65歳の人が、今後“健康”でいられる期間は?~人生100年時代は、「健康寿命」ではなく「健康余命」で考える~

65歳の人が、今後“健康”でいられる期間は?~人生100年時代は、「健康寿命」ではなく「健康余命」で考える~: ■要旨



日本は諸外国と比べても、寿命が長い国の1つであり、今なお、平均寿命は延び続けている。しかし、“健康”で長生きすることが多くの人の願いであり、最近では、「健康寿命」への関心の方が強い。



現在、一般的に使われている「健康寿命」は国の定義によるもので、0歳児が今後、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間を示している。ただし、「健康寿命」が気になりだすのは、中高年以上であることから、0歳の「健康寿命」では実感がつかみにくいと思われる。



そこで、本稿では、65歳時点の「健康余命」について紹介する。



■目次



1――「余命」は、「寿命 ‐ 年齢」より長い

  1|男性/女性の寿命は80.98/87.14歳。

    65歳の男性/女性の余命は19.55/24.38年。

  2|男性/女性の健康寿命は72.14/74.79年。

    65歳の男性/女性の健康余命は14.09/16.15年。

  3|65歳の健康余命は延伸。平均余命との差は横ばい。

2――“不健康期間”とは、“介護を必要とする期間”ではない

3――では、“介護を必要とする平均期間”は?

4――正しい定義を知って、適切に準備するために使う1|男性/女性の寿命は80.98/87.14歳。65歳の男性/女性の余命は19.55/24.38年。

2017年の平均寿命1は、男性80.98歳/女性87.14歳だった。では、65歳の人が、今後、生きる平均的な期間は?というと、「平均寿命‐年齢(男性15.98年/女性22.14年)」ではない。65歳の人の平均余命は、男性19.55年/女性24.38年で、「平均寿命‐年齢」より2~3年長い(図表1)。



これは、平均寿命(=0歳児の余命)が65歳未満で亡くなる人の寿命を含んだ平均であるのに対し、65歳の平均余命は65歳まで生きた人のみで計算した平均だからだ。



その結果、65歳の人は平均で男性84.55歳、女性89.38歳まで生きる計算になる。



 




1 厚生労働省「平成29年簡易生命表」より
2|男性/女性の健康寿命は72.14/74.79年。65歳の男性/女性の健康余命は14.09/16.15年。

次に、2016年の健康寿命(厚生労働省の定義による。詳細は後述。)は、男性72.14/女性74.79年だった2。では、65歳の人が、今後健康でいられる平均的な期間は?というと、やはり「健康寿命-年齢(男性7.14/女性9.79年)」ではない。今後、健康でいられる平均的な期間を“健康余命”とすると、65歳の人の健康余命は男性14.09/女性16.15年であり、「健康寿命‐年齢」と比べて2倍近くもの差がある(図表1)。



これは、健康寿命(=0歳児の健康余命)が65歳未満の不健康な期間も差し引いて計算しているのに対し、65歳の平均健康余命は65歳以降の不健康な期間のみを差し引いているからだ。厚生労働省の「健康寿命」の定義によれば、“不健康”とは、「健康上の問題で日常生活に支障がある」状態を指す。若い時にも“不健康”な期間はあるし、いったん“不健康”になっても、また“健康”になることもある。



したがって、65歳の人は、平均すると、あと男性19.55/女性24.38年間生きて、そのうち合計で男性14.09/女性16.15年間は“健康”なのだ。余命から健康余命を引いて、65歳以降の“不健康な期間”を計算すると、平均で男性5.46/女性8.23年となる。



高齢期になれば、人生100年時代の生涯設計は、「寿命‐年齢」ではなく、「余命」で考える方が適当だろう。平均寿命を目安に老後の生活のための資産形成をするのでは不十分である可能性があるし、健康でいられる期間を見誤って悲観的になりすぎるはもったいない。



 




2 第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会資料より
3|65歳の健康余命は延伸。平均余命との差は横ばい。

2001年以降の65歳時点の平均余命と健康余命の推移を見ると、いずれも延伸している(図表2)。その差は、2010年以降、男女ともどちらかと言えば縮小しているが、調査年による差が大きく、大きな改善はない。近年、健康寿命の延伸を目的とする健康政策が実施されているが、その成果はまだはっきりとは見えていない。

2――“不健康期間”とは、“介護を必要とする期間”ではない

「健康寿命」の概念は直感的にわかりやすいため、頻繁に使われるが、計算の定義が曖昧なまま数字が独り歩きをしてしまっているきらいがある。



 “不健康期間”が、介護を必要とする期間であると誤解されていることもあるが、これも間違っている。現在、一般的に使われている「健康寿命」は厚生労働省の基準によるもので、ここで言う“健康”とは、「健康上の問題で日常生活に影響がない」ことを言う3。「日常生活」とは、たとえば「日常生活の動作(起床、衣服着脱、食事、入浴など)」、「外出(時間や作業量などが制限される)」、「仕事、家事、学業(時間や作業量などが制限される)」、「運動(スポーツを含む)」等、幅広い。



上述のとおり、この定義による“不健康”な期間は、介護を必要とする期間を指しているのではなく、若い時にも断続的にあり得るもので、人生の末期にまとまって訪れるわけでもない。

 




3 計算には、3年に1回実施される「国民生活基礎調査(大規模調査)」の「健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という問に対する回答が使われる。
 





3――では、“介護を必要とする平均期間”は?

介護を必要とする平均期間として、公的介護保険制度の要介護2以上と認定されている期間を“要介護期間”として、“平均要介護期間”が計算されることがある。



厚生労働省「介護給付費実態調査」の結果を使って、2016年の“平均要介護期間(要介護2以上と認定されている期間)”を計算すると、図表4のとおり、65歳時点で、男性1.67/女性3.47年と計算された。

4――正しい定義を知って、適切に準備するために使う

「健康寿命」という言葉は、高齢期における健康や生活に不安を感じている中、直感的にわかりやすい言葉であることなどから頻繁に使われるようになったと思われる。しかし、“健康寿命”と“健康余命”の違いや、どういった状態を“不健康”としていて、計算された“健康な期間”“不健康期間”をどのように解釈するのかは、必ずしも広くは認知されてはいない。



この計算は、もともとは都道府県による健康格差を縮小することを目的として、保健医療に関する取り組みの計画や評価のために行われた。したがって、同様の条件で計算し、諸外国や都道府県、時系列で比較するのに適している。



個人の生涯設計に適用するとすれば、“健康余命”と“健康寿命-年齢”には大きな差があり、特に高齢期においては“健康余命”で考えるのが適当だということだろう。また、ここで計算しているのは平均であり、不健康な期間には幅があるため、人によって異なることも考慮しておく必要がありそうだ。



“不健康な期間”について過剰な不安や拒絶感をもつのではなく、“健康余命”の長さを過少評価することなく、計算の前提を理解し、適切に健康増進に向けた生活を送ることや資産の形成を含めた生涯設計を進めることが大切だろう。





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