宝くじを全部買ったら儲かるか?-実際にアメリカで起きた出来事をみてみると…
宝くじを全部買ったら儲かるか?-実際にアメリカで起きた出来事をみてみると…: 宝くじは、射幸心をあおるものだ。最初は小さな楽しみで始めた宝くじに、いつの間にか、どっぷりとのめりこんでしまい、多額の資金を費やしてしまう。そんな話には、ことかかない。だが、どれだけ買っても大きく儲けることは簡単ではない。そこで、くじを「全部買い」した場合、どのくらい損得が出るのか。数字選択式宝くじをもとに、みてみたい。
数字選択式宝くじは、一定範囲の数字の中から、くじの購入者が所定の個数だけ数字を選び、それが全部当たりだったら1等に当せんするというものだ。抽せんは、毎週行われている。現在、「ロト7」、「ロト6」、「ミニロト」、「ビンゴ5」、「ナンバーズ3」「ナンバーズ4」といったくじが販売されている。
このうち、ロト7とロト6には、キャリーオーバーという仕組みがある。これは、当せん者がいない等級の当せん金総額、および1口あたりの当せん金があらかじめ定められた最高額を超えた場合の超過額を、次回の1等当せん金に繰り越す制度を指す。キャリーオーバーが発生している回の1等当せん者は、その回の1等当せん金に加えて、キャリーオーバーの金額も当せん金として受け取ることができる。ただし、キャリーオーバーも含めて1等の当せん金には上限が決められている。
1等当せん金の大きい、ロト7に注目してみよう。ロト7は、1口300円。購入者は、1から37までの数字の中から7つを選ぶ。選んだ7つの数字が、当たりの数字といくつ一致しているかによって、1等~6等の当せんが決まる。当たりの数字は、7つの本数字のほかに、2つのボーナス数字がある。1等は、選んだ7つの数字が、7つの本数字にピタリと当たった場合に当せんとなる。
1等の当せん確率はどれくらいだろうか。それには、37個の数字から7つを選ぶ方法が何通りあるか、計算する必要がある。高校の数学で出てきた組み合わせの数だ。37×36×35×34×33×32×31を、7×6×5×4×3×2×1で割り算して、1,029万5,472通りとなる。なんと、1,000万通り以上もある。このうち1等は、1つだけ。1等の当せん確率は1,000万分の1より小さい。そう簡単には当たらない。
そこで、こんなことを考えてみる。「1,000万通り以上ある宝くじを全部買ってしまえば、絶対に1等が当たるはずだ。宝くじの全部買いをしたら、確実に儲けることができるのではないだろうか?」この考えを深めるために、ロト7の内容を、もう少し詳しくまとめたのがつぎの表だ。ここで、当せん金額は、理論上のものである点に注意が必要だ。実際の当せん金額は、各回の発売総額と当せん口数によって変動する。また、1等の理論上の当せん金額は6億円となっているが、キャリーオーバーが発生しているときは、最高で10億円まで当せん金額が引き上げられることがある。
それでは、このロト7を全部買うとどうなるか、支払総額と理論上の受取額を計算してみよう。
まず、どれだけの資金が必要だろうか。1口300円だから、300円×1,029万5,472通りで、30億8,864万1,600円が必要となる。30億円以上もの大金だが、なんとかこの資金を捻出できたとしよう。
つぎに、全部のくじを買ったときにいくら受け取れるだろうか。1等~6等のそれぞれについて、当せんの口数と理論上の当せん金額を掛け算して、それを合計する。すると、13億6,920万6,900円となる。つまり、約30.9億円支払って、約13.7億円受け取る。17億円以上も損失が発生してしまう。キャリーオーバーで、1等当せん金額が10億円になっていた場合はどうか。受取額は約17.7億円となるが、それでも13億円以上の損失となる。やはり、濡れ手で粟をつかむような話は転がっていない。
実はかつて、アメリカの宝くじで、全部買いに関する有名な出来事があった。1990年代、バージニア州では、1口1ドルの数字選択式宝くじを販売していた。この宝くじは、購入者が1から44までの数字から6つを選び、すべて当たりの数字と一致していたら、1等となるものだった。全部買いには、約700万通り、すなわち約700万ドル分のくじの購入が必要となるが、この規模であればなんとか実行可能とみられた。この点に目をつけて、宝くじ購入のファンドが結成された。このファンドは、世界中の2,500人以上の人々から資金を募った。そして、キャリーオーバーが積み重なる機会を待った。
1992年2月に、2,700万ドルのキャリーオーバーが発生した段階で、ついに、このファンドは全部買いに動いた。短い販売期間中、ファンドに雇われた購入者が手分けをして、125もの宝くじ売り場(食品雑貨店、コンビニエンスストア等)で、別々の番号のくじを購入していった。ところが、購入途中で、売り場のくじが売り切れとなるトラブルが発生して、約500万通りしか購入できなかった。もし、購入していないくじから1等の当せんが出たら大失敗だ。また、別の大きなリスクとして、1等のくじが複数出てしまう可能性もあった。そうなれば、1等を当てても当せん金は大きく目減りしてしまう。
しかし幸運にも、購入した宝くじの中から1等の番号が出て、しかも1等の宝くじはその1枚だけだった。ファンドは、1等当せん金として2,700万ドル、2等や3等なども合わせて総額3,000万ドル以上を受け取った。なお現在は、数字選択のパターン数が増えており全部買いは困難といわれている。
宝くじを買うときには、全部買いなどという突拍子もないことは考えずに、ささやかにココロの刺激を楽しむ程度がいいのではないかと思われるが、いかがだろうか。
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数字選択式宝くじは、一定範囲の数字の中から、くじの購入者が所定の個数だけ数字を選び、それが全部当たりだったら1等に当せんするというものだ。抽せんは、毎週行われている。現在、「ロト7」、「ロト6」、「ミニロト」、「ビンゴ5」、「ナンバーズ3」「ナンバーズ4」といったくじが販売されている。
このうち、ロト7とロト6には、キャリーオーバーという仕組みがある。これは、当せん者がいない等級の当せん金総額、および1口あたりの当せん金があらかじめ定められた最高額を超えた場合の超過額を、次回の1等当せん金に繰り越す制度を指す。キャリーオーバーが発生している回の1等当せん者は、その回の1等当せん金に加えて、キャリーオーバーの金額も当せん金として受け取ることができる。ただし、キャリーオーバーも含めて1等の当せん金には上限が決められている。
1等当せん金の大きい、ロト7に注目してみよう。ロト7は、1口300円。購入者は、1から37までの数字の中から7つを選ぶ。選んだ7つの数字が、当たりの数字といくつ一致しているかによって、1等~6等の当せんが決まる。当たりの数字は、7つの本数字のほかに、2つのボーナス数字がある。1等は、選んだ7つの数字が、7つの本数字にピタリと当たった場合に当せんとなる。
1等の当せん確率はどれくらいだろうか。それには、37個の数字から7つを選ぶ方法が何通りあるか、計算する必要がある。高校の数学で出てきた組み合わせの数だ。37×36×35×34×33×32×31を、7×6×5×4×3×2×1で割り算して、1,029万5,472通りとなる。なんと、1,000万通り以上もある。このうち1等は、1つだけ。1等の当せん確率は1,000万分の1より小さい。そう簡単には当たらない。
そこで、こんなことを考えてみる。「1,000万通り以上ある宝くじを全部買ってしまえば、絶対に1等が当たるはずだ。宝くじの全部買いをしたら、確実に儲けることができるのではないだろうか?」この考えを深めるために、ロト7の内容を、もう少し詳しくまとめたのがつぎの表だ。ここで、当せん金額は、理論上のものである点に注意が必要だ。実際の当せん金額は、各回の発売総額と当せん口数によって変動する。また、1等の理論上の当せん金額は6億円となっているが、キャリーオーバーが発生しているときは、最高で10億円まで当せん金額が引き上げられることがある。
それでは、このロト7を全部買うとどうなるか、支払総額と理論上の受取額を計算してみよう。
まず、どれだけの資金が必要だろうか。1口300円だから、300円×1,029万5,472通りで、30億8,864万1,600円が必要となる。30億円以上もの大金だが、なんとかこの資金を捻出できたとしよう。
つぎに、全部のくじを買ったときにいくら受け取れるだろうか。1等~6等のそれぞれについて、当せんの口数と理論上の当せん金額を掛け算して、それを合計する。すると、13億6,920万6,900円となる。つまり、約30.9億円支払って、約13.7億円受け取る。17億円以上も損失が発生してしまう。キャリーオーバーで、1等当せん金額が10億円になっていた場合はどうか。受取額は約17.7億円となるが、それでも13億円以上の損失となる。やはり、濡れ手で粟をつかむような話は転がっていない。
実はかつて、アメリカの宝くじで、全部買いに関する有名な出来事があった。1990年代、バージニア州では、1口1ドルの数字選択式宝くじを販売していた。この宝くじは、購入者が1から44までの数字から6つを選び、すべて当たりの数字と一致していたら、1等となるものだった。全部買いには、約700万通り、すなわち約700万ドル分のくじの購入が必要となるが、この規模であればなんとか実行可能とみられた。この点に目をつけて、宝くじ購入のファンドが結成された。このファンドは、世界中の2,500人以上の人々から資金を募った。そして、キャリーオーバーが積み重なる機会を待った。
1992年2月に、2,700万ドルのキャリーオーバーが発生した段階で、ついに、このファンドは全部買いに動いた。短い販売期間中、ファンドに雇われた購入者が手分けをして、125もの宝くじ売り場(食品雑貨店、コンビニエンスストア等)で、別々の番号のくじを購入していった。ところが、購入途中で、売り場のくじが売り切れとなるトラブルが発生して、約500万通りしか購入できなかった。もし、購入していないくじから1等の当せんが出たら大失敗だ。また、別の大きなリスクとして、1等のくじが複数出てしまう可能性もあった。そうなれば、1等を当てても当せん金は大きく目減りしてしまう。
しかし幸運にも、購入した宝くじの中から1等の番号が出て、しかも1等の宝くじはその1枚だけだった。ファンドは、1等当せん金として2,700万ドル、2等や3等なども合わせて総額3,000万ドル以上を受け取った。なお現在は、数字選択のパターン数が増えており全部買いは困難といわれている。
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