う。同施設栄養課の辻本美香課長は、加算算定のため「施設全体および在宅復帰後を支える家族に栄養の重要性を認識してもらう取組みが重要」と強調する。
栄養関連加算低調の背景
今回の介護報酬改定では、栄養に関する新設加算も設定されるなど栄養改善に取り組む姿勢がより鮮明になった。しかしながら、介護施設で新設の栄養関連の加算算定は低調。背景には多職種連携が必要であることや、定期的な会議の開催などの手間のほか、「低栄養リスク改善加算」の場合、経口移行加算または経口維持加算や褥瘡マネジメント加算を算定している場合は併算定できないことから、そもそもの対象者が少ないことなどが挙げられる。
組織の意識向上のために
そうした中、「介護老人保健施設竜間之郷」では平均して3~4件の低栄養リスク改善加算を算定している。管理栄養士の辻本美香課長は「定期的なアルブミン値測定など丁寧なスクリーニングをすれば、数は限られても必ず対象者はいる。在宅復帰を目指す本人や家族の意向があるのなら、栄養改善が欠かせないのは言うまでもない」と強調する。
「栄養に関する関心の高まりの中で、施設での栄養士の業務は多忙を極める。ただ、そのことをもって栄養関連の加算算定をしないのは本末転倒」と、栄養改善への評価の流れを栄養士という専門職の評価につなげるように、組織の中心で、周囲を巻き込む栄養士の働きぶりが試されていると辻本氏は話す。
経口関連加算との関係
同施設では、現在、低栄養リスク加算3~4件に対して、経口移行加算または経口維持加算算定をする入所者は19件程度。「両方を行ったり来たりする入所者も多い」と説明する。一般に、低栄養と誤嚥リスクの両方が同時にある入所者の場合、誤嚥性肺炎など重篤な症状の恐れがあることへの対処が優先されるため、経口関連の加算算定をし、改善後に低栄養への対応に移ることになる。
「一般論として、在宅復帰後を支える家族もそうだが、介護施設関係者の間にも栄養に関する重要性の認識が低いように思われる。そうした中で、周囲に対して栄養への関心を高めるのが栄養士の役割」と辻本氏は話す。
多職種連携がしやすいツールづくり
同施設では大河内二郎施設長(全国老人保健施設協会常務理事)が栄養に関する理解者で「医師に依頼して血中アルブミンの評価をお願いしても、すぐに対応いただける恵まれた環境。トップの理解を得て、管理栄養士として働きやすい環境」と辻本氏。
また、組織として栄養に関する取組みをするようになれば「多職種のそれぞれがどのような役割を果たすべきか」「どのような状態になれば、どのような対応を検討するべきか」など、管理栄養士の頭の中をある程度共有できるようにルール化したフローチャートを作成した(図)。「栄養計算は栄養士である私の業務としても、それ以外の対応については、介護職でもある程度対応できる状況になった」と効果を説明する。
関心高まる栄養加算算定
最近では「加算算定はどのようにすればよいのか」など、同市内や周辺施設の栄養士からの問い合わせも多く、栄養士自身も施設組織の栄養に関する認識共有に迷う状況にあるのではないかと辻本氏は分析する。
さらに「多職種連携が重要であることは言うまでもないが、ミールラウンドの時に相談員を同行させているのも当施設の特徴と考える。それは、施設から在宅に帰った後の生活との調整をする上で、栄養に関する両方の橋渡しとなることを期待するからだ。私は急性期や慢性期などを含め多くの職場を渡り歩いてきました。現在では法人の在宅部門も含めて150人の栄養状態を一人で管理している。大変ではあるがやり甲斐もあります」と、施設での栄養ケアの本気度合いを、在宅までつなぐことも含めて、栄養士の役割を説明する。
低栄養リスク改善加算
(1月につき300単位(計画作成月から6月以内)
①低栄養状態またはそのおそれのある入所者に対して、医師、歯科医師、管理栄養士、看護師、ケアマジャーその他の職種の者が共同して、入所者の栄養管理をするための会議を行い、入所者ごとに低栄養状態の改善等を行うための栄養管理方法等を示した計画を作成
②計画に従い、医師または歯科医師の指示を受けた管理栄養士または栄養士が、栄養管理を実施
③計画に基づき、管理栄養士または栄養士が行う栄養管理が、当該計画の作成日から起算し6月を超えた期間に行われた場合であっても、低栄養状態の改善等が可能な入所者であって、医師の指示に基づき継続して栄養管理が必要とされるものに対しては、引き続き算定できる
※栄養マネジメント加算を算定していない場合は算定しない。
※経口移行加算または経口維持加算を算定している場合は算定しない。
留意事項(抜粋)
①「入所者の栄養管理をするための会議」は月1回以上とする。
②当該計画に基づき、管理栄養士等は対象となる入所者に対して食事の観察を週5回以上行う。6月を超えて同加算を算定する場合は、医師または歯科医師の指示は概ね2週ごとに受ける。
③褥瘡を有する場合であって、褥瘡マネジメント加算を算定している場合は算定できない。
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