【10月米雇用統計】雇用者数は前月比+25.0万人、時間当たり賃金が前年比+3.1%と全般的に良好な結果

【10月米雇用統計】雇用者数は前月比+25.0万人、時間当たり賃金が前年比+3.1%と全般的に良好な結果: 11月2日、米国労働省(BLS)は10月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+25.0万人の増加1(前月改定値:+11.8万人)となり、+13.4万人から下方修正された前月改定値、市場予想の+20.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を大幅に上回った(後掲図表2参照)。



失業率は3.7%(前月:3.7%、市場予想:3.7%)と、こちらは前月、市場予想に一致した(後掲図表6参照)。労働参加率2は62.9%(前月:62.7%)と、こちらは前月から+0.2%ポイントの上昇となり、3ヵ月ぶりに改善した(後掲図表5参照)。





 




1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
10月の非農業部門雇用者数が、前月比で再び20万人を超える増加となった結果、過去3ヵ月の平均増加ペースも21.8万人増と20万人を超えるペースに回復した。また、年初からの平均も21.3万人増と、20万人超のペースを維持しており、雇用者数の順調な増加が続いている。



さらに、前月の雇用者数が落込んだ飲食業で10月は前月比+3.4万人(前月改定値:▲1.0万人)と増加に転じていることから、前月の雇用増加ペースの鈍化はハリケーン「フローレンス」による一時的な影響であった可能性が高い。一方、家計調査は失業率が49年ぶりの水準となった前月から横這いに留まったものの、労働参加率が3ヵ月ぶりに改善しており、労働需給の改善が続いていることを示す結果であった。



また、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比では+0.2%(前月値:+0.3%、市場予想:+0.2%)と、前月から伸びが鈍化したものの、前年同月比では+3.1%(前月:+2.8%、市場予想:+3.1%)と、こちらは09年4月(同+3.4%)以来の伸びに加速した(図表1)。



このようにみると、10月の結果は、雇用者数、労働参加率、賃金に改善がみられており、米労働市場の順調な回復が続いていることを示したほか、労働市場が完全雇用を達成しつつある中で、労働需給のタイト化が賃金上昇に繋がり易くなっていることを示すものと言えよう。事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+17.9万人(前月:+7.9万人)と前月から伸びが大幅に加速した(図表2)。民間サービス部門の中では、専門・ビジネスサービスが前月比+3.5万人(前月:+4.6万人)と前月から伸びが鈍化した一方、医療サービスが+3.6万人(前月:+2.7万人)となったほか、娯楽・宿泊業が+4.2万人(前月:横這い)と前月から伸びが加速した。とくに、娯楽・宿泊業では、前述のように飲食業が回復したことが大きい。さらに、小売業も+0.2万人(前月:▲3.2万人)と前月から増加に転じた。



一方、財生産部門は前月比+6.7万人(前月:+4.2万人)と、こちらも前月から伸びが加速した。建設業が+3.0万人(前月:+2.0万人)となったほか、製造業も+3.2万人(前月:+1.8万人)と前月から伸びが加速した。



政府部門は、前月比+0.4万人(前月:▲0.3万人)と前月から増加に転じた。内訳をみると、連邦政府が+0.1万人(前月:+0.1万人)と前月並みの伸びを維持した一方、州・地方政府が+0.3万人(前月:▲0.4万人)と前月から増加に転じた。前月(9月)と前々月(8月)の雇用増(改定値)は、前月が+11.8万人(改定前:+13.4万人)と▲1.6万人下方修正された一方、前々月は+28.6万人(改定前:+27.0万人)と+1.6万人上方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅はプラスマイナスで変動なしとなった(図表3)。



なお、BLSの公表に先立って10月31日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+22.7万人(前月改定値:+21.8万人、市場予想:+18.7万人)と、+23.0万人から下方修正された前月改定値、市場予想ともに上回った。この結果、ADP統計の雇用増加数は過去3ヵ月平均で20.2万人増と雇用統計同様に20万人超のペースを維持しており、こちらも雇用増加ペースが鈍化する兆候はみられない。



10月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が27.30ドル(前月:27.25ドル)となり、前月から+5セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.5時間(前月:34.4時間)と、こちらは前月から+0.1時間の増加となった。その結果、週当たり賃金は941.85ドル(前月:937.40ドル)と前月から増加した(図表4)。家計調査のうち、10月の労働力人口は前月対比で+71.1万人(前月:+15.0万人)と2ヵ月連続で増加したほか、前月から増加幅が大幅に拡大した。内訳を見ると、失業者数が+11.1万人(前月:▲27.0万人)と前月から増加に転じたほか、就業者数が+60.0万人(前月:+42.0万人)と、前月から伸びが加速した。一方、非労働力人口は▲48.7万人(前月:+7.4万人)と、4ヵ月ぶりに減少に転じた。



この結果、労働参加率は62.9%と3ヵ月ぶりに改善しており、10月は労働力人口の増加を通じて労働需給の改善が顕著となった(図表5)。さらに、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率も10月が82.3%(前月:81.8%)と、3ヵ月ぶりに増加に転じた。男女別では、男性が89.0%(前月:88.6%)と6ヵ月ぶりに増加に転じたほか、女性が75.8%(前月:75.2%)とこちらも3ヵ月ぶりの増加となった。



失業率は49年ぶりの低水準を維持する一方、前月から横這いとなったものの、労働参加率の改善にみられるように、家計調査は労働需給の改善を示す結果と言える(図表6)。次に、10月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は、137.3万人(前月:138.4万人)と前月から減少した。また、長期失業者の失業者全体に占めるシェアも22.5%(前月:22.9%)となったほか、平均失業期間も22.5週(前月:24.0週)と、いずれも前月から改善した(図表7)。



最後に、周辺労働力人口(149.1万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(462.1万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4をみると、10月は7.4%(前月:7.5%)と前月から▲0.1%ポイントの低下となった(図表8)。



また、通常の失業率(U-3)と広義の失業率(U-6)の差は3.7%ポイント(前月:3.8%ポイント)と、前月から▲0.1%ポイント縮小した。

 




3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
 



 







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